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技術検証事業に関する取り組み:モニタリング技術の実証

こんにちは。デジタル庁・デジタル法制推進担当です。

この記事では、デジタル庁の「技術検証事業に関する取組」のうち、

における技術概要や検証技術のメリットなどを解説します。

我が国では、法令に基づき、文書閲覧時の立ち会いや公的機関の記録・調書の改ざんの有無に関する利用者からの問い合わせ、火薬やガスの取扱所での書類や環境の確認、船舶の環境や設備・保護具などの定期検査について、現地で人が目で見て、その結果を書類に記入するなどして点検・監視、判定することが義務付けられており、 効率面の課題などが指摘されています。

一方、近年では画像解析やデータ改ざん・流用防止、AI、オンライン会議システムなどの技術が進歩することで、文書などの改ざん・流用リスクを防止できる技術や、遠隔から現地環境や書類を読み取り、送信・記録できる技術が発展しています。

現在デジタル庁では、こうしたデジタル技術を活用して安全かつ効率的に遠隔で点検・監視・判定を代替できる可能性について、法規制を所管する他府省庁や民間事業者などと連携しながら技術検証に取り組んでいます。

具体的にどのような技術を用いて、どのような検証をしているのか。技術検証の概要やポイント、検証している技術のメリットや課題などについて、参加事業者の方たちによる解説を紹介します。

技術検証事業に関する取組
デジタル庁では、デジタル原則を踏まえたアナログ規制の見直しに関して、安全性や実効性の観点から技術検証を必要とする条項のうち、省庁横断的な技術検証が可能とみられたものについて、規制所管府省庁とも連携の上、検証を進めています。技術検証にあたって、対象となる条項を類型化したうえで事業者公募を行っており、当該公募の結果、令和5(2023)年度は32の実証事業(採択事業)が実施されています。


解説:
足立 崇氏(KDDI株式会社 事業創造本部 LX基盤推進部 コアスタッフ)
石黒 智生氏(理研計器株式会社 主席研究員)
山﨑 顕氏(株式会社NTT e-Drone Technology 代表取締役)
品川 武志氏(環境計測株式会社 代表取締役社長)

技術検証の概要について

従来は人がおこなっていたガスプラントでのガス熱量の計測や設備の定期検査、南極地域に生息・生育する動植物の実地調査、休廃止鉱山の坑廃水処理水の測定などの業務について、ドローン、カメラ、センサー、AIなどのデジタル技術の活用による点検・検査・監視業務の効率化・省人化の効果が期待されています。

現在、規制を所管する他の府省庁と連携して進めている「ガスプラントでのガス熱量の計測や設備の定期検査」「南極地域に生息・生育する動植物の実地調査」「休廃止鉱山の坑廃水処理水の測定」に関する技術検証の概要、ポイントについて解説します。

KDDI株式会社による技術検証の概要

ガス検知カメラによるガス漏洩試験の技術検証の様子(写真提供:KDDI株式会社) 

足立氏:高圧ガス保安法」第35条の第2項及び、「ガス事業法施行規則」の第24条、第92条、第148条では、製造者などは都市・LPガスのプラントなどの定期・自主検査が義務付けられています。

今回の検証は、ガス設備のさび・ひび検知、計器の読み取りなどを、ドローンに搭載したカメラで撮影し、AIシステムで解析します。ドローンによるモニタリングで、点検・巡視作業を効率化させ、検査頻度を低減できるのではと考えています。

ガスを取り扱う施設のため、防爆エリアという危険区域に設定された場所があります。防爆エリア内では、特別に設計・製造された防爆機器の使用が義務付けられています。

しかし、検証時点では防爆対応のドローンが市販されていなかったため、防爆エリア外からの監視をおこないました。万が一の墜落時も危険エリアに落下しない最大8メートル程度の距離からの撮影となりますが、カメラのズーム機能で問題なく撮影できます。

また、ガス漏れなどにも対応するため、人の目では見えないガスを可視化できる「ガス検知カメラ」という特殊なカメラをドローンに搭載しました。

理研計器株式会社による技術検証の概要

試験機によるガス測定の技術検証の様子(写真提供:理研計器株式会社)

石黒氏:「ガス事業法施行規則」の第17条、第78条、第126条及び第144条では、ガス事業者が1日1回、ガスの熱量及び燃焼性の測定をすることを義務付けています。

都市ガスの計測は、パイプに流れるガスを採取・分析して、ガスの熱量や燃焼速度を測定しています。現状は「ガスクロマトグラフ式熱量計」という、測定対象のガスを成分別に分離して、各成分のガスの量(濃度)を分析する装置で測定しています。

今回の検証では、ガス中を伝わる光の速さ(光速)と音の速さ(音速)を検知する「オプトソニック熱量計」を用いました。私たちが特許を取得している独自のモニタリング技術です。

従来の測定機器と比べオプトソニック熱量計が同等以上の精度を発揮するか、また、測定機器が正しく計測できているかどうかを確認する「校正」の頻度を減らして継続的に利用可能な期間を明らかにするために検証をおこなっています。

株式会社NTT e-Drone Technologyによる技術検証の概要

ドローンによる技術検証の様子(写真提供:株式会社NTT e-Drone Technology)

山﨑氏:南極地域の環境の保護に関する法律施行規則」の第15条では、南極地域の環境を保護するため、公的機関などの職員が現地に入り、岩石や地表、動植物、構造物などを実地調査することを義務付けています。

南極に生息・生育する動植物などの把握をする観測に着目し、地上から人が撮影する調査を、寒冷地でも飛行可能なドローンによる遠隔モニタリング調査に代替可能かの検証をしました。

ドローンは、使用する条件によっては、必ずしもスペック通りの能力が出ない場合もあります。とくに寒冷地では、バッテリーの消費が激しいことが予測されるため、どれくらいの時間飛行可能であるか、事前に確認する必要がありました。

そのため、実地検証場所である北海道での使用前に、−40℃の環境を再現できる設備「人工気象室」で、使用するドローンの環境耐久試験をおこないました。採用したのは「ANAFI USA」という−35℃まで耐えられるドローンです。

結果として、人工気象室内の温度が−10℃から−40℃でも、20分程度の「ホバリング」が可能なことを確認できました

実地検証場所は、南極の低温・降雪などの条件に類似した環境を再現できる北海道黒岳付近です。地上から人が撮影した場合と比較して、安全・効率性において、ドローンが優位であるかどうかを検証しています。

環境計測株式会社による技術検証の概要

坑廃水処理場での技術検証の様子(写真提供:環境計測株式会社)

品川氏:「鉱山保安法施行規則」の第26条第1号では、坑廃水処理施設の検査保安のために、作業員が365日常駐することを義務付けています。

坑廃水処理施設とは、鉱山などから排出される金属を含む坑廃水を処理し、河川に放流する水の安全を守るための処理場です。

作業員は、施設の設備に流入する坑廃水とその処理水の水量・水質検査を、手作業で毎日実施しています。

私たちの取組では、これらの検査作業をセンサーで代替し、モニタリングしたデータを「AI水質監視システム」で遠隔監視します。

作業者は現地に行かなくても常に監視データを確認することができ、異常時はアラートが自動で発信されます。

日本全国には実に5000か所以上の休廃止鉱山があり、そのうちの約100か所では今も有害元素を含有する坑廃水が出続け、人による365日の監視体制が必要だと聞きました。

施設を管理する事業者は中小規模も多く、人材確保のコストや経済的な負担が非常に大きくなっています。今回のようなしくみが確立できれば、現地に人を常駐させる必要がなくなるのではと考えています。

検証している技術のメリットや課題とアナログ規制見直しの効果について

新たな技術には強みや運用上のメリットがあると同時に、導入にあたり課題も発生する可能性があります。

技術検証に取り組む中で、どのような課題が見えているのか。また、技術を活用したアナログ規制見直しの効果について説明します。

足立氏:ガスタンクは5〜60メートルの高さがあるので、人の目で点検するためには、タンクについた階段を登りながらの作業となるため大変ですし、危険も伴う作業となります。

その点、ドローンであれば高所も安全に撮影でき、人の目では難しい俯瞰(ふかん)撮影も可能です。

実証フィールドでの技術検証の様子(写真提供:KDDI株式会社)

また、今回の検証では使用しておりませんが、ドローンの充電ができるポートを配備しセットで運用すれば、毎日モニタリングが実施できるでしょう。

一方、ドローンで撮影したデータのAI解析は、まだまだデータが不足している点が課題です。たとえば、ひびを発見したとしても、人なら「このひびはすぐに修理したほうがいい」と判断できても、AIにはまだ判断できません。

そのため、まずは人のサポートとして、ドローンとAIを活用しながら、蓄積したデータをもとに判断の精度を高めていく必要があります。

石黒氏:オプトソニック熱量計は、2012年から実用化し確立された技術です。しかしながら、こういった計器は屋外に設置されるので、直射日光が当たるような場所だと、日中と夜間の温度差の影響を受け、測定データの誤差や変動が起こることがあります。

わずかな数値差ですが、より高精度な熱量調整を求めるガス施設の事業者から「耐環境性をさらに改善してほしい」と要望もいただいておりました。

そこで、今回の検証では特別仕様の計器を使用した結果、環境影響による測定データの誤差や変動を計測できないレベルまで小さくすることができました。

また、従来の計器は分析の際にヘリウムガスを使用します。しかし、近年のヘリウムガスの価格高騰もあり、ランニングコストが相当かかってしまいます。

一方、オプトソニック熱量計は、ヘリウムガスなどの高額な消耗品が必要ないため、ランニングコストを抑えられます。加えて、従来の計器と比較しサイズもかなり小さく、耐環境性も優れているため設置場所を選ばないというメリットもあります。

今後の課題としては、今回の技術導入で法令に求められる都市ガスの品質管理や安全管理を、どのように維持できるかという運用方法の確立です。ガス事業者自身で運用をしても品質管理や安全管理を負担なく維持できる運用方法を提案していきたいと考えています。

山﨑氏:南極での実地調査の際、人が地上を移動すると、足跡などの痕跡が残ってしまいます。しかし、ドローンであれば上空を移動するので痕跡は残らず、生態系などの自然への影響が少ない点がメリットです。

ただ、調査対象のサンプルを採取するには、結局、人が現地に行かなくてはなりません。

次のステップとしては、調査員が現地に行かなくても、ドローンで採取までできないかと考えています。

また、南極という広大なフィールドでの調査となるため、飛行時間をどれだけ長く保てるかもポイントとなります。今回の検証では20分程度でしたが、飛行時間を延ばすことができれば、現地調査の幅も広がります。

そのためには、バッテリーの消耗と通信環境の改善が課題となります 。最近では、ガソリンとのハイブリッドや発電機を搭載したドローンもでてきています。

その中でも、CO₂(二酸化炭素)の排出の心配がない「水素燃料電池」を使用したドローンであれば寒冷地でも長距離飛行が可能となり、環境への配慮という面でも有効だと思っています。

しかし、日本では高圧ガス保安法令上の観点から、かなり重いガスタンクの搭載が必要となります。他国では規制がそこまで厳しくないため軽量タイプもでています。

私たちも使用を検討しましたが、南極であっても、日本がおこなう南極調査は日本の法令を遵守する必要があるため、現状は使用できませんでした。

技術はどんどん進歩しますので、法令面でも柔軟な対応ができるようになれば、技術の向上にもつながると思います。

品川氏:坑廃水の検査に採用した機材は、主に3種類あります。

1つ目は水質を検査する「pH計(酸性・アルカリ性の値を計る)」と「EC計(溶液の電気の伝わりやすさの値を計る)」。2つ目は水量を計る「流量計」などのセンサー類。3つ目は信号処理をデジタルデータとして記録できる「データロガ」です。また、計器の発電用にソーラーパネル、通信用に衛星通信(Starlink)を使用します。

いずれの機材も入手が容易で安価なうえ、簡易に利用できる点がメリットです。専門的な知識を必要とする、また高価であると導入のハードルになるため、汎用性が高く安価な技術で検証することが重要だと考えます。

また、従来の人の手による水質検査は複数人で作業する必要があるため、省人化を進めることも大切です。今までアナログでやっていたことを、デジタルで100%代替することはできませんが、月1回のメンテナンスであれば、人の稼働を年間12日程度にまで削減できるのではと思っています。

今後の課題としては、検証から汎用的なシステムに落とし込んでいくことです。坑廃水の排水処理は基本的にやるべきことは同じなのですが、プロセスは処理施設ごとに異なります。

たとえば、鉱山から排出される有害物質の成分の違いなどで、処理のプロセスが変わってくるため、監視する側も処理施設ごとに調整が必要となります。

また、取得したデータを解析する「水質管理システム」も、汎用的に使えるようにするためには、まだまだ教師データの収集が足りていません。

鉱山ごとに排水の成分やプロセスが異なるため、できるだけ多くのデータを集めて、汎用的なシステムに作り上げていきたいと考えています。

モニタリング技術の広がりについて

モニタリング技術は、人が目で見る、寒冷地や山奥へ人が赴くなどを代替するだけではなく、遠隔での状況確認をデジタルの力で代替でき、省人化に有効なことはもとより、環境への配慮や人身安全の確保につながる可能性も見えてきました。

そこで、事業者の皆さんが注目している、モニタリング技術との組み合わせの広がりや展望について解説します。

足立氏:私たちはLPガス事業者に対して、モニタリングの自動化をはじめ、安定的で広範囲をカバーできる通信網などが一体となった「ガスプラットフォームサービス」を提供しています。

また専用のプラットフォームサイトで、LPガスボンベの交換タイミングの最適化や利用料の見える化など、ガス事業者と利用者の双方の利便性向上にも取り組んでいます。

併せて、ガスプラントの維持管理にドローンを活用することで、サプライチェーン全体で省人化・効率化を実施したいと考えています。

このようにモニタリング技術の広がりは、社会インフラ基盤であるガス業界全体のDX化につながると思います。

石黒氏:今まで計測できていた「熱量」、「ウォッベ指数(燃焼性指標のひとつ)」、「燃焼速度」に加えて、LNG気化ガスの「メタン価」、天然ガスの「圧縮係数」を測定する技術も開発されてきました。

また、「Eメタン」と呼ばれるメタン合成技術における合成プロセスの監視や、燃焼してもCO₂(二酸化炭素)を排出しない「ゼロ・エミッション燃料」として期待されているアンモニアの合成・分解プロセスの成分モニターとしての使い方など、次々と新しい使われ方に応用されてきています。

実のところオプトソニック熱量計は、お客様からの「もっとこうしてほしい」という意見をもとにできたという経緯があります。このように、利用される方の意見をいただきながら、現在の計器や運用方法を改善し続けることで、海外展開も視野に入れた省エネ、脱炭素、クリーンエネルギーの世界規模の促進に役立てたらと思っています。

山﨑氏:寒冷地での検証では、ドローンに搭載できる「赤外線カメラ」で熱反応をモニタリングしましたが、対象がもつ「絶対温度」を検知できず、調査結果としては理想的なデータが取得できなかったという課題を感じました。

一方、赤外線カメラの技術は海外を中心にかなり開発が進んでいます。夜間での警備など、監視業務に非常に有効なモニタリング技術だと考えています。

少子高齢化が進む中、高性能な赤外線カメラを搭載したドローンが、人に代わって警備をする時代がすぐにくるでしょう。

赤外線とドローンの組み合わせによるソリューションの技術革新がどんどん進んでいくと、警備業界にもたらすインパクトはすごいと思います。

そして、結果的にこうしたモニタリング技術を、私たちが検証した南極での調査にも活用できるようになればと期待しています。

品川氏:最近は、ガバナンスやコンプライアンスの基準がより厳格化されている中でも、水質汚濁防止法違反や下水道法違反などの報告も相変わらず寄せられています。

また、労働人口の減少による地方都市の消滅危機が叫ばれている中、100年単位で続く坑廃水の処理をする施設をどのように維持していくかは、緊急の社会課題として捉えています。

汎用的な技術を活用し常時モニタリングが実現できれば、設備オペレーションの「見える化・自動化」が可能となります。中小規模の施設でも導入がしやすく、日本の水質保全に大いに役立つ技術が必要とされているのです。

モニタリング技術導入後の展望について

モニタリング技術の向上は、省人化だけでなく人や環境にも良い相乗効果を生み、ひいてはデジタル社会の発展へと広がっていくことが、皆さんのお話から見えてきました。

未来のデジタル社会に向けて、ますます発展するモニタリング技術の展望や、労働環境や地球環境にも好影響をもたらすことにつながることなど、将来の社会における活用の見込みについて見解を説明します。

山﨑氏:モニタリング技術の検証で一番メリットだと感じたことは、ドローン撮影なら全方位からの撮影が可能なことです。

とくに、ドローンによる「レーザー測量」に注目しています。高度から広範囲にレーザー照射することで地形を立体的に計測する「三次元点群データ」が取得でき、精密な3Dモデルを作成することが可能となり、レポート提出などにも大いに役立ちました。

能登半島地震でも使用されていましたが、災害時における被害状況のモニタリング分野では、非常に役立つ技術です。

最近では、通常のレーザーでは計測困難だった水中まで測量できる「グリーンレーザー」も開発されるなど、この分野はまだまだ広がりがあると思っています。

品川氏:レーザー測量による点群データは、さまざまな分野での活用が期待できると思います。私たちも、社会課題となっている森林資源の解析で活用することを考えています。

レーザー測量やドローン技術は今までは海外製が主流だったため、国産技術や機材が増えていくのは喜ばしいことですね。

石黒氏:オプトソニック熱量計は、東日本大震災の後で実用化されたものです。製品開発に際しては「水没しても壊れない」「短時間で復旧できる」などの要望が多く挙がりました。

災害に強い社会を構築するための礎となるべく、堅牢なモニタリング技術を開発することが、非常に重要だと感じています。

足立氏:目視の代替となる高解像度カメラのほか、ガスの漏洩(ろうえい)を撮影できる「ガス検知カメラ」や、温度を感知する「サーマルカメラ」なども活用しています。

点検で重要な嗅覚や触覚などを再現できるセンサーの研究も進めば、今まで人間の感覚を頼りにしていた点検業務の省人化・効率化が飛躍的に進むと思います。

また、超音波などによる「非破壊検査」や、対象を叩いた音で判定する「打音検査」などの手法をドローンに搭載できることができると、点検・検査がさらに有益になると考えています。

品川氏:人の感覚をデジタル技術で代替していくことと併行し、人の経験や知見を後世にどう伝えるかも課題だと思っています。

職人や技術者が代々継承してきたことや、頭の中だけにある感覚的なことも、できるだけデータ化・定量化していくことが、未来の発展のための財産になるので、ぜひ取り組んでいきたいと考えています。

石黒氏:たとえばガスの燃焼反応は、昔は職人的な人たちが炎の色を見て調整していました。その方々の知見を数値化し、熱量をモニタリングすることで、最適化できるようになっています。

人の経験や感覚に頼っていたことを、センサーで正確に調整できるようになり、人がやっていたことを超えて、燃料のポテンシャルを最大限に引き出せるようになっています。

足立氏:労働人口減少や働き方改革から、夜間を含めた厳しい労働環境においては、現状の働き方を維持した場合、作業者が不足し操業が困難になる、事業継続が不可能になる、といった大きなリスクをはらんでいます。

こうした課題を解決するために、デジタル技術での代替がますます進んでいくと思います。ロボットや自走ドローンなどでの点検作業や、取得したデータをAI解析し、人の作業を補助するシステムが構築されていくでしょう。

また、蓄積されたデータから障害の予測などの予防保全技術も発展していくのではないでしょうか。

品川氏:設備が自ら点検・管理を実施する時代になるのかなと感じています。

今ある設備は、後付けのモニタリング技術で点検・管理をしていましたが、これから新しく作られる設備には、デジタルファーストの設計がされていくと思います。今後の労働人口減少を考えても、こうした自律型の設備の必要性が高まっていくと思います。

石黒氏:近年のエネルギー価格高騰や、より一層進む環境対策を見るに、ガス分析技術の広がりは無限だと驚いており、かつ、とても重要だと実感しています。

モニタリングの自動化は、ガスなどのエネルギー製造時の効率化・省人化など、日本だけでなく世界規模の省エネや脱炭素、クリーンエネルギーの促進に役立つでしょう。

山﨑氏:南極のような人がなかなか行けない場所では、バーチャル上に同じ環境を再現し検証する「デジタルツイン」が非常に有効だと思います。

難しいとは思いますが、モニタリングデータを活用して、バーチャルだけではなくリアルな世界でも南極を再現し疑似体験できる施設ができたらすごいですよね。

一般の方は普段行けない環境を楽しみながら南極の温暖化など取り組むべき課題も学べ、主催者は利用料を南極環境の調査・整備に充てるといった、DXの付加価値による経済が広がるかもしれません。

参考資料・関連情報

検証対象となっている法令及び法令に基づく業務

今回紹介した技術検証事業が対象としている法令と法令に基づく業務の概要を掲載します。

  • KDDI株式会社

    • 法令:高圧ガス保安法第35条の2、ガス事業法施行規則第200条

      • 法令に基づく業務:施設の定期自主検査、消費機器の定期調査(経済産業省)

      • 概要:第一種製造者、認定を受けた設備を使用する第二種製造者若しくは第二種製造者であって一日に製造する高圧ガスの容積が経済産業省令で定めるガスの種類ごとに経済産業省令で定める量以上である者又は特定高圧ガス消費者は、経済産業省令で定めるところにより、定期に保安のための自主検査を行い、その検査記録を作成し、これを保存しなければならないとされている。また、消費機器の種類ごとに定められた頻度と事項で、調査を行うこと。

  • 理研計器株式会社

    • 法令:ガス事業法施行規則第17条、第78条、第126条及び第144条

      • 法令に基づく業務:ガスの熱量等の検査・測定(経済産業省)

      • 概要:法令に基づき熱量及び燃焼性について定期に測定すること。

  • 株式会社NTT e-Drone Technology

    • 法令:南極地域の環境の保護に関する法律施行規則第15条

      • 法令に基づく業務:南極環境構成要素の目視調査(環境省)

      • 概要:南極環境構成要素の観測又は測定は、南極環境構成要素の区分に従い、南極地域の環境の保護の観点から必要な限度において環境大臣があらかじめ指定する頻度で行うものとする。

  • 環境計測株式会社

    • 法令:鉱山保安法施行規則第18条第17号、第21条第1項第3号、第26条第1号、第29条第1項第16号、第17号及び第19号

      • 法令に基づく業務:水質の定期検査(経済産業省)

      • 概要:鉱業廃棄物の埋立場付近の地下水の水質について、定期的に測定し、その結果を記録し、必要に応じ、これを保存すること。

関連情報

参考資料


◆これまでの「技術検証事業に関する取り組み」を紹介する記事はこちら。

◆デジタル庁Techブログの記事はこちら。

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