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「国のバックオフィス」を支え、未来のあり方をつくる。デジタル庁のコーポレートプランニングユニットとヒューマンリソースユニットの使命

デジタル庁は「デジタル社会形成」の旗振り役として、官民一体となったデジタルインフラの構築を目指しています。これを支えるのが、デジタル庁内の「コーポレートプランニングユニット」と「ヒューマンリソースユニット」です。

コーポレートプランニングユニットは、データを活用した意思決定の推進や組織全体の戦略立案をサポートしています。ヒューマンリソースユニットは、多様な人材の採用・育成や新しい人事制度の設計に取り組んでいます。両ユニットは、デジタル庁内外の職員、行政官、民間専門人材と共に、組織全体の基盤づくりに携わっています。

今回は、両ユニット長それぞれに、具体的な業務内容や仕事のやりがいなどについて聞きました。

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高橋智嗣(たかはし・ともつぐ):コーポレートプランニングユニット長
外資系メーカーやテレビ局、日系エンタメメディアでマーケティング戦略、事業推進、経営戦略に携わる。直近は外資系コンサルティング企業で、クライアントのDX推進や新規テクノロジーをベースにしたアライアンス業務をリード。民間での経験を活かし、国に貢献したいと考え、2023年5月にデジタル庁へ入庁。現在はコーポレートプランニングユニット長として組織全体の戦略立案のサポートや事業推進を担う。埼玉県さいたま市のGIGAスクール構想におけるITスペシャリストとしてDXアドバイザーも務める。

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齋藤大輔(さいとう・だいすけ):ヒューマンリソースユニット長
10年以上にわたって、人事領域の専門家として事業会社やコンサルティング会社で勤務。直近はマレーシアに駐在し、現地社員を含むグローバルチームを牽引。東南アジアの日系企業の人事変革支援、グローバル人事制度の設計、リージョナル・ヘッド・クオーターの立ち上げ、企業買収後のPMIなどを経験。コロナ禍に際し、日本のデジタル化の遅れを実感。人事テック領域の専門家として自身の知識と経験を活かすべく、2022年6月にデジタル庁へ入庁。現在はユニット長としてデジタル庁における人事チームを率いながら、官公庁全体の人事領域のデジタル化推進を担う。

デジタル庁の「意思決定プロセス」を支えるコーポレートプランニングユニットの役割

インタビューに応じる高橋のバストショット。オフィスで窓ガラスを背景に話をしている様子を撮影している。

──はじめに、コーポレートプランニングユニットについてお聞きします。組織の発足経緯と、デジタル庁における役割について教えてください。

高橋:
コーポレートプランニングユニットは、さまざまなデータを活用しながら、デジタル庁全体の戦略や方針の検討と合意形成、情報集約と関係者共有、グループ横断的な課題抽出と方向性の決定を進めることで、庁全体のガバナンス機能の強化と、いわゆる官房機能の強化をサポートしていく機能を持つ部署です。民間企業でいえば、経営企画や事業推進を担当する部署をイメージしていただければと思います。

経営企画機能の役割を示す図。中央に「経営企画機能」があり、上部に「経営陣」が位置し、矢印が上下に繋がっている。左には「提案・意思決定の支援」と「客観的評価・可視化」の欄があり、右には「優先度判断・経営的支援の引き出し」と「目標・プロセスの改善」が表示されている。下部には「原課」が位置し、「実績・課題の抽出」と「目標・プロセスの改善」がそれぞれ矢印で繋がっている構造が描かれている。全体的に経営企画機能が経営陣と原課を繋ぐ「橋渡し」の役割を果たしていることを表現している。
経営企画機能の役割

具体的には、デジタル庁が組織として合理的な意思決定ができる仕組み作りの一環として、フィードバックのプロセス設計、重要会議体の運営、抽出された課題の整理、データ基盤の整備や可視化、意思決定のマイルストーンを決めたりすることが挙げられます。

特に各プロジェクトにおける業務オペレーションの高度化や、数値的根拠のサマリー、意思決定の根拠を提示する機能が重要だと考えています。

定量的な数字のみならず、「いま世の中がどうなっているのか」といった社会情勢の分析や、生活者の意識、その他の定性的な情報も収集し、庁の意思決定をサポートしています。たとえば、国民や自治体の皆さまのデジタル化に対する意識調査を年1回実施し、デジタル化に向けた課題を調査しています。

2024年6月に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」の作成にあたっては、世界中のファクトデータの収集を通じたメガトレンドの把握や、課題を抽出するといった基礎調査を実施し、計画の作成をサポートしました。

バックオフィスとも密接に関わるため、(後述する)ヒューマンリソースユニットと一緒に業務を進める場面も多く、兼任しているメンバーもいます。

――「業務に関わるオペレーションの高度化」という言葉がありましたが、具体的にはどのようなものでしょうか。

具体的な成果の一つとしては、庁内で開かれている様々な会議体について、より効果的に運営できるような施策を実施したことが挙げられます。

デジタル庁に集っている多様な人材、一人ひとりの価値を最大化するためにも、会議体の「意味合いやそこでの課題」を明確にすることで、マネジメントレベルでの対話を活性化できるのではないかと考えたからです。

例えば、1週間を有機的に見た上で、「この会議には何の意味や目的があるのか」「会議の中でマネジメントが何に課題を感じているか」などを発言や議論から明確にし、各会議体の目的や進め方を整理の上、可視化された課題をまとめ、各マネジメントに改めてフィードバックし、効率的かつ迅速に課題に対する取組を促す仕組みを整えました。

少しずつではありますが、こうした改善策を実行したことで、これまでにはなかった新しい観点や効率化を会議の現場で見出せる場面が生まれています。前例や慣習を一度俯瞰した上で、必要な見直しができたことは、民間での経験を活かすことができたと思います。

バランス感に優れたチームで、「意思決定の新しい仕組み」をつくる

インタビューに応じる高橋のバストショット。オフィスで窓ガラスを背景に話をしている様子を撮影している。

──デジタル庁には、官民問わず多様なバックグラウンドを持つ職員が在籍しています。意思決定をスムーズにするためには、どのような要素が大切ですか。

高橋:
多様な人材で、数多くのプロジェクトが動いているデジタル庁ですが、効率的に組織を運営するためには、一緒に仕事をするための「土俵」の用意が欠かせません。そこでカギとなるのが「データ」です。

具体的には、いわゆる「経営基盤」や「経営の三要素」と言われる「ヒト・モノ・カネ」を、データを用いて可視化し、議論の土台を構築し、意思決定をする一連のループや仕組みを作り上げて、民間の経営企画とも異なる意思決定の新しい仕組みを整えることが目下の目標です。デジタル庁の場合、「モノ」には「サービス」や「政策」が当てはまります。

デジタル庁は利益を追求する組織ではないため、ヒト・モノ・カネを一元管理する意味が理解されにくい面があります。しかし、組織が大きくなるにつれ、どのプロダクトにどれだけのリソースを投入すべきか、優先順位をどう付けるべきかといった判断が難しくなってきています。

私たちの役割は、これらの要素を整理し、一つの定義にまとめ上げること。中期的な展望としては、人員が増加する中で、人事、プロジェクト管理、予算配分などバックオフィス機能の一元化も視野に入れています。

行政機関におけるバックオフィス機能のDX化を推進し、より効果的な意思決定の仕組みを構築していくこと。これは壮大な挑戦ですが、デジタル庁の未来、ひいては日本のデジタル化の未来を左右する重要な取組だと考えています。

──現在、コーポレートプランニングユニットではどのような方が活躍されていますか。また、新規人材を募集していますが、求める人材像もあわせて教えてください。

高橋:
民間企業で経営企画や事業推進に携わってきた経験者は多いですが、過去の所属にとらわれることなく、多様なメンバーが活躍しています。庁全体の調整役としての業務も担うので、みな俯瞰力と突破力をバランス良く兼ね備えています。

求める人物像ですが、庁内・庁外を問わず、様々なステークホルダーとの地道な利害調整や合意形成のスキルが欠かせません。マインド面では、官民融合で生み出す「意思決定の新しい仕組み」「新しい価値観」にワクワクできる方とご一緒できたら嬉しいです。

私たちの仕事は、民間企業出身者や様々な省庁からの人材が集まっているデジタル庁ならではの「意思決定の新しい仕組み」を作り上げていくものです。民間の経営企画とも、行政の企画業務とも異なるハイブリッドな意思決定の推進機能を立ち上げるチャレンジできる魅力は大きいと思います。

国の行政機関の仕組みづくりに携われる機会は、一生に一度得られるかどうかほどの貴重な経験です。時に熱く、時に冷静に、全体を俯瞰しながら調整し、ゴールを目指せる方にぜひ来ていただけたらと思います。

「未来の国家公務員の在り方」に繋がる、ヒューマンリソースユニットの役割

インタビューに応じる齋藤のバストショット。オフィスで窓ガラスを背景に話をしている様子を撮影している。

──次にヒューマンリソースユニットについてお聞きします。組織の発足経緯と、デジタル庁における役割について教えてください。

齋藤:
ヒューマンリソースユニットには、民間企業で人事領域の専門知識や経験を得た人材が集まっています。現状の主な役割は、以下の5つに分類されます。

  1. プロジェクトマネージャーやエンジニアなど、特定のスキルを持った非常勤の専門人材の採用・登用

  2. それらの専門人材を対象とした人事制度の設計・運用

  3. MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)をはじめとした組織文化形成

  4. 組織サーベイをもとにした組織改善施策の立案

  5. 人事領域のDX(デジタルトランスフォーメーション)

特徴的なものとしては「専門人材を対象とした人事制度の設計・運用」です。言い換えるなら「ジョブ型で雇用されている有期雇用のプロフェッショナル職員の人事制度の設計・運用」で、これまでの官公庁には前例がない人事制度や仕組みを内閣人事局や人事院など、他の府省と連携しながら構築していく挑戦的な取組です。

ここで言う「ジョブ型」とは、従来の公務員のような「ジェネラリスト型」や「メンバーシップ型」とは異なり、特定の職種や専門性に特化した人材の雇用形態を意味します。

――「専門人材を対象とした人事制度の設計・運用」とありましたが、具体的にはどのような業務でしょうか。

齋藤:
例えば、デジタル庁にはエンジニアが在籍していますが、従来の国家公務員制度にはエンジニアのキャリアパスや昇格・昇給ルールの前例がありませんでした。このように、特定の職種に特化したキャリアパスや評価制度の構築が必要となった場合のルールメイキングを、デジタル庁ではヒューマンリソースユニットが担っています。

私たちの仕事は、官公庁では前例がなかった人事制度や仕組みを、内閣人事局や人事院など、他の府省と連携しながら構築していく挑戦的な取組でもあります。デジタル庁からベストプラクティスを作ることが、今後の国家公務員の在り方にも繋がると考えていますし、ヒューマンリソースユニットがその役割を担っていると捉えています。

デジタル庁は、様々なバックグラウンドを持つ人材が集まっている特殊な環境です。国家公務員試験を受けて公務員となった常勤職員の方々も、あらゆる府省から出向で来て頂いておりますし、地方自治体、又は民間企業から出向で来られている方もいます。従って、デジタル庁に来た経緯や、プロジェクトに対する想いも人それぞれです。だからこそ、全員が一丸となって、共通の目標へ向かうための組織文化の構築が必要です。

そのため、MVV(※)の策定や今後はカルチャーブックの作成も検討したいと考えており、組織文化の形成と浸透に力を入れています。出向で来られている職員が入れ替わる中でも、新しく入庁した方にデジタル庁の文化が継承されていくことを目指しています。

(※)「MVV Award」とは組織文化醸成を目的に、デジタル庁のミッション(M)・ビジョン(V)・バリュー(V)を体現した組織(チーム)と個人を表彰し、ロールモデルとして庁内に共有することで、ミッション・ビジョン・バリューのさらなる浸透を図る取組です。​

デジタル庁の事業を「人と組織のチカラ」で成功に導く

インタビューに応じる齋藤のバストショット。オフィスで窓ガラスを背景に話をしている様子を撮影している。

――デジタル庁は設立から3年を迎えました。ヒューマンリソースユニットでは、今後継続的な体制整備に向けて、どのような取組を進めますか。

齋藤:
今後の展望としては、大きく3つの柱があります。

  1. 人材の流動性の高さを前提としながら、組織を安定的に拡大するための仕組みの構築

  2. バックグラウンドの多様な人材に対応した人事制度の構築

  3. これらを実行するためのヒューマンリソースユニットの強化

民間出身の専門人材には任期があるため、必然的に人材の流動性が高くなります。また親元の組織のある出向で来ている常勤職員も数多くおり定期的な人事異動でプロジェクトを離れていきます。その中で、強靭な組織体制を構築していくための制度設計も、私たちの重要なミッションの一つです。

重点計画で示されている各取組を推進するため、今後デジタル庁は1500人規模の組織となることが目安となっています。そのために、デジタル庁のさらなる組織拡大、プロジェクトの推進のため、人事の立場からこれを支えていただける方を求めています。

また、コーポレートプランニングユニットの業務説明の中にもありましたが、デジタル庁の意思決定において、データや数値をもとに決めていくことの重要性は日々増しています。ヒューマンリソースユニットでも、人材情報の定量化と可視化に取り組んでいます。

組織サーベイを毎年実施し、結果をもとに組織改善のための施策を立案しています。また、人件費やFTE(Full-Time Equivalent)の管理、各プロジェクトのKPI測定など、数値に基づく人事管理を推進しています。

またその制度の実行に掛かる部分はデジタル庁だけではなく、府省全体の人事DXをデジタル庁が、内閣人事局、人事院と共に人事業務の標準化、高度化を目指すためのプロジェクトを推進しています。対象となる国家公務員の規模を考えると40万人を遥かに超え、人事業務における改革の大きさは日本だけではなく、グローバルで見てもトップレベルの挑戦をしています。

また最近では、デジタル行財政改革の取組の一環として、総務省と共に地方自治体に対して専門人材の雇用の強化のためのアドバイザリーをする等、デジタル庁が企画、設計をしてきた制度を他の行政組織に展開し始めており、デジタル庁を飛び越えた業務も推進しています。

──ヒューマンリソースユニットではどのような方が活躍されていますか。また、新規人材を募集していますが、求める人材像もあわせて教えてください。

齋藤:
ヒューマンリソースユニットは、民間企業で人事や採用を専門としてきた人材で構成されています。大企業からベンチャー企業まで、業界を問わず、様々なバックグラウンドのメンバーが集まっています。

採用についてもホームページで公開している通り、人事領域別に幅広く求めており、特定領域の専門知識や経験を持っているという方が多い組織です。

とはいえ、完全な分業制は取っていないのも特徴です。これまでの経験を飛び越えて、自身の強みや経験を縦にも横にもストレッチして成長できる余地を作れるようなアサインメントを意識するようにしています。その上で、デジタル庁で得た経験を踏まえて、さらなる人事の専門家となるために挑戦できるユニットを目指しています。

ヒューマンリソースユニットの業務は、従来の公務員制度と民間の先進的な人事制度を融合させた、まさに「人事の高度化」ともいえる仕事です。前例がない中で新しいものを作り上げていくことに、つらさではなく、やりがいを感じられるマインドが欠かせません。

既存の枠組みや制約を単なる障害とは捉えず、それらを踏まえた上で、いかに革新的な解決策を見出せるのか。民間企業では出会わないようなハードルや壁があったとしても、それをネガティブに捉えるのではなく、「こういった方向であれば、より職員のためになる人事制度や仕組みを作れるのではないか」とポジティブに考えられる方であれば、きっとご活躍いただけると思います。

私たちのミッションは『デジタル庁の事業を「人と組織のチカラ」で成功に導く』です。デジタル庁、ひいては40万人の国家公務員に影響を与えうる取組です。その責任とやりがいに興味をお持ちの方がいらっしゃれば、ぜひご応募いただけると嬉しいです。


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