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データの利活用で、人に優しいデジタル社会へ。現役職員が語るデジタル庁のミッション

デジタル庁では、国家公務員を目指す学生などを対象に、業務説明会や座談会などのイベントを随時実施しています。2023年12月には「公務研究セミナーin霞が関」をデジタル庁で開催しました。

セミナーでは、現役職員が現在携わっている業務やデジタル庁の魅力・特徴をお話しました。デジタル庁公式noteでは当日の模様を再構成してご紹介します。

◆これまでの公務研究セミナーの記事はこちら。

必要なサービスを、必要な方へ。デジタル技術で“最適化”

省庁業務サービスグループの井下がセミナーに登壇しているときの写真
省庁業務サービスグループの井下

省庁業務サービスグループ総括担当の井下です。2012年に総務省に入庁し、IT関連の業務を担当していました。たとえば、国際団体で標準化・活用されているWeb言語「CSS」に日本の要件を入れるようにする活動などに携わっていました。

2016年からは内閣官房IT総合戦略室に出向し、政府のデジタル化を進めていく仕事に関わるようになりました。その後、イギリスへの留学を経て、2021年7月からデジタル庁の設立準備に携わり、現在に至ります。

入庁1年目には「国会担当」を担当しました。たとえば、国会議員が国会で大臣やデジタル庁に質問をする場合、事前に質問通告が寄せられます。こうした質問の内容や答弁内容のとりまとめを担うのが、国会チームの主な役割です。

現在の業務について

現在は省庁業務サービスグループに所属し、「ガバメントクラウド」や「GSS(ガバメントソリューションサービス)」の総括担当として、グループ内の業務調整・他府省庁との連携に携わっています。

ガバメントクラウドとは、政府共通のクラウドサービスの利用環境です。行政機関や地方自治体の情報システムが利用できるクラウド基盤を提供しています。

GSSは政府共通の標準的な業務環境で、政府機関の職員が安全・安心で効率的、かつ柔軟に働けるようにするシステムです。これまで各府省庁でバラバラに整備・運用されていたLANやPC等の業務環境を、最新のセキュリティ技術を採用した上で統一運用し、行政事務を効率的にすることを目指しています。

デジタル庁では、国民や事業者にデジタルサービスを提供するだけではなく、他の府省庁のDXも支援しています。私も厚労省や総務省のシステム開発に関わるプロジェクトで他省庁や庁内の調整を担当しています。

国家公務員を志した理由

もしかしたら、「行政は自分と関係ない」という印象をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。でも、行政は実は私たち一人ひとりの暮らしと密接に関わっているんです。どんなことをすれば、よりよい社会をつくれるのか。それを自分たちで考えることが大切ではないか。そして行政の立場なら、できることがあるのではないかと思っています。

2009年1月、アメリカではオバマ大統領の就任後、国民に開かれた政府(オープンガバメント)の動きが生まれます。個人のプライバシーや機密情報、安全保障に関わる情報の保護に配慮しつつ、政府が持つデータを国民に広く再利用してもらえるようにデータを公開することなどが義務付けられました。

当時の私も、こうした取り組みに興味を持ちました。電子政府や行政改革に取り組む観点から、オープンガバメントに向けて国家公務員であればできることがあると考えて、行政に関する通則的制度や情報通信を所管する総務省に入りました。

日本でも「官民データ活用推進基本法」によって、国や地方公共団体はオープンデータに取り組むことが義務付けられました。デジタル庁でも「e-Govデータポータル」を提供し、オープンデータの取り組みを進めています。こうしたデータを皆さんに広く利用していただけることで、よりよい社会を考える材料として用いていただければ幸いです。

国家公務員としての経験を積む中で、デジタル技術を自分の軸の一つにしたいという思いも生まれました。そのことはデジタル庁に入るきっかけにもなりました。何を軸に置いてキャリアを積んでいくか、きっと皆さんも働いていく中で少しずつ見えてくると思います。

デジタル庁の魅力・特色について

多様なバックグラウンドを持つ職員が在籍しており、デジタル社会の実現という共通目標に向かって協力しあっていることがデジタル庁ならではの特徴ですし、魅力の一つだと思います。

民間企業出身でネットワーク技術の第一人者、裁判官や警察職員、環境省で国立公園などの管理をするレンジャー、気象庁出身の気象予報士などなど。加えて新卒で入庁した若手職員もおり、いつも刺激を受けています

「デジタル庁に入るには、デジタル技術に詳しい必要があるか」とよく聞かれますが、必ずしもその必要はありません。他の府省庁との連携が求められる業務もあるので、まずはデジタル庁がDXを進める対象となる業務やサービスを理解することが大切だと思います。

“デジタル一本槍”ではなく、行政のさまざまな業務や分野に関心を持っていたほうが、より学びは多いと思います。デジタル技術は入庁後に働きながら身に着けることができます。

デジタル庁は行政機関でありながら、国民の皆さんと直接関わりを持つ特殊な組織です。国民の皆さんや事業者に、様々なデジタルサービスを直接提供しています。いわば、国民の皆さんと行政をつなぐ“接点”です。

その分、寄せられるフィードバックもダイレクトに届きます。サービスのリリース後は寄せられる反響やサービスの効果を分析し、ユーザー体験を検証し、改善を続けています。寄せられたフィードバックも丁寧に分析し、よりよいサービスづくりに生かしています。検証と分析、さらに改善を繰り返すこともデジタル庁の文化の特徴だと思います。

誤解されやすいのですが、「DX」や「デジタル化」は、単にシステムをつくることではありません。デジタル技術を業務に導入すること、それ自体を目的とするものでもありません。デジタル技術を使うことで、必要なサービスを、必要な方に適切に届けること。つまり、デジタルによるサービスの“最適化”を目指すことです。

たとえば、子育て支援や何らかの給付金をすばやく必要な人に届けるためにデジタル技術が有効であれば、どうすればアナログな業務をデジタル技術で代替できるかを考えます。

一方で、行政サービスの中には、窓口に来ていただいた利用者の方とコミュニケーションをとったり、生活状況などをヒアリングで確認したりする業務があります。デジタル化をするといって、こうしたコミュニケーションを直接必要とする人を取り残すようなシステムにしてはいけません。

必要なサービスを、必要としている人に届けること。デジタル庁のミッションである「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を」という言葉には、こうした意味が込められていると思っています。

デジタル技術とデータを活かし、より良い社会を目指す

ファクト&データユニットの堀井がセミナーに登壇しているときの写真
ファクト&データユニットの堀井

ファクト&データユニット所属の堀井です。1998年に工学で修士課程を修了後、オフィス機器メーカーに入社しました。その後、民間のポイントカード運営会社やコンサルティング会社を経て、2023年7月に入庁しました。

学生時代はロボット工学を専攻していました。複数台の単純なロボットが協調してタスクを処理する過程での、イノベーションの創発過程をシミュレーションで研究していました。

これまでの経歴、現在の業務について

もともと組織論における「チームの生態系」に興味があり、修士課程の後に入社したオフィス機器メーカーでは、コピー機などの情報機器によって「情報を伝播する」ことでどのように生産性を上げられるのか、どのようにコミュニケーションを円滑化できるのかといったことを研究していました。

また、データとオンデマンド印刷を活用した「One to Oneマーケティング」のサービス事業の開発にも携わっていました。その後、民間のポイントカード運営会社ではマーケティング業務に従事する傍ら、数千万人規模の消費POSデータを活かし日次で見ることのできる日次物価指数を大学と共同公表するなど、データを活用した多様な用途の開発に取り組んできました。データとそれを活かす能力は、いろいろな方との接点の形成や、ディスカッションの円滑化の上で、大きな“武器”になり得ることを実感していました。

マーケティングでは、サービスや商材の情報を一方的に発信するだけではなく、それが相手にどう受け止められているか、「対話」を通じて把握することがとても大切です。デジタル庁では各省庁との連携や調整が必要な業務が多いのですが、民間企業で培った「対話」の考え方や経験はステークホルダーとの調整に役立っていると感じています。

入庁前に勤めていたコンサルティング会社では、企業間のデータ連携を進める制度づくりや、データ流通を支援する仕事をしていました。データの持つ力や可能性を常々感じていましたし、行政機関や企業が持っているデータは、よりよい社会づくりに活かせるものが多いため、こうしたデータ利活用を促進する流通の基盤が世の中的にも必要だと感じていました。

現在はデジタル庁が関わる政策の進捗状況を、国民の皆さまに向けて見える化する「政策データダッシュボード」に携わっています。他にも、関係する省庁や機関からもデータを収集し、庁内の政策の推進者向けにダッシュボードとして見える化し、政策の高度化や推進の高速化、業務の効率化に、データを利活用する取組みを推進しています。

デジタル庁を目指した理由

今まで「産」と「学」の領域でデータ流通や利活用を経験してきましたので、「官」の領域でデータ利活用の制度や仕組み作りに携われないかと考えていました。

先ほどお話したように、世の中にあるデータには、安全・安心を前提とした「人に優しいデジタル化」を実現し、社会をよりよくするためのヒントがたくさん詰まっていると考えています。

ただ、産や学の立場では、官の領域に対しどうしても第三者的な立場になってしまいがちです。これまでのデータ流通や利活用の経験を、当事者意識をもちながら社会制度の設計や仕組みづくりに活かしたい、そう思い、デジタル庁に入りました。

「人生100年時代」と言われますが、私も年齢的にもう残り後半に差しかかってきています。次の世代のため、よりよい社会を残していく仕事に少しでも貢献できればと思っています。

デジタル庁の魅力・特色について

デジタル庁の取り組みが発端となって、他の省庁や機関にもポジティブな影響を与えられることは大きな魅力です。このことは民間企業と行政機関の両方で働いたからこそ感じます。

デジタル技術やデータは、皆さんの世代が持ち得る大きな“武器”だと思います。こうした武器を、これからの社会づくり生かせるという仕事はデジタル庁ならではのやりがいだと思います。

一方で、「どんな世の中をつくりたいのか」という志は、産官学いずれに進むにせよ、自らご自身でしっかりと磨いていく必要があります。志を大切に現代の武器をうまく活用して、より良い社会づくりを担っていっていただければ良いなと思います。


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◆デジタル庁の新卒採用(国家公務員採用試験)、中途採用、経験者採用等に関する情報はこちら。

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◆デジタル庁の職員/チームを紹介する記事はこちら。


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