「誰一人取り残されない」を高い水準で叶えるために。ウェブサイトのアクセシビリティ検証結果と、その後
デジタル庁のアクセシビリティチームです。
私たちは、アクセシビリティ向上のための仕組み作りを行う民間人材の専門チームとなっています。3名で構成されており、そのうち2名は視覚に障害のある当事者です。
前回は、私たちがこれまで行った4つの取組を紹介しました。今回は、デジタル庁ウェブサイトで行ったアクセシビリティ検証結果と、そこから見えてきた課題、解決に向けた方向性などをお伝えできればと思います。
今回は少しだけ技術的な内容や規格の詳細に触れますが、できるだけわかりやすくお伝えしていきます。ぜひご覧になってもらえると嬉しいです。
ウェブアクセシビリティに関する方針策定と公開
2021年7月から活動を始めた、アクセシビリティチーム。デジタル庁のウェブサイトでは、アクセシビリティ方針の策定・公開をはじめ、リニューアル時の改善に向けたアドバイス、規格に基づいた試験などを行ってきました。
私たちがまず取り組んだのは、方針の策定とその公開。この方針は、アクセシビリティへの取り組みをどこまでやるか、いつまでに達成するかなどを定めたものです。ウェブサイトにおいては、以下のような方針を立てました。
対象範囲:デジタル庁ウェブサイト全体
※デジタル庁の方針における特徴に、「ウェブページ(HTML)だけでなく動画やPDFも対象にしていること」が挙げられる
目標とする適合レベル:JIS X 8341-3:2016 のレベル AA に準拠
期限:2022年8月31日
※現在は試験で生まれた課題を踏まえ、多少方針を更新している。
規格に基づく試験を実施し、結果を公開
続いて、上記の方針に基づき、デジタル庁ウェブサイトのアクセシビリティを向上するため、さまざまな改善を進めました(改善の詳細は、前回の連載をぜひご覧ください)。また、 私たちの取組の拠り所である日本産業規格「JIS X 8341-3:2016」に基づく試験も実施し、その結果を公開しています。
試験で行った作業の一例
axe-coreやnuHTMLチェッカーなどのツールによるアクセシビリティの確認(試験項目全体の2割程度)
スクリーンリーダーを用いた音声読み上げの確認(視覚障害のある職員がデジタル庁ウェブサイトを利用して確認)
スクリーンリーダーとキーボード、およびキーボードのみでウェブサイトを操作できるかの確認など
試験の結果、8月時点でのデジタル庁ウェブサイトは、JIS X 8341-3:2016 のレベルAに一部準拠(*)していることが分かりました。試験の概要や結果の詳細については「ウェブアクセシビリティ検証結果」をご参照ください。
(*)「一部準拠」は対応度表記ガイドラインで定められた用語です。今回の検証の結果、A25個とAA13個と合計38個ある達成基準のうち、デジタル庁ウェブサイトでは8割以上となる34個を満たしています。満たしていない達成基準も、主として特定のページの問題であったり限定された問題でした。
「PDF」「ご意見・ご要望」ページにおける課題
試験などによって明らかになった課題のうち、代表的なものとして「PDF」と「ご意見・ご要望」のページが挙げられます。デジタル庁ウェブサイトで公開しているPDFには現在、以下のような課題があります。
画像の代替となるテキストが適切に付与されていないものがある。
見出しが適切に設定されておらず、スクリーンリーダーをお使いの方が文書を理解することが難しい可能性がある。多くのスクリーンリーダーが有している「見出しジャンプ」機能を適切に利用できない可能性がある。
表の内容をスクリーンリーダーユーザーに伝えられていないものがある。
単語の間にスペースや改行が含まれているものがある。
PDFにおける課題を解決するため、前回の記事でも紹介したように原稿のひな形作成や注意点に関してまとめた資料作りを進めています。また、庁内で作成されるPDFだけでなく、他省庁や外部有識者の方々からご提供いただいたものについても、アクセシビリティ改善に向けた検討を行っています。
デジタル庁に意見や要望を送ることができる「ご意見・ご要望」ページにも以下の課題があり、解決に向けて庁内外で調整を進めている状況です。
入力必須の「お名前」や「お問い合わせ内容」が未入力だったり、「お問い合わせ種別」が未選択の場合にエラーメッセージが表示されるが、どこがエラーなのかをスクリーンリーダーユーザーに伝えられていない。
入力内容を送信前に確認したり修正したりできない。なお、この課題は厳密にはJISの規定を超えるものだが、より多くの方に安心してご意見・ご要望をお寄せいただきたいという意図により改善が必要としている。
アクセシビリティの取組を「当たり前」に
今回、全3回にわたってアクセシビリティチームの取り組みを紹介してきました。最後に、今後の展望についてお話ししていきます。
私たちは、アクセシビリティを「当たり前の日常活動」にしたいと考えています。これは特別な注意を払わない限り進んでいかないものではなく、自然に進んでいく状態であり、例えば以下のような状態を目標にしています。
どのプロジェクトにおいても、アクセシビリティへの取り組みが検討され実施される。アクセシビリティの取り組みを行うかどうかの検討はしない
障害のある人が自然に参加し、意思決定に携わっている
単発ではなく、継続的なアクセシビリティ改善の取り組みが行われている
前回の記事でお話しした庁内外への横展開も、アクセシビリティを当たり前にするための手段の一つと考えています。この他にも、「サービス開発の初期段階からアクセシビリティに取り組めるようにする」「アクセシビリティを考慮した調達を実施する」などが有効な手段として挙げられるでしょう。
デジタル庁のミッションは、「誰一人取り残されない、人にやさしいデジタル化を。」です。
このミッションを高い水準で継続的に叶えられるよう、これからも歩みを進めていきます。一緒に働く仲間も募集しているので、興味のある方は下記の採用サイトからご応募いただければと思います。
◆デジタル庁の中途採用に関する情報は以下のリンクをご覧ください。
◆これまでの「デジタル庁の職員/チーム紹介」記事は以下のリンクをご覧ください。