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アクセシビリティを万人のものとするために。専門チームが行った4つの取組

デジタル庁

デジタル庁のアクセシビリティチームです。私たちは、アクセシビリティ向上のための仕組み作りを行う民間人材の専門チームとなっています。3名で構成されており、そのうち2名は視覚に障害のある当事者です。

前回はアクセシビリティの考え方や私たちの業務をご紹介しました。今回は、これまで私たちが取り組んできたことを紹介できればと思います。

技術的な内容や規格などの詳細は割愛して、できるだけわかりやすくお伝えしますので、リラックスしてお読みいただけたら嬉しいです。

1.PDFの内容を正確に理解できるようにするため

私たちが取り組んだ事例の一つに「PDF」があります。政府機関のウェブサイトでは、PDFファイルによる情報発信が多く行われています。デジタル庁でも会議の次第や議事録、各種資料などをPDFファイルで提供しています。

前回の記事で紹介したように、視覚障害のある人はパソコンの画面上に表示された文字などを合成音声で読み上げる「スクリーンリーダー」を使って、ウェブサイトを利用しています。これと同様に、PDFファイルもスクリーンリーダーで内容を理解するのが一般的です。

このとき、PDFの内容を正確に理解したり、必要な情報にスムーズにたどり着いたりできるようにするため、私たちはすでに公開しているPDFの中から優先して取り組むべきものを選んで以下のような改善を行いました。

  • 適切な見出しをつける

  • リストであることが伝わるようにする

  • 単語の間のスペースや改行を取り除く

これ以外にも、次のような点を考慮することが大切だと考えています。

  • 文字の色と背景となる色のコントラストを十分とる

  • 写真やイラストなどに、その代替となるテキストをつける

  • スクリーンリーダーでの読み上げ順序に注意する

気をつけるべきポイントを庁内に根付かせるためには、アクセシブルなPDFを作るためのひな形を整備したり、誰もがアクセシブルなPDFを作成できるようサポートしたりすることが大切です。少しずつでもアクセシブルなPDFが増えるように改善を進めていきます。

また、PDFそのもののアクセシビリティを高める取組と並行して、PDFだけでなくウェブページで同じ情報を発信することも併せて行っています。

2.得られる情報に差が出ないようにするため

8月下旬、ウェブサイトの各ページ先頭に「本文へ移動」というリンクを設置しました。といっても、目には見えない形で設置されたもの。スクリーンリーダーをお使いの方で、気づいた方はいらっしゃるでしょうか。このリンク設置も、アクセシビリティ改善の取組です。

デジタル庁トップページとそのHTMLのスクリーンショット。HTML「本文へ移動」の箇所にアンダーラインが引かれている。
「本文へ移動」リンクのソース

目視であれば、ページをスクロールしながら斜め読みして、欲しい情報を見つけることができます。ですが、スクリーンリーダーを使って読む場合にはそのようにはいきません。スクリーンリーダーを使ってウェブサイトを利用するとき、ユーザーはほとんどの操作をキーボードで行います。ページの先頭からリンクや文章の一つひとつをたどり、内容を聞いて確認をする必要があるのです。これには多くの時間がかかってしまいます。

こうした課題を解決するため、多くのスクリーンリーダーには、さまざまなジャンプ機能があります。見出しの部分だけをジャンプする「見出しジャンプ」のほか、リストだけをジャンプしたり、表だけをジャンプしたり、ボタンだけをジャンプしたりすることができます。

しかし、このようなジャンプ機能を視覚障害のあるすべての人が十分に使いこなせるわけではありません。そこで私たちは、以下のように考えました。

  • 私たちのミッションは「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を」である

  • ITリテラシーの差で得られる情報に差が出てしまうことは望ましくない

  • スクリーンリーダーのジャンプ機能を知らない・使ったことがない人も、欲しい情報にスムーズにたどり着けるようにしたい

このように考えた結果、各ページの先頭から直接、ページの大見出しにジャンプするリンクを設置しました。それが「本文へ移動」のリンクです。

このリンクは現在、目に見えない形で設置されていますが、スクリーンリーダーを使用するユーザーの中には、ある程度視力のある「弱視(ロービジョン)」の人もいます。そのため、このリンクを必要としている人が、確実に使うことができるよう改善を続けていきます。

3.誰もが意見や要望を送れるようにするため

デジタル庁のさまざまな活動に意見や要望を送れる「ご意見・ご要望」ページも、アクセシビリティの確保を進めています。誰もが意見を送れるよう、これまで以下のような改善を行ってきました。

  • どこに何を入力すればよいかを、スクリーンリーダーを活用するユーザーにも伝わるようにする

  • スクリーンリーダーでの読み上げ順序の改善

しかし、現時点では「入力内容を送信前に確認することができない」「未入力の項目が複数あったとき、スクリーンリーダーを使用するユーザーにそれがどこかを伝えられない」といった課題があります。これらの課題についても、早期に解決するべく検討に着手しています。

「ご意見・ご要望」ページのスクリーンショット。
デジタル庁 ウェブサイトにおける「ご意見・ご要望」ページ

4.目指すは、行政全体のアクセシビリティ改善

今回ご紹介してきたウェブサイトにおける事例にとどまらず、「マイナポータル」や「ワクチン接種証明書アプリ」など、デジタル庁が所管するサービスにおいてもアクセシビリティ改善に向けた取組を進めています。これらは特別なことではなく、業務の中で日々行うものです。

そのため、デジタル庁の日々の業務において今後大切にしたいことは、アクセシビリティやデザインの専門家以外の多くのメンバーが自然にアクセシブルな情報発信やサービス開発に取り組めるようにすることです。

また、アクセシビリティにおいて、私たちが常に意識していることがあります。それは、「庁内だけでなく、他省庁にも横展開をすること」です。

そのため現在、「アクセシビリティ導入ガイドブック」を作成中です。現在、あわせて、このガイドブックを一般の方もご利用いただけるよう公開する準備を進めています。また、庁内向けの勉強会を開催するだけでなく、他省庁とも情報共有や連携を行い、政府全体として高いレベルで一貫したアクセシビリティを確保できるよう活動しています。

「アクセシビリティ導入ガイドブック」のイメージ。「アクセシビリティは障害のある方向けの対応ではなく、万人のためのもの」という説明が行われているページ。
「アクセシビリティ導入ガイドブック」のイメージ

今回は、私たちアクセシビリティチームの取組を具体的に4つご紹介してきました(PDF、「本文へ移動」リンクの設置、ご意見・ご要望ページ、ガイドブック)。このような仕事に取り組む仲間を募集しているので、興味をお持ちいただいた方は下記の採用サイトから応募いただけると嬉しいです。

次回の連載では、8月末に公開したデジタル庁ウェブサイトのアクセシビリティ検証結果についてご紹介します。どうぞお楽しみに。

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