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行政職員等の業務効率化に貢献する。「職員ID基盤」プロジェクトの挑戦

デジタル庁の省庁業務サービスグループ(以下、省庁G)では、国の行政機関や地方自治体を対象とするITインフラやサービス提供(職員の業務環境、アプリケーション、システム基盤など)に関する業務を担い、行政機関の生産性向上や効率的なシステム整備への貢献を目指しています。

省庁Gには30を超えるプロジェクトがあり、新たな人材を募集しているチームもあります。その一つが、「職員ID基盤」プロジェクトです。

現在、各府省庁で使用されている情報システムのID管理や認証機能は、それぞれの府省庁で情報システムごとに整備されています。

そのため職員がシステムごとにID・パスワードを運用する手間や、毎年数回実施される府省庁を超えた異動の際にシステムごとに登録情報を更新するシステム担当者の手間などの課題があります。

そこでデジタル庁では、行政機関におけるシステム整備の効率化・迅速化、政府職員の業務効率化などを図るため、政府全体として統合化された「職員ID基盤」の実現に向けて取り組んでいます。

今回のデジタル庁noteでは、日系大手SIerのエンジニアやITコンサルタントを経てデジタル庁のプロジェクトマネージャーを務める佐藤雅之に、プロジェクトの概要や今後の開発計画などを聞きました。

プロフィール:
プロジェクトガバナンスユニット/プロジェクトマネージャー
職員ID基盤プロジェクト
佐藤 雅之

社会人人生の後半戦。スキルを世の中のために生かし、経験値を高めたい。

インタビューに応じる佐藤のバストショット。オフィスで窓ガラスを背景に話をしている様子を、右斜め前から撮影している。
インタビューに応じる職員ID基盤プロジェクトの佐藤

――佐藤さんは40代前半まで民間企業でキャリアを積み、デジタル庁に入庁しました。これまでお仕事やキャリアチェンジのきっかけについて聞かせてください。

佐藤:
キャリアのスタートは2001年に新卒で入社した日系の大手SIerでした。金融システム事業部に配属され、クライアントであるメガバンクのインフラを構築するシステムエンジニア(SE)として働いていました。

SEはその仕事量が「◯人日」と表現されるように、自分自身が商品になる仕事です。技術を磨くことはもちろんですが、社内評価よりも自分の市場価値を向上させなければと考え、さまざまな資格取得にもチャレンジしました。

さらに10年ほどシステム開発の経験を積む中で、チームリーダーやプロジェクトマネジメントの役割にも挑戦しました。しかし、メガバンクのシステム開発はエンドユーザー(サービスを最終的に利用する消費者)までの距離が遠く、自分がつくったプロダクトの評価が見えづらかった。「もっとお客さまの近くにいかなければ、更なる成長ができない」と考え、ITコンサルタントに転職しました。

コンサルタント時代はクライアントであるグローバルに活躍する企業のIT部門と伴走しながら業務改善をしたり、合併した地方銀行のシステムと事務の統合を進めたりと、数百人規模のプロジェクトをマネジメントする経験は自分の強みになりました。

ただ、コンサルタントを11年間勤めたとき、年齢は42歳になっていました。社会人人生も折り返しです。そこで、これまでのスキルを活かしつつ、社会人人生の後半戦に向けてさらに経験値を高めたい。そう思い、次の転職を考えました。

このままコンサルタントを続けても、実績の数が増えるだけで、新しい武器はつくれない。であれば、もっと新しい仕事に飛び込んで、これまでとは異なる経験やスキルを身に着けるべきだ、と。

ちょうどその頃、いくつかの行政機関で民間人材を登用する機運が高まっていることを知りました。ITの世界で20年以上働いてきた自分であれば経験を活かせそうだなと考え、応募している中から行政機関の中でも比較的新しく、あまり枠にとらわれなさそうな組織を選びました。そこで、デジタル庁の採用募集に応募し、2022年9月に入庁しました。

コンサルタント企業から行政機関への転職だったので、家族からは少し心配されました。ただ、「これからも続く人生を10年単位で見ると、40代~50代はさらに経験値を高めるフェーズだと思う」「さらに年を重ねても社会で価値を発揮できる人材になりたい」と丁寧に伝え、理解を得ました。

インタビューに応じる佐藤のバストショット。オフィス話をしている様子を、右側面から撮影している。

――実際にデジタル庁で働いてみて、入庁前と入庁後でイメージにギャップはありましたか。

佐藤:
コンサルタントとして政府系金融機関のプロジェクトを担当した経験があったので、ある程度は想像できたのですが、一つイメージと違ったのはデジタル庁には想像以上にバラエティ豊かな人材が集まっていたことです。

さまざまな府省庁や地方自治体、民間からも多くの人材が入庁しています。また、「すべての国民にとって有意義な仕事をしたい」という民間企業とは異なるモチベーションで働く環境にも刺激をもらっています。

政府情報システムの新たなインフラサービス「職員ID基盤」が目指すもの

インタビューに応じる佐藤のバストショット。オフィスで話をしている様子を正面から撮影している。

――佐藤さんが携わっている「職員ID基盤」プロジェクトについて教えてください。具体的にどのような課題を解決するものなのでしょうか。

佐藤:
これまで行政機関では、組織ごとに個別の情報システムが開発・運用され、それぞれIDが発行されていました。そのため、職員はたくさんのIDやパスワードを使い分けなければいけなかったり、システム管理者は複数のシステム間で利用者の行動を追跡できなかったり、さまざまな業務上の不便を抱えていました。

これらの課題を解消するため、「職員ID基盤」プロジェクトではシステム利用者の認証や認可に係るサービスを共通機能として政府情報システムに広く提供すること を目指しています。

構想どおりにアーキテクチャを刷新できれば、情報システムごとの認証機能やパスワード管理は不要になります。利用者の行動もシステムを跨いでも一元的に可視化でき、セキュリティの高度化にも寄与できます。また、省庁間の異動の際もシステム毎に登録情報を更新する手間がなくなるほか、一度民間企業などへ転職した職員が再入庁した際にも同一人物と確認できる仕組みにより多様な人材に対応しやすくなります。

これまでは実機を用いた概念実証や業務とシステムの要件整理を進めてきましたが、今年度からいよいよシステムの整備に取りかかります。

職員ID基盤が目指す将来像4つ。情報システム毎の認識機能や組織毎のID基盤は不要。情報システム毎のパスワードは不要。リボルビングドアに対応した人材の管理が可能。システムログの一元的な可視化に寄与。
「職員ID基盤」が目指す将来像

――プロジェクトに携わる中で、特に印象に残っていることはありますか。

佐藤:
「職員ID基盤」プロジェクトは私が入庁した2022年9月に発足され、私がプロジェクトマネージャーとしてアサインされました。

チーム専任のメンバが誰もいない中、入庁直後から予算要求にはじまり基本計画の策定など、プロジェクトのスタートダッシュをきるための業務を担当することになり、なかなか大変だったこともありました。

ただ、予算要求に必要な資料や交渉のポイントなどは、自チームの管理職の行政官や隣のチームの行政官から丁寧にアドバイスをもらえたので、初めての仕事でも安心して取り組むことができました。

財務省への予算要求のプレゼンや閣議に提出する資料の作成、事業者との契約、メディアの取材など、民間出身の自分に幅広く対応を任せてもらえたことは驚きとともに、やりがいを感じましたね。民間にいてはとてもできない領域の業務に、この1年で相当関わることができたと思います。

プロジェクトメンバーも皆さん丁寧に面倒を見てくれますし、相談すればしっかりと時間を割いて教えてくれます。民間から転職を検討されている方は心配されるかもしれませんが、業務がわからなくて困ることはありませんので安心してください。

インタビューに応じる佐藤のバストショット。オフィスで窓ガラスを背景に話をしている様子を、右斜め前から撮影している。

――現在の仕事でやりがいを感じる部分があれば、ぜひ教えてください。

佐藤:
「職員ID基盤」プロジェクトはまだまだ走り出したばかりなので、本格的なやりがいはこれから感じられるようになるのだとは思います。

ただ、プロジェクト規模と責任の大きさはすでに実感しています。プロジェクトマネージャーと共にこれだけの規模の事業を推進・管理する経験や、国家公務員として実務に携われることは貴重な経験だと思います。

また、ID管理や認証・認可機能などのシステム実現に関する技術的な知見を深めることができるのも、大きなやりがいになると思います。

ある日系企業がグローバルに提供している社内システムの利用ユーザーは約30万人と聞いたことがありますが、行政を担う国家公務員はおよそ約59万人、自治体職員は約280万人にのぼります。

利用ユーザーは段階的に拡張する計画ですがとてつもない規模のプロジェクトです。政府のインフラを整える仕事に携われることは、これからの社会人人生にかならず生きると感じています。

「職員ID基盤」の開発フェーズに取り組む新たな仲間を募集。

インタビューに応じる佐藤のバストショット。オフィスで話をしている様子を、左斜め前から撮影している。

――職員ID基盤プロジェクトの今後の展望を聞かせてください。

佐藤:

立ち上げ期間にやるべきタスクは終わったので、これからはプロジェクトを進め、実際に手を動かすフェーズです。まずは1年半ほどでシステムの基幹部分を構築していきます。本人確認の際にはマイナンバーカードを活用したいので、所管の総務省やJ-LIS(地方公共団体情報システム機構)とも相談をして実現に向けて進めていきます。

今後の山場となるのは、2026年度以降に各府省庁のシステムと職員ID基盤を連携し、新しい基盤へ移行、運用を開始していく時期だと考えています。

まずは現在1000人規模のデジタル庁で先行リリースし、実際の運用を確認したのち、各府省庁に広げていく計画です。ワクワクと同時に不安な気持ちもありますが、システム開発に動き出すこれからがやりがいがさらに増すタイミングだと思います。

――やりがいがさらに増える今のタイミングで新たな人材を募集しています。どのような方が活躍できるでしょうか。

佐藤:
自分の頭で考えて行動し、チームワークを発揮しながら実行できる方であれば、ぜひ参画いただきたいですね。自分事としてやるべきことを考え、それを実行でき、協調性を持ってチームワークできる方。また、成長意欲が高い方や、困難も楽しめる方であれば、私との相性も良さそうですしご活躍いただけると思います。

スキル・経験面では、プロジェクト管理やその補佐の実務、認証系のシステム開発経験、国や地方公共団体の業務に関する実務経験、多数の関係者と事業計画等を協議し、合意できた実務経験などをいずれかお持ちであればアドバンテージがあると思います。

より高い成長意欲をお持ちの方にもおすすめしたい職場です。複数のプロジェクトを兼務するなど、手を挙げれば領域の外の仕事にも挑戦できるチャンスがあります。

私自身も、もともとはプロジェクトガバナンスに興味があったため、職員ID基盤プロジェクトと並行して政府行政官向けの情報システム研修を担当しています。

さまざまなスキルや興味が混在するデジタル庁だからこそ、業務の垣根を超えてみんなで成長していける雰囲気があります。ご興味を持っていただいた方のご応募を、ぜひともお待ちしています。


◆「職員ID基盤」などに携わる省庁業務サービスグループの採用情報は以下のリンクをご覧ください。

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