「利用者が何を求めているか」を常に問う。デジタル庁プロダクトデザイナーの役割
「マイナポータル」や「Visit Japan Web」など、デジタル庁ではさまざまな行政サービスを提供しています。実際の利用シーンを想定し、ユーザー目線でデジタルサービスのデザインやユーザー体験の設計に携わるのが「プロダクトデザイナー」です。
すべての人によりよい行政サービスを利用していただけることを目指して、デジタル庁では新たなプロダクトデザイナーを募集しています。
デジタル庁公式noteでは、具体的な業務内容やデジタル庁ならではの仕事の面白さ、やりがいについて現役のプロダクトデザイナーに聞きました。
利用者は何を求めているか、常に問う
――デジタル庁において、「プロダクトデザイナー」とはどのような役割を担っているでしょうか。お二人が関わっている業務と合わせて教えてください。
横田:
デジタル庁が提供する行政サービスは、プロジェクトごとに行政官と民間出身の専門人材が一緒に働いています。
「デザイナー」というと、決まった要件に対して「資料や画面の見た目を整える」仕事をイメージされることも多いのですが、デジタル庁においてプロダクトデザイナーは、顧客価値の定義、対外的なコミュニケーションの方向性、実現のための仕組みづくりや設計など、より根本的な領域からその役割を担います。
わたしは「マイナポータル」を含む、いくつかの生活者むけのフロントサービスの体験設計をリードしていますが、その過程で、図や画面をつくって提示し、議論の土台とすることも多くあります。行政のサービスづくりは制約や考慮すべきことが多いので「色々考えているけれど、結局なにを届けるの?」を関係者のなかで一致させることは、デザイナーの重要な役割のひとつです。
堀井:
各サービスを担当する行政官やエンジニアたちと一緒に、サービスのコンセプトや利用者体験などの仕様やサービス戦略の立案をする際には「利用者は、どんなことを求めているか」と、実際の利用シーンを念頭にした提案をできるよう心がけています。
サービスのリリース後も効果を分析し、体験を検証し、改善を続けています。私が担当しているマイナポータルのプロジェクトでも、具体的な行政手続きのプロセスを深掘りし、一部の機能や画面で「実証ベータ版」を提供しています。
――「リリースしたら完成」ではなく、検証・分析・改善を繰り返してサービス体験の向上を目指す ことは、デジタル庁らしい文化ですね。
堀井:
特徴的だと感じるのが「スクラム」と呼ばれる一種のアジャイル型開発を導入していることですね。
「スクラム」とは、チーム全員で素早いソリューションづくりと改善策を反復し、より複雑な問題に適応するという開発フレームワークです。利用状況を見て、細かい改善を繰り返す手法は、行政機関としてはかなり挑戦的な試みであり、私自身もやりがいを感じています。
行政サービスの価値発揮をサポートする
――お二人とも、入庁前は民間企業でサービスやプロダクトの開発を経験されていたそうですね。入庁を志したきっかけは。
堀井:
私は前職がスタートアップ企業で、クライアント向けのプロダクト開発をしていました。次のキャリアを考えたときに、漠然とですが「いままでの経験を活かして、大規模な公共サービスに関わってみたいな」と考えていた矢先、ちょうどデジタル庁の人材募集を見たことがきっかけです。
横田:
私は生活者向けのアプリを開発する民間企業などを経て、2021年のデジタル庁発足の半年前に参加しました。デジタル人材を民間から初めて募集するというニュースを知ったことがきっかけです。
面接では行政官と話をしましたが、堅苦しくない雰囲気で柔軟な発想を持っていたことが印象的でした。自分が考えていた行政機関のイメージと一味違うなと感じて、この環境なら、利用者体験やデジタルプロダクトを設計してきた過去の知見を活かし、行政で働くかたが持っている力やその先のサービスの価値が発揮されるようにサポートできると思いました。
――お二人が所属する「サービスデザインユニット」には、アプリやウェブサービスなどに携わってきたさまざまなプロフェッショナル23名が在籍しています。働き方や業務環境で民間と違いはありましたか。
横田:
行政機関ではありますがリモートワークもできますし、それぞれのスタイルに合った働き方を選べます。私は週5日、堀井は週4日の範囲でデジタル庁の仕事をしています。
デザイナー同士が互いの状況を見て、助け合える環境も整っています。週に2〜3回は定例会や勉強会があり、デザイナーやアクセシビリティアナリストなど、メンバー同士で会話する機会も多いです。
Macも業務上で必須となるデザイナーには貸与されますし、FigmaやSlackも用意されています。 “泳げない”環境ではないので、安心してください。デザイナーが働きやすい職場になるよう、現在も環境整備を進めています。
堀井:
私もそうでしたが、MacBook Proが使えるかどうかは気になりますよね。使い慣れないツールで仕事をするのは、左利きの人が無理に右利き用の道具を使うようなものですから。そうした不便がないのはありがたいです。
シンプルに、削ぎ落とす
――実際にデジタル庁でプロダクトデザイナーとして働いてみて、入庁前と入庁後で印象は変わりましたか。
堀井:
入庁前に想像していた以上に、行政官の熱量が大きかったことはいい意味でギャップでした。専門領域は違いますが、二人三脚でサービスをつくっていく環境はとても勉強になります。
横田:
驚くような素晴らしい知見や経験を持つスペシャリストがたくさんいること。「こうしたらもっとよくなる!」と、積極的に提案する姿勢が評価されるカルチャーもデジタル庁のよいところだと思います。
行政と民間を問わずさまざまな領域が融合し、同じ目的に向かうとき、かつてない変化を起こせるのではないか。困難は多いですが、それだけ自分が成長できる機会も多いと実感しています。
――「自分が成長できる機会も多い」とありましたが、お二人は実際にどのような点で成長を実感していますか。
堀井:
今ある課題を解決するには、どんなアプローチが必要なのかを考える「課題解決能力」が身についたと思います。
状況を俯瞰的に見て、問題を発見し、どうアプローチするかを考え、解決に導く。クリエイティブ分野の仕事だけでは、なかなか身につかなかった視点だと思います。
横田:
私の場合は「変数の多い事象を、シンプルにまとめる能力」ですね。デジタル庁では、直面する条件や制約と、実現すべき成果のギャップが想像以上に大きいことが多々あります。このため日々、いかに複雑な物事を、シンプルに、わかりやすく届けられるかを考え続けています。
加えて、「説明力」と「巻き込む力」もです。利用者視点のサービス設計や改善には、多くのステークホルダーを巻き込んで、ときに政策や制度にまで提案する力が重要になります。
堀井:
利用者視点でシンプルにわかりやすく届けることは、デジタル庁のデザイナーとして働いていると、常に意識する点です。一方で、「シンプルにすること」は同時に、「何かを削ぎ落とす」ことでもあり、だからこそ難しい部分でもあります。
利用者の皆さんに、正確な情報と安心・安全なサービスを届けるために、「伝えるべき要素は何か」を常に問い続けています。
領域をはみ出て、共創する
――現在、デジタル庁ではプロダクトデザイナーを募集しています。具体的にどのようなスキルセットを持つ方を求めていますか。
横田:
前提としては、顧客体験の設計(UXD)と各分野のスペシャリストと相互連携しながらプロジェクトを動かした経験を持っているといいと思います。また新しい技術や体験を学ぶことが好きな方や、スマートフォンやデジタルにネイティブな方、よくデジタルサービスを活用されている方は、より活躍の場があると思います。
堀井:
個人的には、自分で課題を「見つける」、あるいは「つくれる」方が向いていると感じています。課題を発見し、自ら解決するプロセスを考える。それもデジタル庁のデザイナーの仕事だからです。
横田:
子育て、給付、税、健康医療など、私たちが携わる行政サービスは多岐にわたります。他省庁の職員や各分野の専門家と円滑にコミュニケーションする力も重要です。
アクセシビリティやインクルージョン(多様性を受容し、互いに作用し合う共生社会を目指す考え)を重んじることもデジタル庁のサービスの特徴です。社会課題に関心を持つ方にとって民間企業ではあまり経験できないスケールの非常にやりがいがある仕事だと思います。
利用者目線で積極的に提案し、ときにはデザイナーという領域をはみ出しながら、国民のためのサービスをつくりあげていく。そうしたダイナミズムに興味を持っていただける方と一緒に働くことができたら嬉しいですね。
――なるほど。自分の専門性を超え、幅広い領域で力を発揮できる機会がありそうですね。
横田:
利用者の視点に立った「使いやすい」「わかりやすい」行政サービスを実現する上で、実はデザインが必要とされている場面が想像以上にたくさんあります。
特に社会課題の解決をしたい、またそのために奔走する行政の皆さんをサポートしたい、という気持ちを持っている方にとって、最高にやりがいのある環境になるはずです。興味のある皆さまからのご応募お待ちしています。
◆デジタル庁のサービスデザインユニットでは人材を募集しています。
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