「デジタル庁の仕事」副大臣・小林史明が語る③
デジタル庁を牽引するリーダーたちに聞く、インタビューシリーズ第二弾。
4回に渡り、副大臣の小林史明がデジタルによる改革、デジタル臨調、デジタル社会のリーダーシップなどについてを語ります。本記事は第三回目です。
デジタル化すると何がいいのか
「テクノロジーの社会実装で、多様でフェアな社会を作る」を政治信条にしている小林副大臣がDXについて普段考えていることや、よりよい社会・未来像を提言する際に意識していることは何でしょうか。
小林:
まだまだ「デジタル化を進めること=スマートフォンやパソコンを使って何かすることという前提で議論されていることには問題意識を持っています。
デジタルツールを使いこなしていないと時代遅れだとか、恩恵を享受していないとか定義しない方がいい。電話や書類で注文したものが宅配便で届くのも実はデジタル化の賜物です。コンビニのATMやデジタル複合機で手続きできることもかなり多くなっているので、スマホがなくては始まらないというのもちょっと違う。
「道路があって良かった」というのと同様、「デジタルがあって良かった、だから宅配便や年賀状が届いている」ということなんですが、普段それを意識することはなかなかない。テクノロジーが進化し、デジタルが特別なものではなく電気や水道と同じく社会基盤となりつつあるということです。
そもそもデジタル庁も、コロナ禍の10万円給付が自治体で混乱したことをきっかけに、国だけでなく、全国の自治体含めて、行政システムは重要な社会インフラの一つという定義のもと発足しました。
選択肢も多様化していますし、変革のチャンスである、とも言えますよね?
小林:
デジタルツールは手段として変革には非常に便利・有用ですから、使わない手はありません。ほぼ無料で利用できるシステムやソフトが多々あるなど、導入コストも低いです。
しかし大事なのはXの方です。私はDXの “トランスフォーメーション”って言葉がすごく好きなんです。今の状態から“変革”しなきゃいけないっていうことを明確に言っているわけですから。個人・地域・企業すべてのレベルで、進化することは大切です。
その際に目を向けて欲しいのが、ルールの見直しです。
私たちが感じている、漠然とした息苦しさ、社会が進まないことへのイラつきは、旧来のルールや慣習に縛られていることがベースにあるように思っています。テクノロジーが進展した私たちの社会と、古くからのルールが合っていないのです。DXの機運に乗って、なんとなく嫌だな不便だなと感じていたそんな慣習を、自分たち自身で見直すチャンスです。
中でも、最も変革しなければいけないポイントは、手法が限定されている規定や慣習がまだまだ多いところ。例えばハンコ押さなきゃいけないとか、手続きに役所に出向かなくてはいけないとか、慣習とはよく言ったもので、私たちも慣れちゃってますよね。
デジタルを活用してみんなで昭和・平成から連綿と続くおかしな実情を見直そう、という機運がようやく盛り上がってきました。日本の未来はとても明るい。アナログと言うか、古いルールに縛られた状態でも現状かなり豊かなので、日本には“伸びしろ”しかありません。意思あるところに道は拓ける。もう豊かで自由になるしかない道です。
国民との直接の接点は基本的に各省庁と自治体
デジタル庁の、メインの使命=ミッションとは何でしょうか?
小林:
2021年秋のデジタル庁発足時は「デジタル庁は国民生活をデジタル化します」「皆さんに直接デジタルサービスを届けます」といった、ガバメント(政府)toコンシューマー(消費者)、つまりG to Cのビジネスモデルを前面に掲げていたような印象があります。
しかし、国民との直接の接点は基本的に各省庁やその先にある自治体です。デジタル庁は現段階では、その各省庁や自治体に必要なシステムを提供することが主な業務です。言い方を変えると、G to GとかG to B to C の事業です。
例えば、バラバラに調達されている地方自治体の情報システムを、デジタル庁が主導し、共通化・標準化する。省庁や都道府県市町村が国民に良いサービスを提供できるようにインフラを整える、というのがデジタル庁の当面のミッションです。
私が関わったワクチン接種記録システムも、自治体や医療機関を対象に提供した仕組みです。もちろん、マイナポータルや接種証明アプリのように、国民に直接サービスを提供するGtoC型のシステムや、GbizIDのような企業のシステムと連携したGtoBやGtoBtoC型のシステムも提供します。
ただ、その前提として、まずは各省庁や自治体の行政システムを整備しなければ、国民に良いサービスを提供することはできないので、当面はGtoG型がデジタル庁の業務の多くを占めることになります。
DX推進にあたり取り残される人をなるべく出さない、初心者をないがしろにしないようにしなくては、という意識が当時のデジタル庁の中にもあったのでは?
小林:
行政のデジタル化が進むことで、恩恵を受けるのは国民ですが、デジタル庁が働きかける対象の多くは各省庁や自治体であって、直接デジタル庁から国民一人一人へということばかりではないんです。
政府の役割は社会インフラを整え、国民や産業が安全かつ自由に活動できる環境を作ることです。デジタル庁はそのインフラ整備を担います。旧来のインフラがずっと使い続けられてきたので、それじゃあさすがにいい運営・活動ができないから社会基盤を丸ごと作り直そう、ということ。インフラの上で活動する個人や企業の自発性や自由度を尊重しつつバックアップするんです。
第四回目に続く
デジタル庁では通年採用実施中です。デジタル庁のミッション・ビジョン・バリューに共感いただける方からのご応募をお待ちしています。