デジタル庁設立2年。生活者視点を徹底し、社会全体を支える安全・安心な仕組みをつくる
デジタル監の浅沼です。
デジタル庁は、2023年9月1日、設立2年を迎えました。この節目に合わせ、目指す社会に向けたデジタル活用の進捗、この1年の主な政策・サービスの成果と進捗について振り返るとともに、組織づくりへの取り組み、および、今後の取り組みについて皆さまへ共有させていただきます。
はじめに
一連のマイナンバーやマイナンバーカードの事案について、国民の皆さまにご心配、ご迷惑をおかけしていることについて心からお詫びいたします。
「生活者、利用者視点の徹底」「安全・安心を支える仕組み」。この二つについては、私がデジタル監に就任した当初から、国民の皆さまが利用するサービス、またその基盤を作っていくかぎり、最も優先すべき取り組みであると常に留意して業務にあたってきました。しかし、このような事案が発生してしまい、あらためて、今以上に私が力を尽くさなければいけないところだと痛感しております。
デジタル庁で推進している政策やサービスは国民の皆さまの生活に直結するものです。デジタル監として、生活者、利用者視点の徹底、安全・安心、この二つに愚直に対峙し、これからのすべてのサービスに活かしていくことをお約束したいと思います。これを自分の役割として、引き続き尽力していきます。
1.注力領域とプロジェクト構成
デジタル庁は、2021年9月に日本のデジタル社会実現の司令塔として設立され、多様な政策・サービスを通じて、「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せを実現できる社会」を目指しています。
デジタル庁では、「デジタル社会の実現に向けた重点計画(2023年6月9日閣議決定)」に基づき、以下の3つを注力領域としています。
生活者・事業者・職員にやさしいサービスの提供
デジタル基盤整備による成長戦略の推進
安全・安心で強靭なデジタル基盤の実現
これらを実現するプロジェクトとして、マイナンバー関連サービスの普及推進、アナログ規制の見直し、医療・防災・教育・こども等の準公共分野でデータ連携、ガバメントソリューションサービスの提供、自治体標準化、ガバメントクラウド等、13のプロジェクトグループに分類。
多様な政策・サービスの実現により、目指すデジタル社会の実現に向けて「生活者中心のデジタル化」「社会全体を支えるデジタル化」を着実に推進してきました。
2.目指す社会に向けたデジタル活用の進捗
目指す社会を実現するために、その土台として大事なことは、一人ひとりが安心してデジタルを活用できるようになることです。これは、デジタル庁で行った意識調査のデータです。
社会のデジタル化を良いと考えていたり、関心があったりする人の割合は40~50%近くありますが、適応できていると思っている人は28%。また、デジタル行政サービスを利用したことがある人の中で満足していると答えているかたは29%となっています。
私たちはこのような現状を踏まえて、多くの方が簡単に快適にデジタルサービスを活用いただけるよう、わかりやすく、かつ、安全・安心なサービスを提供していき、この指標をすこしずつでも上げていかなければいけません。
そして、こうした意識調査を通して常に国民の期待や状況を確認し、理解度や満足度といった指標を参考にしながら社会全体のデジタル化や行政デジタル化の取り組みを丁寧に進めていきたいと考えています。
数字でみるデジタル活用の進捗
目指す社会に向けたデジタル活用の進捗をご理解いただけるように、主な取り組みにおけるこの1年の進捗を数字でまとめました。
行政手続きをオンラインで可能にすることで、窓口に行くことなく手続きが完了できるようになり、手続きの手間を最小にする取組を進めてきました。
マイナポータル登録者数:2022年7月から3.6倍の約6,410万人
子育て・介護関係の手続きがオンライン化している自治体の割合:65.1%
一人ひとりが最適な公共サービスを利用できるように、マイナンバーカード普及とその利用シーンの拡大を進めてきました。
マイナンバーカードの保有数:71%
公的個人認証サービス利用事業者数:2022年度から3.1倍の450
マイナンバーカード健康保険証としての利用登録累計数:2022年8月から4.3倍の約6,550万件
平常時だけでなく緊急時においても、誰一人取り残すことなく、素早く公共サービスを届けるための環境を整えてきました。
公金受取口座の登録:60.9%
公金受取口座を利用する自治体の割合:70.4%(自治体数は1260)
アナログ規制の撤廃により行政サービスのデジタル完結や新技術利用を促進することで、新たな付加価値を創出しやすい社会の実現を目指してきました。
アナログ規制の見直しが決定した条項数:9,669条項
行政において活用可能なサービスマップに登録されたサービス数:141件
政府機関の職員が安全・安心で効率的、柔軟に働けるよう、府省庁にガバメントソリューションサービス(GSS)の導入を推進しました。
GSS導入府省庁数:5機関
GSSサービスを活用する職員:26,300人
府省庁や地方自治体が有する行政機関システムに対するサイバー攻撃やインシデントリスクを最小化するため、ガバメントクラウド環境を整備してきました。
この1年で86件のガバメントクラウド移行を実施し、移行数は130件
マイナンバーカードを活用して利用できるサービスも拡充してきました。
オンラインでの行政手続きにおいては、2023年2月に引越し手続きのオンライン申請を全自治体で開始し、約38万件の申請が行われました。
2023年度デジタル田園都市国家構想交付金によって、約560の多種多様なマイナンバーカード利活用サービスが、各自治体で実装され、行政、健康・医療、公共交通、防災などの分野で利用されています。
エンタメ分野での活用や、コンビニセルフレジでの酒・たばこ販売時の年齢確認サービスなど約460の民間事業者で導入されました。
2023年5月には、スマートフォンに電子証明書を搭載するサービスをAndroid 端末で開始しました。スマートフォン用電子証明書を使えるサービスを順次拡大していくとともに、iOS 端末についても搭載に向けた検討を進めております。
3.主な政策・サービスの成果と進捗
利用者に寄り添い進化するマイナポータル
マイナポータルは、利用者にとって分かりやすく、簡単に手続きが行えるように、2022年12月に実証アルファ版を、2023年8月には実証ベータ版をリリースし、インタフェースをより使いやすく刷新しました。
利用登録者数も昨年比で3.6倍となり6,410万人まで利用者が増加しました。
新機能として、引っ越し手続きオンラインサービスやパスポートオンライン申請機能などが追加されており、今後も順次新たな機能を拡充していきます。
利用者のフィードバックをオンラインで受け付けるクイックサーベイ機能や開発時のユーザーテストを定常的に実施し、引き続き生活者、利用者によりそうサービス提供に取り組みます。
日常生活で便利に使えるマイナンバーカード
マイナンバーカード機能を活用する民間事業者との連携も大きく進んでいます。
マイナンバーカードの民間利用は約460社、民間事業者における電子証明書の有効性検証数は1,174万件になりました。
マイナンバーカードが行政サービスだけでなく、個人間の売買サービスや金融機関の口座開設の本人確認などさまざまな民間サービスでその機能が利用されるようになってきています
魅力利便性を備える豊かな地域へ
地⽅におけるデジタル実装の更なる推進に向けて、⾃治体が迅速・簡便にサービス/システムを検索‧⼊⼿できるよう、デジタル庁が関係省庁と連携し、医療‧健康‧⼦育て、公共交通、⾏政窓⼝等の主要分野でのデジタル実装の優良事例を⽀えるサービス∕システムを取りまとめたカタログ(第1版)を作成し公表しました。
オンラインでも安全・安心に本人確認
各種⾏政サービスにおいて、それぞれ実装されていた認証‧署名機能の集約と、スマートフォン⽤電⼦証明書の利⽤推進を⽬的としたデジタル認証‧署名アプリの開発に着⼿しました。
本アプリでは業界標準であるOpenIDConnectを採⽤。APIを公開し⾏政機関だけでなく⺠間含め官⺠⼀体でマイナンバーカードの活⽤を推進します。
行政事務を効率化して良質なサービスを
2023年3⽉末、地⽅⾃治体の基幹業務システムの標準仕様書が改定されました。
それを受けて、デジタル庁は2023年5⽉に標準化移⾏に関して地⽅⾃治体をサポートする「標準化リエゾン」を設置。2026年3⽉までの移⾏⽀援期間において標準化の進捗と課題を確認しながら、技術⾯も含めたサポートに取り組んでいきます。
便利なオンライン手続きを支える新たなインフラ
公共サービスメッシュ(情報連携の基盤)は、2025年度中を実装ターゲットとしているところ、2024年度の設計‧開発⼯程に向け、技術的検討を進めています。
マイナンバー制度に基づく⾏政機関同⼠の連携について、各府省庁等に向けて、共通機能を提供する等、現⾏インフラを新たな⼿法に転換します。
各⾃治体が保有する住⺠情報を⽤いて、利便性の⾼いサービスを最⼩限のシステム対応で実現するためのモジュール(⾃治体内の情報活⽤機能)を整備します。
公的給付を素早く受け取れるように
さまざまな給付金の受け取りを円滑にする公金受取口座の登録件数は、2022 年8月から約4,800万件増加し、今年7月末では約5,700万件となりました。
2023年7月末までに、公金受取口座を使用して給付金等を支給した自治体数(都道府県及び市区町村数)は1,260自治体となりました。
事業者の手続きもオンラインで
事業に関する行政手続きのオンライン化も推進し、民間事業者の生産性向上の支援もすすめてきました。
2022年から2023年の間に、延べ約7万の事業者が補助金申請システム(Jグランツ)を利用しました。また、14の府省庁及び41の自治体でJグランツが活用されています。
法人共通認証基盤(GビズID)については、プライムアカウント発行数が100万者を超え、国や自治体の連携先システムも145に拡大しました。
2023月年8月にはgBizIDサービスがアップデートし、gBizIDで、個人事業主でマイナンバーカードをお持ちの方はオンライン申請が可能になりました。
誰もがアクセスできるウェブサービスを
行政機関のウェブサイトやアプリサービスを様々な人がアクセスできるように、ガイドラインや開発ツールを公開してきました。
2022年12月、誰もが簡単にウェブアクセシビリティについて学ぶことができる「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」を公開しました。また、アクセシビリティに配慮したデザイン開発ツールとして「デザインシステム」も公開しています。
行政のオンラインサービスに対するリクエストの受け付けも、試験的に運用を開始しています。すべての行政オンラインサービスに誰もが簡単にアクセスし、利用できるようこの取り組みを進めていきます。
アナログ規制を見直し、デジタル化を加速
人による目視や定期検査・点検、常駐・専任等が必要なアナログ規制を定める法令約1万条項の見直しについて、昨年12月に開催された第6回デジタル臨時行政調査会で見直しにかかる工程表が確定しました。
法令所管省庁とも連携し、2024年6月までを目途にアナログ規制を一掃していきます。この見直しの経済効果は、GDPで約3.6兆円にのぼるものと推計しています。
今後、AI時代を見据えた官民データの整備や制度対応も進め、行政・民間分野における「デジタル完結」を加速化させていきます。
デジタルが当たり前の世界に
デジタル規制改⾰を国の基本⽅針として法定し、新しい法令のデジタル原則の適合性をチェックする「デジタル法制局」のプロセスやデジタル技術と規制の⾒直しの関係を整理した「テクノロジーマップ」の整備に関連する規定を盛り込んでいます。
さらに、事業所等に掲⽰されている、許認可等を受けていることを⽰す紙の書類等をインターネットで閲覧できるようにする等、より利便性を⾼めるため、アナログ規制にかかる法律を改正することにしました。
情報連携により最適な医療や福祉を提供
医療DXの早期実現を⽬指し、厚⽣労働省をはじめとする関係省庁と連携しつつ、「医療DXの推進に関する⼯程表」に基づき、各種取組を進めています。
具体的に、公費負担医療や地⽅単独の医療費助成、予防接種、⺟⼦保健等に係るマイナンバーカードを利⽤した情報連携に関する実証事業等に取り組んでいます。
いつでも、どこでも、⾃分らしく学ぶ
こども⼀⼈ひとりが、⾃分の興味関⼼や得意‧不得意に合わせて、好きなデジタル教材を選べるとともに、教員にとっての業務負担の軽減や働き⽅改⾰へとつなげることを⽬指し、学習の窓⼝である「学習eポータル」と、様々な学習アプリ及び校務⽀援システムをシームレスにつなげる実証事業を⽂部科学省と連携して実施しました。それによって、「学習eポータル」の接続機能の強化をしました。
こどもを社会のまんなかへ
潜在的に⽀援が必要なこどもや家庭の発⾒、プッシュ型⽀援を⾏う際の検証をするとともに制度⾯‧運⽤⾯での課題を検証するため、データ連携のユースケースに応じた実証事業を実施し、2022年4⽉に公表した実証事業ガイドラインの改訂を⾏いました。
また、ガイドラインの更新等を⽬的とした更なる実証事業の実施を、2023年4⽉に設⽴されたこども家庭庁へ繋げました。
防災のあらゆる場⾯でデジタル技術を活⽤
⺠間で開発された防災分野の優れたアプリやサービスの利活⽤を促進させるため、「防災DXサービスマップ‧防災DXサービスカタログ(初版)」を公開しました。
また、デジタル庁の声がけにより⺠間事業者や地⽅公共団体等、計357者(2023年8⽉末時点)の協議会会員による「防災DX官⺠共創協議会」が発⾜し、防災DXの実現に向けた議論が開始されています。
新たなデジタル交通社会の実現に向けて
⾃動運転⾞やロボット、ドローン等、さまざまなサービスを提供するために、デジタル社会推進会議はモビリティワーキンググループを設置しました。
このグループは、サービスの持続可能性を⾼めるために、地域の実情に合わせた運⾏管理や事業体制の構築に取り組んでいきます。
具体的には、協調領域としての空間情報の共有、制御の在り⽅、そして社会的責任の分担等について検討を開始します。
データ連携により企業活動をなめらかに
「企業間取引将来ビジョン検討会」を開催し、企業間の取引データが活⽤され、社会的課題の解決や産業の発展に繋がる将来像を具体化し、異なる複数の関連する情報処理システムが連携する仕組み(アーキテクチャ)を描く活動を⾏いました。
また、全銀EDI(全国銀⾏協会が構築した⾦融ElectronicDataInterchangeシステム)・⾦融GIF(GovernmentInteroperabilityFramework)の利活⽤を通じた企業間取引のデジタル完結とデータ相互運⽤性の確保を⽬指した関係事業者による取り組みを⾏いました。
デジタル完結でバックオフィス業務を効率的に
Peppole-invoiceを管理する「OpenPeppol」で⾏われた新たな国際標準仕様「PINT(ピント)」の策定に向けた活動に積極的に貢献し、2023年7⽉、PINTの正式公開を実現しました。
そのPINTをベースに、⽇本のインボイスの標準仕様である「JPPINT」を策定・公開しました。
また、G7デジタル技術展(⾼崎)において、デジタルインボイスの展⽰ブースを独⾃に出展し、国内外に⽇本の貢献を広くアピールしました。
入国手続きをオンラインでスムーズに
入国審査と税関申告を簡単にオンラインで行えるVisit Japan Webにつきまして、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえた水際対策の変更に合わせ、厚生労働省・入管庁・財務省等関係機関と連携しながら迅速にサービスの改修を行ってきました。
この取組を通じ、これまで複数存在していたオンラインサービスやアプリをVisit Japan Webに集約し、便利で使いやすいサービスの提供に取り組んできました。
現在アカウント登録者数は7月末時点で約1,100万人となり、多くの方に使っていただけるサービスになりました。
デジタルで行政機関の働く環境を変革
デジタルで行政機関の働く環境の変革も行ってきました。2020年度においてデジタル庁職員に対して提供を開始したガバメントソリューションサービス(GSS)について、各府省庁への導入を推進しました。
現在、導入府省庁数は人事院、こども家庭庁など5機関となり、利用職員数は、約26,300人まで拡大しています。
クラウドサービス、本格運⽤へ
各府省と地⽅公共団体、準公共分野への技術的な⽀援を進め、ガバメントクラウドの本格利⽤を後押ししました。利⽤の⼿続きやドキュメントを⼀元的なツールにした「GCAS(GovernmentCloudAssistantService)」をリリースしました。
さらに、2023年5⽉に実施した各事業者へのヒヤリングを通して技術に関する要件の⾒直しを⾏いました。
世界をリードするデジタル政府に
グローバルにおける取組としては、今年4月、議長国としてG7デジタル・技術大臣会合を実施し、DFFT具体化に向けた国際枠組み(IAP)の設立に合意しました。
また、年間を通じて、各国と協力覚書(MoC)の署名を行い、デジタルトランスフォーメーションの取り組みや知見を共有することで相互の学びを推進しています。
G7加盟国だけでなくG20加盟国や、アジア、北欧、中東諸国とも、技術分野における協力・連携に向けた議論を深めています。
新たなテクノロジーを素早く検証
⾏政における⽣成AIの活⽤に関しては、業務利⽤に関する申合せの運⽤や各省庁からの利⽤申請の取りまとめ等を通じて、関係省庁と連携して⽣成AIに関する実態の把握に努めています。
内閣⼈事局とワークショップを開催する等、ユースケースを開拓しています。また、有識者によるAI戦略会議や、関係省庁の連携体制であるAI戦略チームを通じてAIの急速な進化‧普及やこれにより⽣じる課題への対応を⾏っています。
4.デジタル庁の組織づくり
デジタル庁は、デジタル社会の形成において司令塔として、国、地方行政のIT化やデジタル化の迅速な推進を目的として発足しました。
デジタル化を迅速に推進するに当たり、行政の縦割り構造によって点在していた業務やシステムの横串を通すために各省庁から来たメンバーが協業する体制となっています。
また、専門的な知見を取りいれるために民間専門人材を登用し、様々なバックグラウンドを有するメンバーが協業する全く新しい組織づくりを行なってきました。
現時点で、デジタル庁組織全体として約1,000名の体制となり、2023年7月時点で自治体を含む行政出身職員が約50%、民間出身等職員が約50%となりました。
経営企画室の設置
設立2年目で注力したのが、経営企画室の設置です。
経営企画室は、デジタル大臣・デジタル監・デジタル審議官の意思決定をサポートする役割を担います。
そのために、デジタル庁全体の戦略や方針の検討と合意形成、情報集約と関係者共有、グループ横断的な課題抽出などを行います。
併せて、デジタル庁全体の組織のガバナンスも担い、いわゆる官房機能を強化しました。
また、経営企画室が主導して進めている取り組みは以下になります。
プロジェクト管理の整備
3つの注力領域に紐づく13プロジェクト群において、関連するプロジェクト間の情報共有を効率的に行えるようにしました。
この13のプロジェクト群ごとに目標や計画を設定し、意思決定やプロジェクト群内での進捗管理や優先順位づけを合理的に実施できるようにしていきます。
また、多くのプロジェクトを円滑に品質高く進めていくために、プロジェクト管理チームが定期的にレビューを実施し、その計画や進捗状況を把握して、マネージャーや関係チームへ情報を共有します。
このプロジェクト管理の仕組みにより、各プロジェクトで生じた課題やリスクに対して、速やかに対応することも可能になります。
さらに、質の高いサービスを提供するため、専門スキルを有する人材でプロジェクトのサポートを実施する体制を整えました。
その上で、重要なサービスのリリースについては、品質やリスクを専門人材で多面的に評価するリリース判定の仕組みも開始しました。
リスクマネジメント体制の強化
セキュリティインシデントや個人情報漏洩事案についての連携強化のみならず、サービスの瑕疵や法令違反の疑いなど、広範なリスクを速やかに把握・共有し、対応できる体制を構築しました。
その上で、リスク事案が発生した場合の連絡先の整備、関係者との情報共有を即時に行える仕組みも整えました。これにより、今まで以上に提供するサービスの品質向上を目指していきます。
5.今後の取り組み
生活者が中心のデジタル社会づくり、社会全体をささえる安全・安心なデジタル化を進めるために、重点計画にもとづき以下3点を徹底、強化して、関係者と一緒に政策やサービスづくりを行なっていきます。
生活者や利用者視点の徹底
意識調査、エンドユーザーとの共創、意見収集、プロトタイプテストなどを実施し、徹底した利用者視点の政策・サービス提供を目指します。
利用者の状況や理解度にあわせたわかりやすい説明と、デジタル庁ウェブサイトだけではなく、様々なメディアを活用して情報提供を行っていきます。
データやビジュアルを活用し、社会におけるデジタル化の広がりや生活者の期待や意識、政策・サービス提供の進捗をわかりやすく公開・共有していきます。
品質管理に向けたプロセス・体制の強化
組織においてセキュリティや個人情報等の管理体制を強化し、組織全体で品質管理、リスクマネジメントの強化を図っていきます。
プロジェクトの品質を確保するために、管理プロセスと体制を整備し、主要プロジェクトについて、企画段階から、サービスのリリース、そして運用・改善まで、リスクの検知と品質確保の支援を行います。
そして、マイナンバー関連サービスを含め、国・地方でのシステム連携が拡大するなか、関連する府省庁や地方自治体との間で様々な連絡体制を整え、情報連携とコミュニケーションの効率化を図っていきます。
内部開発の拡大、データ活用の定着
内部開発の範囲を拡大するために、プロセスと体制を構築します。専門人材の採用を積極的に進め人員を整えるとともに、必要な環境やプロセスの整備を進めます。
デジタル政策立案機能の強化を行います。海外の政策などの調査や中長期的なデジタル政策の方向性を作っていくための新たなチームを組成し、体制を強化していきます。
組織におけるデータ活用の定着を進めます。データによる状況の分析と可視化を行い、業務推進と意思決定の効率を高め、組織全体でEBPMの実践を目指します。
さいごに
冒頭でも書かせていただきましたが、「生活者、利用者視点の徹底」「安全・安心を支える仕組み」の二つについては、私がデジタル監に就任した当初から、国民の皆さまが利用するサービス、またその基盤を作っていくかぎり、最も優先すべき取り組みであると考えております。
デジタル庁で推進している政策やサービスは国民の皆さまの生活に直結するものです。デジタル監として、生活者、利用者視点の徹底、安全・安心、この二つに愚直に対峙し、これからのすべてのサービスに活かしていくことをお約束したいと思います。これを自分の役割として、引き続き尽力していきます。