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「法令×デジタル」で、すべての人の暮らしを便利に。デジタル庁法務スペシャリストの使命

デジタル庁では、行政の仕組みや社会のデジタル化を進めることで、すべての人の暮らしを便利にしたり、新たなデジタル産業の創出や経済成長につなげたりする取り組みを推進しています。

現在デジタル庁では、「アナログ規制」の見直しや法令の改正など、デジタル時代に即した法制度の実現のため、法令の知見を有する「法務スペシャリスト」を募集しています。

デジタル庁公式noteでは、「法務スペシャリスト」の具体的な業務内容、デジタル庁ならではの仕事のやりがいや面白さについて、法制度のデジタル化に取り組む現役職員に話を聞きました。

プロフィール:
戦略・組織グループ:デジタル法制推進担当/省庁業務サービスグループ:e-LAWS担当
中野 芳崇(企画調整官)
我有 隆司(法務スペシャリスト/弁護士)


デジタル法制を進めるカギとなる「三本柱」を担う

法制度のデジタル化に関わる業務に携わる中野(企画調整官)と我有(法務スペシャリスト)

――中野さんは行政官としてデジタル庁で法令審査、法制度のデジタル化、そしてe-Gov法令検索・e-LAWSといった法令関係のシステムの運用・改良を、我有さんは「法務スペシャリスト」として中野さんとともに法制度のデジタル化に関わる業務を担当されています。具体的にどのようはお仕事に携わっているのか聞かせてください。

中野:
デジタル庁では、私のような行政官、我有のような法律の専門知識を持つ民間出身の法務スペシャリスト、プログラミングに長けたデジタル人材などが互いに協力し、法令関係で主に三つの業務を担っています。

一つは、いまある法令の中身をデジタル時代に即した内容に見直す取組みです。

まず、他の省庁同様、マイナンバー法やデジタル手続法といったデジタル庁が所管する法律の改正案を作成したり、政省令を改正する作業などがあります。法令に関する制度の運用に関する業務もあります。

また、デジタル庁に特有の仕事として、既存の法令の中に存在する「アナログ規制」と呼ばれる約1万条項の見直しがあります。たとえば、国に何らかの申請や届出をする際にはフロッピーディスクなど特定の記録媒体の使用を定めるものが数多くありました。

全ての法令をチェックし、こうした時代に合わないものや手続のオンライン化の妨げとなっている法令を洗い出して見直し、法令の見直しにつなげる仕事に携わっています。

なお、新たな法令で同様のアナログ規制が生まれないよう、政府の国会提出予定法案を点検する「デジタル法制審査」も実施しています。

アナログ規制見直しの概要についての説明資料。「7項目のアナログ規制」及び「フロッピーディスク等の記録媒体を指定する規制」等に関する法令約1万条項全ての見直し方針及び見直しに向けた工程表のイメージ資料。
第6回デジタル臨時行政調査会 資料1より

二つ目は、法改正や新しい法令がつくられる際に、文書の正確性や適法性を審査したり、契約に関して助言したりすることですね。我有のような法務スペシャリストを中心に、法律的な観点から他の職員にアドバイスや提案を行っています。

デジタル庁は2021年9月に発足した比較的新しい官庁で、デジタルという日進月歩の分野を所管していますので、前例のない法令や文書を作らなくてはならないことも多々あります。

その作業の中で既存の法令との整合性をチェックし、「他の法令と整合するように、このように記述した方が良いと思います」といった提案もしています。その際、前例がないから認めないといった対応をしないように心がけています。

そして三つ目が、法令データの利活用、法制事務のデジタル化に関する取り組みです。

デジタル庁では最新の法令情報を検索・閲覧できる法令のデータベース「e-Gov法令検索」を提供しています。また、e-Gov法令検索に格納されている法律や政省令等のデータを民間の皆さんにも広く再利用していただけるように、「法令API」を提供しています。

実際、法令APIを活用したサービスやシステムも研究・開発されています。

先日、デジタル庁が「法令APIハッカソン」を開催し、機能を拡張した法令APIのプロトタイプを利用したシステム・サービスを参加者の方に開発いただきました。たとえば、建築物の設計が建築基準法に適合しているかを自動で審査するプログラムを、法令データと生成AIを活用して生成するシステムなどがありました。

このように、法令に関するデータを整備し、世の中に広くオープンにしていくことで、新たなサービスやシステムが生まれる環境をつくり、ひいては官民問わず日々の業務や事業をより効率的にする手助けになることを目指しています。

また、法制事務のデジタル化に関する取り組みとして、公務員が法令を誤りなく効率的に立案することを可能とするシステムの開発・改良を行っています。

法令の立案作業は膨大な手作業や人海戦術で行われている側面があり、この業務の実態を正確に把握した上で、体裁の自動設定や誤りの自動チェックが可能なシステムを開発・改良するプロジェクトに取り組んでいるところです。

――我有さんは弁護士でもありますが、デジタル庁の「法務スペシャリスト」としてどのような役割を担っていらっしゃいますか。

我有:
現在は、中野が三つ目に説明しました、法制事務のデジタル化や法令データの利活用に関する業務に主に携わっています。

たとえば、法制事務のデジタル化に関して、先ほど中野が説明したとおり、法令を立案するために必要な資料を作り込んでいく業務(法制事務)のプロセスは、まだ紙の時代の慣習が残っている部分も多く、デジタル技術が十分に活用できているとは言えません。

そこで、現状の法制事務のプロセスを分析し、どのようにすればデジタル化を進められるかを考え、具体的な方策の提案に向けて検討しています。具体的な方策のひとつとして、法制事務を効率的に進められるようにするエディタシステムの開発などにも携わっています。

法令データの利活用の文脈では、将来的に法制度のデジタル化が進んだ場合に、産官学のそれぞれの領域でどのようなことができるようになるのかを調査・研究し、とりまとめる業務を行っています。最新のデジタル技術を社会に生かすための法制度や制度の枠組みの在り方、法制度のデジタル化が進んだ将来像についても検討しています。

我有隆司(法務スペシャリスト/弁護士)

我有:
先ほど話にあがった「法令API」によって法令データを広く利活用いただくプロジェクトも、法令データの利活用の文脈での取り組みになります。

法令データをどのように活用できそうか。そのためにはどんなことが必要になるのか。調査・研究の中で少しずつ見えてきた部分もります。

弁護士業務との関係でいえば、法令APIによって法令データを活用し、リーガルサービスを提供する方法がより一般的になると思います。

将来的には、法令APIの活用が弁護士などの「士業」の働き方を変革する可能性があると感じます。たとえば、法令の条文データを活用した手続書類の作成など機械的にできることが増えてくるかもしれません。

いま説明した業務とは別の業務になりますが、法制事務のデジタル化や法令データの利活用に関する業務に前の時期には、先ほど中野からも紹介がありましたが、アナログ規制の見直しを行うために、実際に法律を改正するための業務に関わっていました。

法律改正の業務では、デジタル庁の職員への法律的な視点での確認や助言を行うこともありましたし、同僚の行政官と一緒になって、デジタル庁が国会に法案を提出する際の想定質問に対する答弁作成などの業務も行っていました。

法律改正の業務では、デジタル化を推進するための法律改正に伴う法的な論点を、緻密に考えることも必要になります。

たとえば、デジタル化を推進した場合のプライバシー配慮の在り方について、学者の先生やプライバシー配慮のためのデジタル技術に詳しい職員の意見も伺いながら、多角的に検討することも必要になります。

弁護士の業務を行う中では、特定の法的な問題についてしっかり腰を据えて考えるという機会はなかなか無いので、とても良い勉強になっています。

民主主義のプロセスを踏まえ、法律案をつくる責任

――我有さんはスタートアップ領域を専門とする弁護士事務所からデジタル庁に入庁したと聞きました。「法務スペシャリスト」の業務は、一般的な弁護士の業務とは少しジャンルが異なる部分もありそうですね。 

我有:
弁護士の業務では、既存の法律が個別の事案にどのように適用されるかを考えて、クライアントへの弁護やアドバイスを行うことが基本です。

デジタル庁の業務では、法律を「用いる」だけではなく、「つくる」「変える」仕事にも関わることになります。私自身も、先ほどもお話ししたとおり、入庁後はまず法律をつくるプロセスに従事しました。

法案は、どのような課題意識から、どのような点を踏まえて立案されるのか。実際に国会で成立するまでには、どんなプロセスが必要なのか。弁護士は法律を扱う仕事ですが、その法律が生まれるプロセスは行政の中に入らなければ経験できません。

弁護士の立場でルールメイキングに向けて活動する場面も多くなってはいますが、行政機関の内部でルールメイキングの現場に携われるのは、一般的な弁護士の働き方とは大きく異なる部分ですし、学びになる点がたくさんあります。

中野:
デジタル庁で様々な業務を行う上では、我有のような弁護士資格を持つ職員の視点はとても貴重です。たとえば、インターネットに新たに掲載する情報とプライバシーの関係、新規開発しているシステムと知財の関係など、法律的に難しい論点の知見を活かしたアドバイスも日々もらっています。

行政官と専門人材がコラボレーションしながら実際の政策を進める仕事ができるのは、デジタル庁ならではだと思います。

また、私たち国家公務員は法案の作成に従事しますが、その法案を「法律」として成立させるのは、当然ながら国民から選ばれた国会議員で構成される国会です。

「こういう法律があったほうが国民の皆様の利益になるのではないか」という案があれば、法案を国会に提出し、審議いただき、法律を成立させるかどうか判断いただくことになります。他の府省庁とも連携しながら「なぜこの法律が必要なのか」と、法案について丁寧に説明する必要があります。

こうしたプロセスは、もしかすると民間の方々には時間のかかるもののように映るかもしれません。しかし、法律は個人の権利・義務に関わるものであり、私たちの暮らしの基盤になるもの。この国に暮らす多くの国民の方々に影響を及ぼすものです。

ゆえに、新たな法律や法改正を提案する場合には、日本の民主主義のプロセス一つひとつを大切にしなければなりません。

関係する国民の皆さま、国会議員の方々、他の府省庁の関係者など、さまざまステークホルダーと合意形成を進めつつ政策を進めることは、得難い経験になります。自分が携わった法制度が実際に動き出して、国民の皆さまから感謝の声をいただいた際の達成感は格別です。

この国の課題に挑み、“未来”につながる仕事をする

中野芳崇(企画調整官)

――「法令」という社会的にも影響が大きい分野に携わることは責任も大きいですが、他では経験できないやりがいもありそうだと感じます。

中野:
アナログ規制見直しの取組」のプロジェクトは、私たちのチームにおける社会のデジタル化への取り組みとして、わかりやすい例だと思います。

冒頭でご紹介したフロッピーディスクなど特定の記録媒体を使うように定めた規定も、その一つですね。他にも、人による目視や点検を求めるアナログな規制も見直しています。

たとえば、河川・ダムや都市公園の管理者が、維持・修繕のための点検を基本は目視で実施しているアナログ規制があります。

このようなアナログ規制を見直せば、ドローン、水中ロボット、常時監視、AIによる画像解析などの活用を進めることで、インフラ管理の効率化と安全性の向上を図ることが可能となります。さらに、アナログ規制の見直しに向け、デジタル技術の活用に関して安全性・実効性の観点から、技術の検証も行っています。

デジタル庁では、アナログ規制を類型化し、それぞれの類型と内容と、デジタルで代替でき得る技術の対応関係を整理・可視化したテクノロジーマップというものを公開しています。

テクノロジーマップ パターン1(規制の判断・対応内容に着目)

我有:
各府省庁が所管するアナログ規制は約1万条項にのぼる規模でしたが、これを見直すことで、コストの削減や新たな需要の増加など、GDPへの影響は約3.6兆円増になるという経済効果の試算があります。

このような大きなプロジェクトに弁護士として関われるのも、仕事の大きなやりがいだと感じています。

アナログ規制見直しに係るGDPへの影響についての説明資料画像
アナログ規制の見直しによる経済効果(中間報告)(※数値については今後の精査の結果変わる可能性があります)

また、2040年には日本の生産年齢人口は6000万人未満まで減少すると推定されています。深刻化する労働力不足という課題も、デジタル化で業務を効率化することができれば、解決できる可能性があります。

中野:
日本のデジタル化の遅れは、重要な課題だと指摘されることもありますが、遅れている部分を進めるという、社会のデジタル化にミッションとしてコミットできるデジタル庁での仕事は非常にやりがいがあると思います。

また、デジタル庁は意思決定が早いことも特徴です。アナログ規制の見直しも、全ての法令を点検し、約1万条項を洗い出し、2年半ほどで見直すものです。

個別に見直していたら普通は10年ぐらいかかかりかねない見直しを、まさに前例のない早さで行っています。この規模やスピード感も仕事のやりがいにつながっています。

行政出身の人もいれば、我有のような民間からのプロフェッショナルもいる。そんな多様性は、イノベーティブなアイデアも生み出されやすい環境と言えますし、日々進歩しているデジタル分野を扱っていることもあって仕事もスピード感があります。

現在募集している「法務スペシャリスト」の職も、弁護士の方などリーガルに知見がある方をはじめ、他の府省庁で法律の知見をもとにお仕事を経験されたことがある方でも、これまでのご経験に負けない面白い仕事ができるのではないかと思います。

我有:
官公庁全般に言えると思いますが、社会全体を見つつ、日本の将来を意識しながら仕事をすることは、大きなやりがいだと思います。

自分が携わっている仕事が、この国の未来にどう生かされていくのか。デジタル化が進むことで、社会はどうなっていくのか。そんなことを考えながら日々の業務に取り組んでいます。

「この国に暮らす人々の生活を、デジタルの力で便利に」

――デジタル庁では我有さんが担当されている「法務スペシャリスト」を募集しています。具体的にどのようなスキルセットを持つ方を求めていますか。

中野:
いままで経験したことのない仕事であったとしても、主体性や熱意を持って共に取り組んでいただけるというのが一番重要ではないかと考えています。

そして、この国に暮らす人々の生活をデジタルの力で便利にしたいというデジタル庁のミッションに共感していただくとともに、法令を審査したり、法案を立案したりすることに関心がある方であれば、様々なエキサイティングな業務に携わることができるかと思います。

変えるべきものがあっても、実際に変えるとなると大変な労力がかかることがよくあります。そんなときでも、ビジョンや熱意をもって「これはやるべきだ」と向き合いたいと思えるかどうか。

「この国に暮らす、すべての人に関わる仕事」という気概をもって、ステークホルダーと積極的にコミュニケーションを積み重ね、熱量を持って働いていただける方とぜひ一緒に働かせていただきたいと考えています。 

もちろん、テクノロジー分野への関心や業務経験がある方もご活躍いただけると思います。必須ではありませんが、デジタル分野は専門用語もありますので、一定の知見があればスムーズに業務に入れると思います。

――入庁前と入庁後でイメージにギャップはありましたか。

我有
弁護士レベルの法令への知見が求められる仕事なので、私自身も入庁前は「(弁護士の仕事の延長のような形で)法改正に関する相談を受けて、自分の知見から回答する仕事が半分ぐらいかな?」と思っていました。

実際の現場では、自分から主体的に考える場面が多く、法制度のデジタル化に関する業務でも、「法制度のデジタル化を進めるためには、これをやるべきでは?」と進んで提案する姿勢が評価されます。これはいい意味でギャップがありました。

自ら企画を提案することでプロジェクトが進むと非常にやりがいがありますし、他のプロジェクトにも興味・関心の輪が広がり「こっちのプロジェクトも一緒にやってみない?」と仕事の幅も広がりました。

私が参加した「アナログ規制見直しの取組」プロジェクトも、「1万条項の法令を一気に見直して改正するなんて、おもしろそうなことをやっているなぁ」と、そんな気持ちで手を挙げて入りましたが、デジタル庁に入った後に興味の幅も仕事の幅もどんどん広がっていきました。

中野:
自ら積極的に提案して、物事をより良くしようというマインドはデジタル庁全体に通じるものです。

以前、若手の行政官が、大人数の会議の場で果敢に提案をした後に、そのような提案をしてよかったのか気にしていたところ、我有は「積極的な発言というのは、いつでも評価されるはずです」と励ましていました。

この若手の行政官や我有のようなマインドの方がデジタル庁には合うのではないかと思います。

我有:
積極性が評価される職場でありつつも、きちんと働きやすさが担保されていることも良い点だと思います。

私自身は週5日勤務ですが、半分ほどはリモートワークを採り入れています。育児中なのですが、子どもを保育園に送り迎えする時間に合わせて働けることも魅力です。働き方のアレンジがしやすい点も、デジタル庁の先進性を感じています。

――法律のプロフェッショナルであり、コミュニケーションや新しい技術が好きな方、デジタル庁のミッションに共感していただける方であれば活躍の場は多そうですね。入庁後はどんなキャリアパスが描けそうでしょうか。また、どのような点で成長を実感できそうでしょうか。

中野:
「法務プロフェッショナル」として入庁いただいた方には、基本的には冒頭で私がご紹介した三本柱の業務に関わっていただくことになると思います。また、ご本人の適正や希望、プロジェクトの進捗状況なども踏まえて、一緒にお仕事ができればと思います。

我有:
成長という点では、個人的には「民間に戻ったとき、自分は世の中のどんな役に立てるだろうか?」という視点が大切だと感じています。

デジタル庁の取り組みには、民間に戻ったときにも関わることができるものが多数あります。たとえば「テクノロジーマップ」の取り組みは、民間企業の皆さんの技術開発が前提となっています。

私は入庁前にスタートアップ領域に携わっていましたが、行政機関がどのようなビジョンを持ってデジタル化を考えているかという知見は他では得られない糧だと思いますし、スタートアップ支援に繋げることができると思います。この先も、官と民が協力しあって日本のデジタル化を進める場面で、私のデジタル庁での経験を活かしたいと考えています。

中野:
いまはやりたいことが具体的になくても、実際に入庁していただければ「あれもこれもやれそうだ!」と思っていただけると思います。

法律の知見をお持ちで、「社会の課題を解決したい!」という気持ちがある方には、とてもやりがいのある環境だと思います。ご関心のある皆さまからのご応募お待ちしています。

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