経験者採用を経て入庁した2人の、デジタル庁で働く魅力とやりがい(2)
デジタル庁では、計7名が「経験者採用試験(係長級(事務))」を通じて入庁しており、行政官としての仕事を日々学びながら様々なプロジェクトを推進しています。
前職の経験は自治体や民間企業など様々ですが、官民融合の組織であるデジタル庁において、霞が関外での経験はとても重宝されており、周囲からの期待もとても大きいです。
そこで先月は、経験者採用で入庁した清水、西村のインタビュー記事を公開しました。
こちらの記事に続き、本記事では経験者採用で入庁した本吉、佐藤に入庁前後のギャップ、働く環境、魅力などについてインタビューしました。
デジタル庁の仕事とこれまでの経験
ー まずはおふたりの現在のお仕事について教えてください。
本吉:
私は2022年4月にデジタル庁に入庁し、デジタル社会共通機能グループで公共サービスメッシュと呼ばれる情報連携基盤の設計・構築に携わっています。
ひとことで言うと、「スマホで60秒で手続が完結する」「7日間で行政サービスを立ち上げられる」といったコンセプトをシステム的に実現するための土台部分を作ろう、というプロジェクトです。
これらはユーザーの目に直接触れるものではないのですが、デジタル庁でなければ実現することができないことなので、共通の土台作りに携われることにはとてもやりがいを感じています。大変なこともありますけどね(笑)。
私自身は、このプロジェクトの現場監督のような立ち位置で、システム完成までの計画を作ったり、計画通りにプロジェクトが進行しているかをチェックする役割を担っています。
プロジェクトは様々な業務を一部委託しながら進めていきますので、こうした外部事業者と連携することは重要な仕事の一つになります。
チームの構成としては、他省庁や自治体から出向でデジタル庁に来た行政官の方たちと、民間専門人材の方たちが、ちょうど半々くらいでしょうか。
それぞれの専門や知見を出し合いながら、一見地味に見えるような課題を一つずつ丁寧に解決しています。皆さん年齢もご経験もバラバラですが、だからこそ色々な視点から課題解決に向けたアイデアを出し合えていると感じています。
佐藤:
私は、2023年4月にデジタル庁に入庁し、デジタル社会共通機能グループに配属され、デジタル庁の所管法人であるJ-LIS(地方公共団体情報システム機構)をサポートするチームに所属しています。
J-LISは、地方公共団体の行政サービスを支える各種システムの運用を担っている組織で、間接的にではありますが、マイナンバー制度や住民サービスを支えているという自負を持って仕事をしています。
自分が関わる仕事が社会から注目されるのは、とてもプレッシャーが大きく大変なこともありますが、強いやりがいを感じています。システムに関する技術が日進月歩で進化していることもあり、入庁してからは勉強を重ねる日々です。
私のチームは他省庁等から出向でデジタル庁に来た職員3人と私、という4人体制で、全員が行政人材です。
国会対応や部外の打合せ対応など、少人数ゆえの慌ただしさもありますが、行政組織が未経験かつ入庁間もない私にも、様々な業務を経験させてもらえており、とても有り難いなと感じています。
対面での打ち合わせや外勤等の用務がない日は、自宅でテレワークをすることが多いです。ここは「さすがデジタル庁!」という感じで、環境がしっかりと整備されていて、自宅からでも出社時と全く同様の作業が可能となっているので、とても快適にテレワークができていますね。
チームメンバーや他チームの人に何か相談したいことがあるときには、気軽にチャットを送ったり、オンライン通話で話したりすることができ、テレワーク中も安心して仕事ができています。
ー お二人のこれまでの経験を教えてください。
本吉:
大学では、情報などとは無縁の政治学を専攻していました。しかし、パソコンやガジェットが好きだったこともあり、アルバイトで障害者のIT利用を支援する施設で働いていたんです。
心身障害をお持ちの方に、パソコンを利用するための補助ツールやアプリを紹介したり、就労支援のイベントを企画するような施設だったのですが、「これまで不可能だったことがITの力で可能になること」を目の当たりにして、これが私にとっては貴重な経験になりました。
また前職では数年間にわたり、情報システム部門で業務システムの大規模改修、社内データ分析のための新システム構築などを担っていました。大学時代にした経験とはまた異なり、企業活動の中でのITの力をひしひしと実感していました。
その一方で、現場に近い業務、特に公的機関とのやりとりにおいては「紙」が支配的である現実も目にしました。
新型コロナウイルス感染症が流行しだした2020年4月には、土地や建物を取り扱う部署へと異動したのですが、土地の境界画定や登記などあらゆる公的手続において書面が必要で、周囲がテレワークを行う中で私の部署では全くテレワークが行えないような状況にもなっていました。
とはいえ、これは市区町村のレベルでどうにかできる話では無く、国全体として制度とシステムの両面を見直していかない限り、デジタル化を進めることが難しい点もよく理解できたんです。
そして、私自身は情報部門に適性がありそうだと思い始めていたこともあり、会社の中でDXを進めるよりも、国全体のDXに関わることに自分の残りの人生を使ってみたいと考え、デジタル庁の門を叩きました。
佐藤:
私がデジタル・ITに強い興味を抱いたのは、案外最近のことなんです。大学では法学部で知的財産権法を専攻していたのですが、新卒では運輸系の研究機関に事務系職員として入社し、総務人事スタッフとしてキャリアを重ねました。
そして入社から3年が経った2017年、グループ企業で構成される「健康保険組合」に出向することに。
ここでは、数十万人の加入者の健康診断の情報を管理するシステムの改修に携わったのですが、システムベンダーとのコミュニケーションに非常に苦労して、こちら側が要求している仕様をうまく伝えることができないままに要件定義が進んでしまい、最終的に使いやすいシステムに整えるまでにかなりの時間と労力を要する、という経験をしました。
この反省を踏まえ、システム開発に当たっては、発注側担当者こそITリテラシーを身に着けることが重要ではないかとの考えに至り、以降IPA(情報処理推進機構。経済産業省所管の独立行政法人)が実施する情報処理技術者試験の勉強を通じて、ITシステムに関する体系的な知識の習得に努めました。
その後2021年には、当時加入者向けに紙媒体で発行していた「健保だより」をWebメディアに移行するというプロジェクトを担当しましたが、勉強の甲斐もあってホームページ制作業者との調整も円滑に進み、無事に移行を完遂させることができたんです。
この頃から、デジタル・ITを用いて、多くの方に役に立つような仕事をしてみたいという思いを抱き始めました。
そして、健康保険組合への出向を終えた直後から、より公益性の高い業界を志望して転職活動を始めました。
その過程で、デジタル庁が経験者採用で行政人材を募集していることを知り、できたばかりの新しい組織で、自分の知識や経験をどこまで生かせるか試してみたいとの想いで採用試験に申し込みました。
デジタル庁を知ったきっかけと志望理由
ー デジタル庁を知ったきっかけをお教えてください。
本吉:
デジタル庁の存在自体は「コロナ禍で新しい省庁を創設する」と報道などで大きく取り上げられており、話題性もあり、必然的に耳に入ってきました。
自分自身も、前職で情報部門での業務デジタル化と、デジタル化が進んでいない行政機関との紙のやりとりの両方を経験した頃でしたので、デジタル庁創設という政策にはとても共感していました。
デジタル庁がこれまでの国のデジタル政策と決定的に違うと私が感じたのは、デジタル化に対する「本気度」だったと思います。
これまでのデジタル政策は、どうしてもシステムの構築といったところに重点があったように思われるのですが、デジタル庁は制度も含めて抜本的に見直すことを掲げていたり、バラバラに整備されてきたデータやシステムを統一化することを目指していたり、「デジタル化にとって本当に必要なことをやってやろう」という強い意志を政策ラインナップから感じました。
「日本のデジタル化は遅れている」というのは、コロナ禍以前から繰り返されてきた問題意識でしたが、抜本的にデジタル化を目指そうという動きは、デジタル庁以前にはありませんでした。
デジタル庁創設にあたっての政策を見て、「もしかしたら本当に変わるかもしれない」と思ったことが、より深くデジタル庁を知ってみようと思った出発点になりました。
佐藤:
私も、デジタル庁を設置するという構想がニュースで報じられるようになった頃から気になっていました。この国を大きく変えるチャレンジングな取組に、自分も何らかの形で参画したいという思いを抱きました。
それ以降、内閣官房IT総合戦略室(デジタル庁の前身にあたる組織)のホームページに掲載されていた採用情報を時折眺めていましたが、IT企業での経験を前提とした求人が多かったこともあり、総務人事系の経験が中心の自分としては、正直なかなか難しいのかな……と考えておりました。
そんな中で、経験者採用試験の存在を知りました。ただ、公務員試験の勉強にプレッシャーを感じていたことや、当時民間企業の中途採用にいくつか応募していたこともあり、2021年度実施の経験者採用試験は受験を見送りました。
しかし、2021年9月のデジタル庁発足のニュースを見て、やっぱりここで仕事をしてみたいという思いが強まり、一念発起して公務員試験の準備を開始しました。
ー どのような点に魅力を感じたのか教えてください。
本吉:
ユーザーの視点に立って、効率的で良いサービスを提供しようという姿勢に、まずは大きな魅力を感じました。
行政機関は、民間企業のように人々から選ばれる存在ではなく、人々に「この方法で申請して下さい」とか「この方法で手続して下さい」などと、強制力をもってサービスを規定することが出来ます。
これから人口がどんどん減っていく世の中で、デジタルで代替できることをいつまでも非効率な方法で続けていては、減少していく労働力を成長のために使うことができません。
こうしたどのような行政機関にも共通する課題を、ユーザーにとって便利なものになるよう一気通貫で変えていくことで、日本全体を変えていけるということが、デジタル庁の魅力だと考えています。
実際に、デジタル庁では「ユーザーにとって便利なのか?」という視点を常に持ちながら仕事をしている職員が多いように感じます。
霞が関全体でもそういうマインドはあると思いますが、特にデジタル庁はユーザーにより近い分、よりそうした視点を重視しようというマインドがあるのではないでしょうか。
佐藤:
他の府省庁と異なり、特定の政策分野に限定されずに、分野を横断してデジタル化の推進に向けて取り組む組織であることが、デジタル庁の最大の魅力だと思っています。
私も、J-LIS担当チーム固有の仕事だけでなく、関連する技術的な仕事にも関わらせていただいており、そうした柔軟さ、組織全体のフットワークの軽さもよいところだと感じます。
余談ですが、入庁後、みんなもっとラフな服装で仕事しているのかと思っていたら、毎日スーツという人も一定数いたことにギャップを感じました。
私個人はファッションにとても疎いので、入庁後の服装は大きな悩みの種でしたが、ひとまず安心でした(笑)。ただ、先日デジタル庁Tシャツを手に入れたので、夏はTシャツ中心で働いてみようかと思っています。
経験者採用の選考フローを振り返って
ー 自身の経験者採用を振り返ってみて感じることはありますか?
本吉:
まずは経験者採用のことを知ったのが、既に申し込みまで期日がほぼ無いタイミングでしたので、後先考えずにとりあえず申し込みをした記憶がありますね。
あとは基礎能力試験の対策については、人事院のホームページに問題の例が掲載されていましたので、どのような問題が出るか確かめることを中心に学んでいました。
特に、英語の長文読解は大学卒業以来でしたので、経験者採用ではない公務員試験の過去問題を解いて練習をしました。
また、論文試験もありましたので、事前にある程度論文の内容の方向性を考えておき、試験会場で焦らないよう準備をして臨みましたね。
私の場合は幸運で、自分の経験やコロナ禍という世の中の動き、デジタル庁発足といった出来事が全て自分の中でかみ合った結果として、デジタル庁に転職する道を選ぶことが出来ました。
ですが、この結論に至るまではかなり自問自答し、本当にこれまでのキャリアや人間関係をリセットしてでもチャレンジすべきかどうか、自分が納得いくまで考え抜いたように思います。
デジタル庁はまだまだ新しい組織で、自分自身でやるべきことを考えたり、価値をつくっていかなければならなかったりすることが多々ありますジョン・F・ケネディの演説ではないですが、組織が自分に何をしてくれるかではなく、自分が組織に何が出来るか考えられるような人が、ここでは大きく成長できるのでは無いかと思います。
佐藤:
基礎能力試験に向けては、文章読解問題を中心に、市販の問題集を用いて準備しました。また、経験論文試験については、健康保険組合への出向中に取り組んだホームページ改修業務の経験をもとに文案を構成しました。
何度も書いて練習して、当日は覚えたものを再現することに努めました。その結果、基礎能力試験は満足のいく出来で、経験論文試験も通過することができました。
2次試験の人物試験(個別面接)では、朝の眠気が残っていたこともあり、必ずしも自分の思いを端的に伝えることができなかったと思っています。
その後の政策課題討議試験(グループディスカッション)では、進行役として議論を整理しつつ、与えられた議題に対しては少数派意見を唱える者として、必死に議論に取り組みました、その結果良い評価が得られたと思っております。こうして人事院の試験は何とか合格することができました。
官庁訪問(デジタル庁での面接試験)の際には、これまでの仕事を通じて経験してきたことや、抱いてきた思いを、いかにデジタル庁で生かしていきたいかということをアピールできるようにしました。
そして、民間企業や他省庁、地方自治体ではなく、なぜデジタル庁を志望したのかをしっかり説明できるように準備したことを覚えています。
本吉さんもおっしゃったように、デジタル庁はできたばかりの組織ですので、やりたいことが明確な人、自分は何をすべきかということを自分の力で考えられる人、つまり自走できるような人が向いているのではないかと感じています。
さいごに
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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