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政府の取組をデータで誰もが分かりやすく。マイナンバーカードの「政策データダッシュボード」公開に込めた想い

デジタル庁は12月19日、マイナンバーカードの有効申請件数の状況などが一目で分かる「政策データダッシュボード」(ベータ版)を公開しました。

このダッシュボードでは、国内人口における普及率、週次・の申請人数に加えて、健康保険証との紐付けや公金受取口座の登録を行っているマイナンバーカードの数が分かります。

「誰もが分かりやすい形で公開することで、データを見るのが『楽しい』と思ってもらえたら嬉しいです。そして、デジタル庁としては政策における進捗の透明性を確保することで、政策に関わる皆さまと対話を深めるきっかけにできたらと思っています」

作成に携わった、データ分析担当の樫田 光とデザイナーの志水 新はこう語ります。今回のプロジェクトはデジタル監をはじめ、行政官と民間の専門人材、多くのステークホルダーの協力で実現しました。これまでの歩みや今後の展望を2人に聞いていきます。

「データ公開」のスタンスづくりとして

なぜダッシュボードに取り組むのか。デジタル社会の実現に向けた重点計画でも次のように書かれており、デジタル化の状況を分かりやすく「見える化」していくことが、今後の重要な取り組みとして掲げられています。

誰一人取り残されないデジタル社会の実現に向けた上記の各取組の実効性を確保するため、デジタル化による利便性向上や利活用の実態等をできる限り可視化するとともに、EBPM(Evidence Based Policy Making)
の考え方に基づき定量的な費用対効果の測定方法等を検討し、適時適切に不断の見直しを行う。 

デジタル社会の実現に向けた重点計画

ここに書かれていることを進め、EBPMを実現するためには、データを公開していくというスタンスが大前提になった上で、関係者との調整も含め、必要なデータを分かりやすい形に加工・整備していくことが求められます。

つまり、データに対する知見、関係者との調整力、分かりやすくする力が求められるため、とても難しいプロセスになります。

そのような中、スタートアップでデータチームのトップを務めていた樫田が2022年4月に入庁したタイミングで、ダッシュボードプロジェクトが始まりました。

庁内では、まず誰でもダッシュボードをPCで閲覧できるようにした他、オフィスにあるモニターに投影して自然と目に入るようにし、幹部の打ち合わせ資料にダッシュボード確認のアジェンダを入れ込むなど、データ文化醸成に向けた活動を進めました。

樫田
デジタル庁の求人に興味を持ったころ、政府が公開する情報を見ていたのですが、正直なところ非常に分かりづらいと感じました。「民間の力も合わせて行政を変えなければ」と、使命感が増したことを覚えています。

また、調べるうちに、政府は正しいことをしようとしているけれど、この伝え方だと「絶対伝わらないだろうな」という、もどかしさも生まれていきました。

とはいえ実際に入庁してデータの「見える化」を進めてみると、政策を考える行政官の方々からは、ダッシュボードを活用して業務の進め方を改善したというお話や、前向きなフィードバックを頂いています。デジタル庁という組織には、大きなポテンシャルを感じています。

写真:オフィス エレベーター前のモニターでチームメンバーがダッシュボードを見ている様子
オフィス エレベーター前のモニターでダッシュボードを投影

政府が発表するデータは、PDFで公開されるなど、使い勝手が悪かったり、スマートフォンでは見づらかったりすることが多い現状があります。

今回のダッシュボードで見せているデータも、多くはすでに他省庁で公開されているものです。しかし、データによって所管する省庁が違うことから、情報が一元化されていない状況にありました。

マイナンバーカード普及と利活用の促進は全国民に関連する重要政策で、関心度も高い。「庁内だけでなく、一般にもダッシュボードを公開しようと考えた」と、2人は語ります。

志水
ダッシュボードは、客観的なデータに基づいた対話のきっかけになります。

庁内の職員にダッシュボードの説明をしたとき、データがグラフでわかりやすく表現されたことから、マイナンバーカード申請に関する課題について、その場でディスカッションが始まりました。

このような形で関係者と対話を進められるよう、誰でもデータにアクセスできることが重要です。

樫田
今までのデータ公開の仕方は、国民の皆様が「分かりづらい」と感じてしまうものも多かったと思います。

まずは、分かりやすい形で公開することで、「データって面白い」「もっと知りたい」と思っていただけることが大切です。そこから、政府と国民の皆様との対話が始まると、私は思っています。

政府におけるデータ公開のスタンスづくりを、デジタル庁として取り組む。その一歩が、ダッシュボードの公開だと考えています。

写真:データ分析担当の樫田光
データ分析担当の樫田光

幅広い方々に興味を持ってもらえるデザインを

今回のダッシュボードは、行政官やデータアナリスト、プロジェクトマネージャー、デザイナーなど、さまざまなメンバーの協働によってつくられました。特に重視したのが「デザイン」の観点です。

公開された情報を見る方々は、リテラシーも、データを見るスタンスも異なるため、誰にとっても見やすいものを意識しました。

デザイナーの志水は、マイノリティの方々に向けたモノづくりについて学んだことを機に、行政や公共のデザイン領域に関心を持ったといいます。

2018年当時、研究や実践の場が国内になかったことから、米国の大学で研究員として活動。デザイナーがどのように行政や公共領域の課題に対してアプローチしているかを研究しました。帰国後、研究内容を実践する機会として、デジタル庁への参画を決めます。

入庁してからは、デザイナーとして庁内のプロジェクトに携わりながら、行政の情報発信を分かりやすくするためのコミュニケーションデザインも担当。直近では、『デジタル庁設立1年の活動報告』を担当していました。

写真:デザイナーの志水新
デザイナーの志水新

ダッシュボードのプロジェクトでは、スマートフォンでも見やすくすること、どんな目的で公開したのか明示すること、データの重要度に合わせて表現することなどのコミュニケーション戦略とデザインを担当。また、ユーザーニーズに応じた「3段階のレイヤーを構成した」と志水は語ります。

志水
1つ目のレイヤーは、デジタル庁ウェブサイトのトップやSNSの投稿に掲載されているものです。タイムラインを見るだけで、毎週更新されるデータを簡単に見ることができます。

2つ目は、ウェブサイトトップのダッシュボードをクリックした後のページです。より細かいデータを閲覧可能な他、政策の意図やデータ定義なども知ることができるようになっています。

3つ目は、さらに興味のある方に向けて、インタラクティブなツールを用意。自分で操作しながら詳細なデータを見ることができます。このように3レイヤーに分けることによって、より幅広い方々に対してデータに興味を持ってもらえるような設計を心がけました。

段階のレイヤーのイメージ。なお、本データダッシュボードは、データを各省庁から取り寄せする際、個人情報に関連したものは扱っておりません。マイナンバーカードのメリットと安全性に関する説明は、デジタル庁ウェブサイト「マイナンバーカードのメリットと安全性」をご覧ください。

データ主導型の文化をデジタル庁内で広める

公開したものの、ダッシュボードは今もまだ途上の段階です。

公開後のダッシュボードへのご意見やご要望、閲覧数のデータなどを分析しつつ、今後のあるべき姿について検討を進める予定です。

樫田
データを分かりやすく可視化する方針は変わりませんが、まずはつくったダッシュボードに対して興味を持たれているか、活用いただけているかを真摯に向き合うことが重要だと思っています。

興味を持たれなかったら別の方法を検討しなければいけませんし、こうしたプロセスがデジタル時代における正しい政策検討の在り方だと考えています。

公開した内容が多くの方に見ていただけることが分かったら、より深い情報や、マイナンバー以外の政策ダッシュボード開発も検討したいと思っています。もし他省庁の方で興味のある方がいれば、ぜひ一緒に取組みたいです。

志水
デジタル庁内での展開としては、データとデザインをつなげることで、最適なサービスやコミュニケーション設計をしていきたいと考えています。データは事実を示して、課題点を明確にします。

しかし、その課題がなぜ生じているのか、その課題に対してどうコミュニケーションすべきなのかといった問いについては、ユーザーインタビューや観察調査などを通して深掘りしなければ分かりません。

デジタル庁では、「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を」というミッションのもと、さまざまな形でサービスを提供することを目指し、日々奮闘しています。

その実現のためにも、まずはデータ主導型の文化を庁内で広めること。そして、皆さまの意見や要望を聞き取り、「サービスデザイン」の観点から改善し続けたいと思っています。

ダッシュボードプロジェクトのメンバー。デザイナーの1人はフルリモートワークで勤務しており、リモートでの取材参加となりました

デジタル庁は、府省庁、地方自治体、事業者など様々な方々といっしょにデジタル化を進めるなかで、多様なバックグラウンドを持つ方々が活躍しています。

政策データダッシュボードのように、経営企画といっしょに進めるプロジェクトで活躍するデータアナリスト、広報、エンジニア、デザイナーなどを募集しています。興味のある方は下記ページをご覧ください!

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