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欧州のデータ連携基盤、IoT、ワンスオンリーサービス、RaCの取り組み

欧州のデータ連携基盤の関連団体と日本のDSA、IEEEの「国際的なデータソサエティに関する円卓会議」があり、参加してきました。

この会議では、日本を始め各団体の取り組みを紹介し、今後の連携体制のあり方を論議しました。

デジタル庁は、2023年2月6日に会議のトップバッターとして、日本の政府の取り組みについてプレゼンテーションをしています。これにあわせてIoTとワンスオンリーシステム、Rule as Code(RaC)についても情報収集しています。

IOTやデータ連携

IoTについては、1/30-2/2にバルセロナでIoT solution World congress が行われていたので、併設で行われたISE2023も合わせて参加してきました。
IoT solution World congressは多くのベンチャー企業が出展しています。プラットフォームが、デバイスやエッジのサービスと分離しているため、専門性が活かしやすく、多くのベンチャー企業が参加していました。

LPWAのLoRaWANを使った対応センサー等、安価な機器とともに安価な通信費を活かしてサービス開発が進められています。


IoT機器を使ったサービスには2つの流れがありました。

1つはセンサーデータをモニターするためのダッシュボード製品群です。また、もう一つの流れがセキュアなセンサーネットの構築です。デバイスのエッジ部分のセキュリティから、ネットワークのセキュリティ、そしてトータルの監視サービスをセットとして提供しています。

欧州の団体としてはIDSAが出展し、エネルギーのデータ連携プロジェクトであるOMEGA-Xの紹介をしていました。日本ではCATENA-Xが話題ですが、欧州では環境の話にも関連したOMEGA-Xの取り組みも強力に進められています。コネクタを使って、様々な発電機器と電力購入者のデータを連携させています。

また、米国を中心にIoTの標準化活動するIIC(Industry IoT Consortium)も出展しています。IICは昨年11月に産業用アーキテクチャであるIIRC(Industrial Internet Reference Architecture)を、ITとOTの融合、デジタルツイン、組み合わせ型のシステム、人間以外が使用する場合に対応したバージョン1.1を公表しています。

家やビルのIOTとしてはデバイスの出展だけでなく、標準化を推進するKNXが出展しており、各種機器を接続するためのKNX IoT Open Source stackの紹介をしていました。

このようなセンサーを含んだフレームワークは、センサー機器ベンダーを多数持つ日本にも影響があり動向を注視していく必要があります。

欧州委員会が最近進めているのがミドルウェアプラットフォームのSimple です。

これまで、欧州のデータ連携基盤は機能毎のビルディング・ブロックを組み合わせて作るものが注目されてきましたが、Simlpeはミドルウェアプラットフォームでサービス間を連携するモデルです。

2024年に向けて開発が進められており、Connecterベースのデータ連携とともに、このような簡易なアプローチも今後進んでいくと考えられます。

OOTSとRaC

今回、OOTSとRaCについてフランス政府の取り組みが進んでいるので訪問予定でした。予定の調整がつかず会議はできませんでしたが、情報は入手しているので全体をまとめておきます。

OOTS(Once-Only Technical System)

日本でもデジタル手続法でワンスオンリーサービスが提唱されてきていますが、欧州では2023年12月までに各国がワンスオンリーサービスを実施することになっています。

ワンスオンリーと言っても2段階あります。行政機関に登録された基本情報をベース・レジストリと連携して自動入力するサービス、証明書のベース・レジストリを使って添付省略をする段階です。

欧州では各国でベース・レジストリの整備が進んでおり、第一段階は終わっています。OOTSがサポートするのが第二段階です。

OOTSを通じて各国の証明書を入手することができます。例えば、フランスのパリにいる人がイタリアのローマに住んでいたときの証明書を入手可能にします。これにより住民や事業者の申請の作業負担を大幅に減らすことができます。

このOOTSは、ECのデジタル・ビルディング・ブロックの1つとしてサービスを提供しています。行政におけるデータスペースの第一号として推進されており、7stepで国をまたいだ証明情報の交換を実現します。

これは、PDFか何かで送れば簡単かなと思うかもしれません。

しかし、この裏側の仕組みには工夫があります。各国共通の認証であるeIDASやセキュアな転送のためのeDeliveryのビルディング・ブロックを組み合わせてサービスを構築しています。

もともと、欧州はコア語彙として、人や事業者のモデルや証明書のモデルを整理してきたので、ビルディング・ブロックで交換するデータ自体もきれいに設計されています。

まずは証明情報の転送から始まりますが、近い将来、自動審査までできるようになると考えられます。

RaC(Rule as Code)

RaCは、デジタル時代のルール作成とマネジメントためのアジャイルガバナンスの基盤となる仕組みです。これまで法律は人間が読むことを前提に作られてきましたが、法律等のルールを機械で読めるようにします。そのため、「プラグラムのコードのような法律」という意味でRaCと言われています。

RaCは特に手続き系の法律に使われます。世帯年収1000万円未満には給付金を支給などの条件を、プログラムのように論理構造で書いていきます。
世界では、デンマーク、フランス、ニュージーランド、オーストラリア、カナダ等がすすんでいますが、特にフランスはOpenFiscaと言うオープンソースのRaCの仕組みを開発しており、世界から注目されています。

このようなRaCを使うことで、法律策定時にシミュレーショを行えます。モデル世帯での支給金額の例示ではなく、多様な受給対象者の支給額を事前に計算でき、法律制定時のインパクト分析が詳細にできるようになります。

日本の行政サービスでも数値を入れると支給額などをシミュレーションしてくれるサービスもありますが、これは、文書で書かれた法律を事後にシミュレータとしてプログラムで作っています。OpenFiscaは、法律策定時からシミュレーションを行えるようになっており、システム構築も短時間でできるようになっています。また、法律をコードのように書くことで解析や矛盾確認なども簡単にできるという利点もあります。

法律のエディターや確認を高度化するという次元ではなく、運用の自動化を目指した次の世代の取り組みです。

このような仕組みを導入するのにいきなり法律で行う必要はありません。社内規則など簡単なところから取り組み、経験を蓄積していくアプローチが有効かもしれません。

また、RaCには大きな可能性があります。RaCにより国や言語を超えて法律の可読性が高まります。今後、技術の変化に合わせて法律を短期間に改正したりすることも増えると考えられますが、その場合にも各国の法律を自動分析して輸出可能国を調べたりすることができる等、社会変化への対応が容易になることも期待されています。

2023年3月12日 更新


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