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優しいサービスのつくり手を目指して。Visit Japan Webサービスが各省庁と連携しながら進めてきたこと

デジタル庁では、入国手続きをウェブで行える「Visit Japan Web」を運用しています。

Visit Japan Webは入国時に必要となる「入国審査」「税関申告」をワンストップで行える入国手続オンラインサービスです(※令和5年4月29日以降に入国される方については、有効なワクチン接種証明書又は出国前検査証明書の提示が不要となり、Visit Japan Webによる検疫手続きも不要になりました)。

Visit Japan Webで、申請・申告情報を登録すると、QRコードが表示され、入国時にはそのQRコード等を提示することで情報の提出が完了します。

Visit Japan Webは帰国する日本人をはじめとして、訪日外国人からの利用も多いサービスです。1日の利用者数が9万人を超える時もあり、延べ利用人数は1000万人以上(2023年4月20日時点)と多くの方に利用いただいています。

「Visit Japan Webは誰にでも使いやすいサービスを目指しました。各省庁にも協力いただいて、入国手続きをワンストップ化できました」と語るのは、Visit Japan Webプロジェクトチーム プロジェクトマネージャーの梅原 暢紘、広報担当の楫野 哲彰、デザイン担当の小和田 成美です。

今回の記事では、開発の取組や各省庁との連携、Visit Japan Webの将来像などをプロジェクトチームの3人に聞きました。


誰にでも使いやすいを目指して。Visit Japan Webの取組

日本へ入国する多くの方々に利用いただいているVisit Japan Web。開発チームは、開発当初から、誰にでも使いやすいサービスにしたいという想いがありました。入国手続きは入国する方であれば、誰もが行う必要があるためです。

梅原:
Visit Japan Webは日本人だけではなく、訪日外国人にも向けたサービスですから、入国者数の多い国で使われている言語に対応しています。Visit Japan Webはウェブサイト上で動いているシステムなので、外部の自動翻訳サービスを適用できます。

自動翻訳は行政が提供するものでもなく、完璧な翻訳にはならないかもしれませんが、民間の便利なものを活用していただくことで世界中の誰でも申請・申告に求められている内容を理解しやすくなったことは、紙媒体の配布と一線を画した進歩だと思います。

また、デジタル化することで、例えば目の不自由な方が入国手続きをする際、今までは航空会社の職員がアテンドして補助したり、随行している人に代筆してもらって手続きをされていたものが、Visit Japan Webによって、一定程度はご自身で手続きができるようになったと聞いています。誰にでも使いやすいサービスとして、利用機会が広がっていると思います。

Visit Japan Webチーム プロジェクトマネージャーの梅原がインタビューを受けている写真
Visit Japan Web プロジェクトマネージャーの梅原

楫野:
紙で行う入国手続きは時間がかかるため、人が滞留してしまうのが一般的でしたが、Visit Japan Webが実装された後に空港で視察したところ、人の流れがスムーズになっていました。人の滞留が減ったという点でも画期的なサービスだと思っています。

Visit Japan Webチーム 広報の楫野がインタビューを受けている写真
Visit Japan Web 広報の楫野

小和田:
Visit Japan Webのデザイン・構成(UI・UX)を考える際には、プロダクトチームが実装したいと考えている機能がユーザーにとって本当に使いやすいか、必要なのかを意識して調整しました。

Visit Japan Webのよさは、日本に入国する前から準備できることです。離れた場所ですきま時間に情報を入力しておけば、ワンストップで入国手続きができます。この手軽さはユーザーにとっては使いやすいと思います。

私自身も海外旅行から帰ってきたときに Visit Japan Webを使いました。紙で入国手続きしていたときと比べると、工程がわかりやすくなっていると感じました。

Visit Japan Webチーム デザイナーの小和田がインタビューを受けている写真
Visit Japan Web デザイナーの小和田

改善を重ねて、より良いサービスへ近づける

複数の行政手続きを可能な限り、ワンストップでできるようにと開発されたVisit Japan Webですが、利用者から問い合わせや意見をいただくこともあります。

また、入国手続きに関係する省庁から意見が寄せられることもありました。プロジェクトマネージャーの梅原は自ら利用者からの問い合わせ対応を行い、Visit Japan Webの改善に役立てたと言います。

梅原:
昨年の11月に検疫のファストトラック機能をリリースしてからは、メールの問い合わせ対応を確認しつつ、1日20件程度、デジタル庁の代表電話にお電話いただいた利用者と直接やり取りしていました。バグへのご指摘はもちろん、使いやすさへのご意見も取り入れて、サービスを修正しています。

ご意見を受ける中では、「パスワードが難しい」「手続きが複雑だ」と言われることもありました。私自身、サービスの修正について、使いやすさと政府の仕組みの間で葛藤することもありました。

現在は、政府の情報システムのルールや既存の行政の仕組みに則ったうえではありますが、ユーザーの手間を可能な限り省けるサービスに改善し続けています。

財務省や入国審査の窓口職員が手続き対応をする中で、利用者がよく間違えるパターンから修正を行っているケースもあります。制御を追加するだけでなく、より平易な質問文で補足したり、ご意見を踏まえて翻訳の表記を変更することもありました。

Visit Japan Webのデザイン面においても、改善を繰り返しています。行政のシステムではアイコン作成やデザインは外部事業者に委託して作成してもらうことが一般的だったと思います。

Visit Japan Webでは一時期、デザインの素人である私の作成したアイコンが掲載されていた時期もありましたが、現在はデジタル庁内のデザイナーがイラストの作成や、レイアウトを改善する等、デザインを内製化する取組みが始まっています。

小和田:
2023年3月末にVisit Japan Webのサイトは、デジタル庁で定めている「デザインシステム」というデザインのルールを適用し、フォントサイズやレイアウトを調整するとともに、より利用者にわかりやすくなるよう、情報の配置や文言の表現を修正しています。

また、ランディングページはサービスのUIに連動するようにデザインしています。

デザインシステム適用前のサイトの画像
デザインシステム適用前のサイト
デザインシステム適用後のサイトの画像
デザインシステム適用後のサイト

ウェブやアプリだけではなく、掲示物など目に見えるものすべてのデザインも行っています。Visit Japan Webの導入後も航空機の発着が集中する一部時間帯等には旅客の滞留が報告されることがありましたが、滞留の発生は、各空港の施設、機器の設置状況、動線により異なることがわかりました。

人の流れを円滑化するために、手続きに使う端末の増設を行っていただくと同時に、デザイナーとして利用案内掲示物を見直しました。

人の導線を作ることを念頭に掲示物をデザインし、現在は複数の空港で掲示いただいています。

デザイナーの小和田がデザインした掲示物の画像
デザイナーの小和田がデザインした掲示物

各省庁の協力と連携があってこそ

Visit Japan Webの裏側には、使いやすさを追求したプロジェクトチームの働きもありましたが、Visit Japan Webを使用した行政サービスが実現できているのは、各省庁の協力があったからこそだと言います。

入国手続きに関係する厚生労働省、出入国在留管理庁、財務省や他の各省庁に協力と連携をいただいたことで、プロジェクトをスムーズに進行できたと言います。

楫野:
厚生労働省には、検疫関連で全ての空港のオペレーションを管理されている忙しい中でご協力いただきました。厚生労働省はVisit Japan Webの開始前から、独自アプリを使った検疫手続きの広報活動に尽力されていました。

そのアプリの利用率は60%程度だったと聞いています。それだけの利用率を獲得していたからこそ、Visit Japan Webも多くの方に使われるサービスとなりました。

出入国在留管理庁や財務省には、Visit Japan Webの利用増加によって機器調達やオペレーションの変更などが生じる中でも、広報動画作成やランディングページ作成にあたって現場職員の声の収集に動いてくださって、視察や当日の撮影にもご協力いただきました。

直接関わる行政機関以外にもご協力いただいています。たとえば、外務省には主要な在外公館のホームページにVisit Japan Webのリンクを貼っていただきました。アクセス解析の結果、Visit Japan Webのランディングページには在外公館ホームページのリンクからのアクセスがとても多くなっています。

国土交通省は、Visit Japan Webのデジタルサイネージの空港掲示にご協力いただくため、空港会社に働きかけていただいたり、国内外の航空会社に広報素材の配布や機内アナウンス実施を働きかけていただいたりしています。

観光庁は訪日外国人へのサービス周知に協力いただき、日本政府観光局(JNTO)のウェブサイトでVisit Japan Webの案内をしていただきました。また、文部科学省には、大学に向けた情報発信に加え、科学技術、文化、スポーツの分野も含めた文部科学省の所管法人等に対する情報提供も行っていただきました。

こういった関係機関のご協力と連携によって、サービス開発や広報活動がスムーズかつ効果的に行えました。みなさまのご協力に大変感謝しています。

Visit Japan Webが目指している姿

Visit Japan Webは誰でも使いやすいサービスを目指したことで、目の不自由な方や訪日外国人にもわかりやすいサービスに近づいています。

しかし、まだ改善が必要な部分もあります。最後に、将来Visit Japan Webをどのようなサービスにしていきたいかを聞きました。

梅原:
現時点のVisit Japan Webを端的に言うと、「行政機関の紙の書類をQRコードに変えるサービス」です。QRコード発行に至るまでのプロセスを工夫して、情報入力の省力化に取組みました。

ですが、Visit Japan Webを使っても、「検疫」「入国審査」「税関申告」で3回の確認画面が出てくるようになっています。
(※令和5年4月29日以降に入国される方については、有効なワクチン接種証明書又は出国前検査証明書の提示が不要となり、Visit Japan Webによる検疫手続きも不要になりました)

これは各省庁で取り扱っているデータのフィールド属性等が異なっていて、それぞれの手続き用にデータを出力するために設計した結果です。

現在、多くの入国者にVisit Japan Webを利用いただいていますので、入国手続き自体を、デジタルを前提にしたものへシフトできるかもしれないと考えています。そうすると、空港でQRコードを提示するという行為自体が不要になるかもしれません。

入国者は基本的にパスポートを持っていますから、オンラインで事前に申請・申告している方は、各省庁にパスポートを提示する。パスポートが提示されると、申請・申告情報が行政側で見られるという仕組みも考えられます。

将来的にデジタルを使って、利用者にも行政側にも利便性の高いサービスにまだまだ進化していける可能性があると思っています。


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