「ユーザーの声を聞き、改善し続けることを大切に。ワクチン接種証明書アプリ」 MVP受賞者対談(4)
デジタル庁ではミッション・ビジョン・バリューを大切にしながら、日々業務に向き合っています。そこで、より素晴らしい姿勢で業務に取り組む職員を表彰すべく、MVV Awardという施策を始めることにしました。
今回は、MVV Awardとはどのような施策なのか、「Best Service Award」を受賞したVRS(ワクチン接種記録システム)プロジェクト、ワクチン接種証明書アプリの開発に携わった国民向けサービスグループの壇耕平、眞弓隆浩、三宅翔太の取り組みをご紹介したいと思います。
MVV Awardとは?
組織文化醸成を目的に、デジタル庁のミッション・ビジョン・バリューを体現した組織と個人を表彰し、ロールモデルとして庁内に共有することで、ミッション・ビジョン・バリューのさらなる浸透を図る取り組みです。
個人賞4部門、全社MVP、プロジェクト/チーム賞の表彰項目があり、半期に一度全職員の中から選ばれます。今回は、プロジェクト/班/チーム賞において、「Best Service Award」を受賞した3人へインタビューを行いました。
約3ヶ月でリリースしたワクチン接種証明書アプリ
――最初に、皆さんがどのようなバックグラウンドをお持ちになっているのか教えてください。
壇:
私は福岡市の自治体出身で、2021年10月からデジタル庁で働いています。
福岡市では、水道料金に関するシステム構築や運用を担当し、オンラインでの利用申請やクレジットカード払いのサービス開始など、多岐にわたるサービスの立ち上げを行いました。
新型コロナの感染拡大が進んだころからは、コロナワクチンの接種予約関連サービスやシステムの開発運用に携わり、自治体の立場でVRSの運用も行いました。この仕事がきっかけでデジタル庁に異動となりました。
眞弓:
私は警察庁出身で、2020年9月から前身である内閣官房IT総合戦略室に所属し、今に至っています。
もともと警察庁では技官として採用されており、情報通信システムやサイバー犯罪対策に関わる業務を行っていました。
三宅:
私は民間企業出身で、2021年4月からデジタル庁に参画しています。民間企業では学校や教育委員会向けのシステム提案や導入を担当しており、VRSのサービス提供が始まるタイミングで加わりました。
――担当されたワクチン接種証明書アプリは緊急度が高く、スピード感も求められたプロジェクトだったと思います。リリース時のことを覚えていたりしますか?
三宅:
ワクチン接種証明書アプリは2021年9月から開発に着手し、リリースを年内にすることが決まっていたので、絶対に遅れてはいけないというプレッシャーの中で進めてきました。
その中で、無事にリリースできたときは達成感とはまた違う、何か特別な感情がチームのみんなにあったかなと思います。ご批判もありましたが、ありがたいことに「使いやすい」という声を多くいただけているのは嬉しいです。
眞弓:
私が覚えているのは、リリース当日の朝、自分のスマホで使ってみたり、家族にも試してもらったりしながら、実際に自分の証明書を発行することができて、ふと「何とか形になったな」と思った瞬間です。
当初は旧姓併記のマイナンバーカードに対応できておらず御不便をおかけしてしまい、厳しいご意見を多くいただいたことがありました。
ただ、ワクチン接種証明書アプリはアジャイル型の開発を大切にしており、ユーザーの声を聞きながら細かく改善を繰り返すことを大切にしています。
そのため、旧姓併記に対応できていないことやUI/UXまわりが必ずしもベストな形でないことも、リリース前から課題としては認識しており、徐々に改善していく方針だったので大きな戸惑いはなくて。
実際、約1か月後にはアップデートを行い、今も細かいUI/UXや機能の改善を続けています。
これまでの行政サービスは完璧な状態になってからリリースすることが多かったので、どうしても長い時間を要していたんです。
ただ、企業のサービス開発と同様、行政でもまずは最低限の機能を整備したうえで早くリリースし、ユーザーの声を聞きながらより良いものに改善していくというスタンスを、行政にも国民にももっと浸透させていけたらよいと思っています。
――ワクチン接種証明書アプリは、SNSの公式アカウントにも「お疲れ様でした」「使いやすい」といった声が、ユーザーの方から多く寄せられていたのが印象的でした。アジャイル型の改善というのは、具体的にどのような形で進めているのでしょうか。
壇:
いただいた問い合わせの内容を分析し、定例ミーティングでチームに共有しながら、改善の方向性を検討するようにしています。
もちろん証明書の発行数やアプリのダウンロード数も大事なデータなのですが、それだけだとユーザーの生の声は見えてきません。
「この端末だと読み取りづらい」「こういう条件のパスポートが読みづらい」といった、実際のエビデンス(根拠)をベースに改善を進めています。
企業では当たり前なことかもしれませんが、行政サービスとしては少ない事例なのではないかと思います。
「ユーザーに寄り添う」 あるべき姿を徹底したい
行政官だけでなく、民間人材や自治体、開発パートナーなどステークホルダーが多いプロジェクトだったと思います。工夫されたことや大切にしてきたことはありますか?
三宅:
立場にかかわらず、フラットに意見を聞き、意思決定することはすごく大切にしてきました。自治体など各ステークホルダーの意見を聞く土壌がVRSチームにはありました。
眞弓:
なぜ意見を聞く土壌があったのかというと、メンバーに「より良いものにしよう」という意識が強くあったから。
開発側の都合で「これを実現するのはちょっと難しい」と思う意見も中にはあったのですが、「だからやらない」のではなく、「どうしたら実現に近づけるか」を考えるのは、システムの初期設計や制度づくりからみんなが意識していました。
こうした姿勢が、リリース後に改善を続けていることにもつながっています。
――デジタル庁がミッションに掲げている「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を。」を体現するようなエピソードですね。
壇:
行政の開発プロジェクトだと、どうしても最初に決めたロードマップに沿って進めるのが一般的だったり、ステークホルダーの利害関係に左右されたりすることが多いです。
その点、VRSやコロナワクチン接種証明書アプリは、誰が見ても共通の敵(感染拡大)に立ち向かわなければいけない観点で、みんなが同じ方向を向けたのは大きかったと思います。
コロナ関連以外のプロジェクトだったとしても、ユーザーに寄り添うという、サービス開発のあるべき姿を徹底できるよう、今回得た知見を今後も生かしていきたいです。
――最後に、MVVの中でもバリューという観点で他に日々意識されてきたことや大切にしてきたことがあれば教えてください。
三宅さん:
振り返ってみると、日々意識的に行っていたわけではありませんが、私たちが今日お話しした内容はバリューにマッチしていると感じています。
例えば、ワクチン接種証明書アプリで実践したエビデンスをもとに改善を続けている点は、バリューにある「一人ひとりのために」「常に目的を問い」に当てはまるのではないでしょうか。
一方で、壇さんが話したように、コロナ関連のプロダクトだったからこそ、やりやすかった部分もあります。
私たち3人は他の部署にも所属していますが、どんな状況下でもユーザー一人ひとりのためにあること、常に目的を問うことを忘れないようにしたいです。
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◆これまでの「デジタル庁の職員/チーム紹介」記事は以下のリンクをご覧ください。