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デジタルで、明日と5年後の「うれしい」をつくる

デジタル監の部屋、始めます

デジタル監の浅沼です。
noteにデジタル監の部屋マガジンを作りました。

昨年9月に設立したデジタル庁の取り組みは、政策立案からデジタルサービスの提供まで多岐にわたります。さらに、いままでの行政機関では考えられないような新たなアプローチで活動を行っているのですが、外から見ると分かりにくい部分やぜんぜん認知されていない部分があるなと感じていました。

そこで、デジタル庁が何を目指し、どんな活動を行っていて、日々の生活にどう関わり、今そして未来の社会にどう貢献しているかなど、できるだけわかりやすく、オープンに、私自身の考えも含めて伝えていきたいと思っています。初回は昨年9月に発足したデジタル庁の役割とこれまでの取り組みについてです。

日本のデジタル化を担う新たな組織づくり

デジタル庁は、「デジタル社会形成の司令塔として、デジタル時代の官民のインフラを今後5年で一気呵成に作り上げること、そして、徹底的な国民目線でのサービス創出やデータ資源の利活用、社会全体のDXの推進を通じ、全ての国民にデジタル化の恩恵が行き渡る社会の実現」することを掲げています。

言い換えると、「日本のデジタル基盤を今後5年で整備して、民間企業や行政機関から、国民や企業がうれしいと感じるサービスが次々に生まれてくる社会をつくる」ことであると考えています。

この大きな役割を担うために、創設からこの10ヶ月、職場の環境整備からはじまり、各省庁との調整、民間からの専門人材の採用、人事制度の整備、組織文化の形成など、組織づくりに取り組んできました。その成果もあり、民間企業で働く方からも、大変多くの応募をいただいています。

また、霞ヶ関全体の課題である行政人材不足を解消するために、柔軟で効率的な働き方ができるような環境や仕組みも整えてきました。リモートワークを推進したり、Slackなどの新たなコミュニケーションツールを導入するなど、霞ヶ関における新しい働き方や働く環境のモデルになりつつあります。

この組織づくりを進めつつ、並行して、現在運用中のシステムやサービスの改善、新たな機能開発やサービスリリースの準備、海外の政府との連携に向けた調整、政策立案や法改正の推進、国会対応など多くの業務を行っています。

明日の「うれしい」をつくるサービス開発

国民に直接届けるサービス開発については、2021年12月20日に新型コロナウイルスワクチン接種証明書アプリ(以下、ワクチン接種アプリ)をリリースしました。

新型コロナウイルスの感染リスクが低減されたなかで、国民が安心して移動や事業活動を行えるように、デジタル庁が中心となり約3ヶ月間という短期間でこのサービスを開発しました。

利用者はワクチン接種のデジタル証明書をモバイルアプリで簡単に取得して、必要に応じて素早く提示することができます。飲食店、宿泊施設、交通機関、イベント会場などで利用いただくことを想定しており、2022年7月10日時点でダウンロード数は約740万、接種証明書発行回数は約850万回となりました。

このアプリにより、自治体の窓口に出向いて紙の接種証明書を発行する手間もなくなり、自治体職員の業務負荷も大幅に軽減することができました。アプリの使いやすさや分かりやすさにおいても、ストア評価はiOSで3.6、Androidで4.2という行政機関が提供するモバイルアプリとしては異例の高評価を得ています。

ワクチン接種アプリは、デジタル庁という全く新しい組織のかたちを持つ行政機関だからこそ実現できた好事例だと思っています。デジタル庁には多様な経験やスキルを持つ職員が各省庁、地方自治体、そして民間企業から集まっています。その職員たちが機動的に連携し、今までの行政機関では難しいとされていたアプローチで多くの難題を解決してきました。例えば、フラットな組織による迅速な意思決定、省庁横断でのシステム企画や総合調整、Slackを活用した地方自治体との綿密な連携、民間出身人材のノウハウを活用したデータ基盤整備やプロダクト開発、スタートアップ企業との協業開発など今までの霞ヶ関にはないアプローチです。デジタル庁のような組織がなかったら、短期間で多くの国民が簡単に使えるワクチン接種アプリのようなサービスはリリースされることはなかったでしょう。

ワクチン接種アプリは、国が整備したワクチン接種記録システム(VRS)というデジタル基盤を活用して、今、国民や企業が求めるサービスを提供する活動のひとつです。これは、デジタル庁が旗振り役となり、デジタル技術を活用して、明日の「うれしい」をつくる活動と言えます。

5年後の「うれしい」をつくるデジタル基盤の整備

同時に、5年後の「うれしい」をつくる活動もデジタル庁の重要な役割です。
具体的には霞ヶ関や地方自治体を横断したデジタル基盤の整備があります。

現在は全国1718市町村が、基本的にはそれぞれに行政システムの調達を行い、設計し、住民に行政サービスを提供しています。自治体ごとにシステムの性能やデータ連携の仕組み、運用ルールや業務プロセスが違うので、自治体を跨いだ対応やサービス提供が必要な場合、開発に膨大な時間や費用かかったり、職員に必要以上に負荷がかかったりして、結果として国民や企業が求めるサービスを最適なタイミングで提供できないという問題が生じます。

例えば、引越しの時に何度も同じ情報を書かないといけなかったり、災害時や緊急時に必要とされる行政サービスの提供が遅れてしまうということなどが挙げられます。霞ヶ関においてもデジタル基盤の共通化は大きな課題であり、例えば、オンライン会議ツール一つとっても、各省庁で使用するツールがバラバラでコミュニケーションの分断を生む原因の一つとなっています。

デジタル庁では自治体を横断したデジタル基盤を整備するために、政府共通のクラウドサービス環境の整備、業務システムの統一や標準化、政府共通の業務環境整備、マイナンバーなど国の共通ID基盤の整備、活用データの標準化や公開、サイバーセキュリティの強化など、霞ヶ関や地方自治体で分断されている行政システムの共通化や標準化を着々と進めています。

5年後には、このデジタル基盤を活用することによって、民間企業や行政機関が、少ない労力で安全に素早く、生活者が「うれしい」と思えるサービスを提供することができるようになるはずです。このデジタル基盤の整備は、一般の方からすると直接目にすることも触れることもなく、日々の生活でその効果を感じにくいため、その必要性や重要性が理解されにくいですが、中長期でのデジタル庁の主要な活動となります。

冒頭でデジタル庁の役割は「日本のデジタル基盤を今後5年で整備して、民間企業や行政機関から、国民や企業がうれしいと感じるサービスが次々に生まれてくる社会をつくる」ことであると書きました。これは、「デジタルで、明日と5年後のうれしいをつくる」活動です。引き続き、この役割を担うための組織づくりを進めると共に、今提供できるサービスをつくるだけでなく、将来を見据えた日本のデジタルインフラの整備を着実に進めていきたいと思います。

次回も、デジタル庁の現在そして将来に向けた取り組みや事例について紹介していきます。