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デジタル社会の「最適解」を問い続ける。デジタル庁の若手行政官が語った仕事の意義と責任

デジタル庁では、新卒採用で入庁した職員が専門性を身につけながらキャリアを形成できる環境として、四つのコース(政策デザイン、リーガル、テック、組織設計)を設けています。

デジタル庁noteでは、その一つ「リーガルコース」の若手職員に、国家公務員を志し、デジタル庁を目指した理由や現在の業務内容、具体的な一日の動きなどを聞きました。

プロフィール:
デジタル社会共通機能グループ・マイナンバー法制班
渡邊 貴将


入庁2年、これまでに携わった業務を振り返って

インタビュー応じるデジタル庁デジタル社会共通機能グループ・マイナンバー法制班の渡邊の写真。
デジタル社会共通機能グループ・マイナンバー法制班の渡邊

――渡邊さんは修士課程を経て、2022年4月に入庁されました。デジタル庁では新卒で入庁した職員向けに4つのキャリアコースが設けられており、選択に応じて配属が決まりますね

私の場合は大学時代に法学を専攻していたこともあって、リーガルコースを選びました。キャリアコースは入庁時に選択しますが、入庁後に他のコースを選択することもできます。

<4つのキャリアコース>
政策デザイン
・ミッション:
ユーザー中心で政策やサービスを企画・実行し、ステークホルダーと調整しつつ社会実装に結びつける
得られるスキル例:
企画・立案スキル、デザイン感覚、コミュニケーション力

■リーガル
・ミッション:
現行の法令をゼロベースで見直し、デジタル時代に沿った新たな法制度の在り方を立案する
・得られるスキル例:
法令知識、リサーチ力、確実な事務処理能力

■テック
・ミッション:
モダンなテクノロジーに寄り添い、サービスの品質向上に繋がるよう、エンジニアリングを遂行する
・得られるスキル例:
デジタル専門知識、調達ノウハウ、プロダクトマネジメントスキル

■組織設計
・ミッション:
生産性高く、自らデジタルファーストな組織を設計・運営する
・得られるスキル例:
チームマネジメントスキル、BPRスキル、バックオフィス知識

――入庁から2年を迎えますが、これまでにどのような業務を担当されましたか。 

2022年4月に入庁し、戦略・組織グループにあった戦略企画チーム(現:調査企画チーム)に配属されました。ここでは「デジタル社会の実現に向けた重点計画」について調査審議する有識者会議の事務局の一員として、重点計画の改定に関わりました。

この「重点計画」とは、政府全体としてどういった点に力を入れてデジタル化を進めていくのかをまとめたものです。デジタル社会の実現に向けて、いつまでに、どんなことをやるかといったことを示す、「デジタル社会の羅針盤」とも言うべきものです。

「この計画は、目指すべきデジタル社会の実現に向けて、政府が迅速かつ重点的に実施すべき施策を明記し、各府省庁が構造改革や個別の施策に取り組み、それを世界に発信・提言する際の羅針盤となるものです。」

デジタル庁ウェブサイト「デジタル社会の実現に向けた重点計画」―「重点計画とは」より

各府省庁との連携をとりながら、重点計画の改定業務に関われたことは、一年目からとても有意義な経験ができたと感じました。

その後、併任でマイナンバーカードの普及や利用促進の一環として、「公的個人認証法」の改正準備に携わりました。

2023年7月からは、デジタル社会共通機能グループのマイナンバー法制班に所属し、「マイナンバー法」と「公的個人認証法」を所管する担当として日々過ごしています。

大きな業務としては、各府省庁や地方公共団体から寄せられる法令面の問い合わせへの対応があります。現場の皆さまから寄せられる疑問やお困りごとに対し、この二つの法律の解釈をお伝えしています。

地元商店街の課題に向き合い、国家公務員を志した

インタビュー応じる渡邊の写真。

ーー将来の選択肢として国家公務員を意識するようになったのは、いつ頃でしたか。

大学では法学、大学院では電子行政を研究していたこともあり、もともと公共分野で働くことに関心がありました。漠然とではありますが、当時から「将来は公務員になりたいな」という想いをずっと抱いていました。

大学4年の時からは、大学発の地方創生ベンチャーに所属し、県内にある市町村の商店街の町おこしプロジェクト等に参加しました。大学院進学後も続け、2年弱ほど活動しましたが、「行政で働きたい」という意志を固めたのは、この経験がきっかけです。

膝と膝を突き合わせて、地域の方たちと協働する経験を通じ、目の前の人が抱える課題に向き合う大切さを学ばせていただきました。

――地域の町おこしに関わったことが、行政への道を志すきっかけになった。

商店街の皆さまと連携する中で、少子高齢化や「家業の後継者がいない」といった悩みにも触れました。

同様の悩みは、私が関わった商店街のみならず、全国各地に共通する課題でもあります。こうしたこの国の普遍的な社会課題の解決に広く携わりたいと考え、将来は国家公務員になりたいと思うようになりました。

地方創生を考える上では、少子高齢化は大きな課題です。2040年には生産年齢人口が6000万人未満まで減少すると推定されており、人口減少による労働力不足が深刻化する可能性があります。

「デジタル×行政」という切り口は、このような少子高齢化に伴う課題を解決できるカギになり得ます。そう感じたことが、デジタル庁への入庁を目指すきっかけになりました。

デジタル庁 若手行政官のある一日

インタビュー応じる渡邊の写真。

――普段の働き方や休日の過ごし方について教えてください。

こちらが、一日のスケジュールの一例です。

・9時半:起床
デジタル庁では勤務開始時間を最初に選択できます。私は朝10時が始業時間です。

・10時:始業 ※テレワーク
午前中は在宅で勤務することも多いですね。始業時間までに部署内のチャットツールで「(勤怠)午前テレワーク、午後登庁します」等と簡潔に報告します。デジタル庁は行政機関ですが、業務の状況に応じて働く場所を柔軟に使い分けることができます。

・10時~12時: メール・メッセージのチェック、法案に関係する資料チェック
私の場合は、法律関係の調べ物や資料・文献の読み込みなど、一人で完結できる作業は自宅で集中して一気にやっています。仕事の進め方など上司に相談したいことがあれば、午前中から登庁する日もあります。気軽に相談ができる環境です。

・12時~13時:昼休憩・登庁
午前中に在宅で仕事をした日は、正午ごろに自宅を出てデジタル庁に向かいます。最寄駅の永田町駅までは30分ほど。昼食は自宅か、途中でお弁当などを買ってオフィスで食べることが多いですね。

オフィスには休憩スペースに一人用ソファがあります。朝イチで登庁した日は、ここでランチをとったあと、10分ほど昼寝をします。アイマスクを付けて寝ると、とっても心地いいんです。休憩時間にはコンビニエンスストアで買ったスイーツなどを食べてリフレッシュしています。

・13時~15時:法案関係資料の作成
主に法改正に関係する資料の作成に取り組む時間です。「こういう法律があったほうが国民の皆さまの利益になるのでは」「今ある法律を改正したほうが、より国民の皆さまが便利になるのでは」という案があれば、その法案を国会に提出し、ご審議いただくことになります。

その場合、「なぜこの法律が必要なのか」「この法律を変えると何が便利になるのか」といった背景を他の府省庁とも連携しながら丁寧に説明できる必要があります。そのために、法案そのものに加えてその背景を説明する補足資料や専門用語を解説する資料づくりに携わっています。

・15時~16時:関係者とのミーティング
私の場合は、庁外とのミーティングは基本的にオンラインで行い、短い時間でも効率よく打ち合わせができるようにしています。

また、庁内の打ち合わせは内容によってオンラインとオフライン、時には立ち話を使い分け、目的に合わせた充実した議論ができるよう意識しています。

・16時~17時:法案審査の対応
法律は国民の皆さまの権利や義務に直接関わる非常に大きな効果を持つものであり、決してミスが許されません。その観点から、政府が提出する法案を審査する内閣法制局という機関と密に連携しています。気の抜けない時間である一方、大きな仕事に関わっていることを実感する時間です。

・17時~19時半:チームメンバーと法案関係資料のチェック
メンバーが集まり、法案関連の資料構成を相談したり、複数人で法案の内容をチェックしたりする業務が中心です。

・20時:終業

退勤後、週に1~2回はリフレッシュを兼ねて外へ食事に出かけています。大学時代の友人や職場の同僚ともよくご飯を食べますね。

研修で知り合った他省庁の友人とも月1回で定例の食事会を開いて、お互いの近況を話し合ったりしています。

――休日はどのように過ごしていますか。

思いっきり趣味を楽しんでいます小学生のころから野球が好きで、よくプロ野球の試合を見に行ったり、学生時代の友人と草野球を楽しんだりしています。

2023年は私が応援するプロ野球チームがリーグ優勝と日本シリーズ制覇を果たしまして……。“日本一”に輝いた日は、兵庫県のパブリックビューイング会場で試合を観戦したのですが、ものすごい熱気でしたね。旅先で野球を観戦することも好きで、国内にあるプロ野球の球場すべてに足を運ぶことが目標です。

ボードゲームも好きで、よくボードゲームができるカフェにも赴きます。対戦相手の表情を見極めたり、会話の言い回しに気を付けたりして、心理戦の駆け引きを楽しんでいます。

デジタル社会に向けた「最適解」を問い続ける。

インタビュー応じる渡邊の写真。

――日々の業務では、どのような点にやりがいを感じていますか。

行政手続のデジタル化やマイナンバーカードの普及・利用促進など、デジタル庁の取り組みは、行政サービスの利便性向上や社会課題の解決に直結します。

現在、行政の仕組みや社会のデジタル化が進められていますが、デジタルの力は行政、法令とかけあわせて、子育て・医療・介護など様々な分野の具体的な政策・サービスに落とし込むことで、より大きな効果を発揮できます。

このようにデジタルというツールを用いて、時代に即して、社会をよりよくする「最適解」を模索する仕事に携われることは、やりがいと同時に大きな責任感を感じています。

――なるほど。「最適解」を模索する仕事ですか。

学生時代に数学科の先輩から、こんなことを言われました。「数学は、絶対に答えが出るからおもしろい」と。

「デジタル」も似ている点があり、「0」か「1」の世界です。しかし、デジタルはあくまでツールの一つです。私が携わっている業務では、デジタルを法令とかけ合わせることで、「0」か「1」では片づけられない社会課題の解決を図る具体的な政策へとつながります。

不完全である人間という存在が、今の社会をよりよくするために、可能な限り最適な落としどころを見つけるためのツールの一つが法令だと思います。法令は、国民の皆さまの権利や義務、経済活動と密接に関わるものです。社会を動かし、維持するための重要なインフラでもあります。

行政官は、ルールメイキングにも携わります。どのような課題意識から、どのような点を踏まえて立案するのか。何を法案に書くべきか。法案が国会で成立するまでには、どのようなプロセスが必要なのか。これらを十分に検討しなければなりません。

特にデジタル領域は技術の進歩が著しく、変化が激しい世界です。時代の移り変わりによって、そのときの最適解がどんどん変化していく分野と考えています。

現在、デジタル庁では「アナログ規制」の見直しなどデジタル時代に即した法制度の実現を目指しています。デジタル時代では、既存の法令が10年後も最適解であるかどうかはわかりません。社会にとっての最適解を問い続けていくことには大きな責任が伴いますが、この仕事のやりがいだと思います。

「デジタル」と「法令」という2つのツールをかけ合わせることで、よりよい社会を目指す取り組みは、とてもチャレンジングな仕事です。

国家公務員試験の受験を考えている方はもちろんですが、将来についてこれから考えようとしている学生の方にとって、「こういう仕事があるのか」とデジタル庁の業務に少しでも興味を持っていただくきっかけになれば幸いです。

(了)


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