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デジタル監の四半期報告。利用者にとって「やさしい」サービスの実現に向けて

デジタル監の浅沼です。

就任後、8月にサービス組織、9月には設立1年の成果と進捗について記者会見で話しました。その中で、生活者視点のやさしいサービスづくり、官民の境目のない一体感のある組織づくりに注力することを約束しました。

12月19日の報告会では、生活者視点のサービスづくりに関連した取り組みとして、「サービス開発ガイド提供と情報のオープン化」「民間事業者との協業推進」「生活者向けのサービス拡充」について説明しました。

今回の記事では、新しくリリースした「マイナポータル実証アルファ版」を中心に紹介したいと思います。なお、noteで紹介しきれない報告会の詳細は、ウェブサイトに資料がまとまっているので、ぜひご覧ください。

利用者視点でサービスを全面的に見直し

写真:マイナポータル実証アルファ版で改善した3つのポイント

マイナポータルは、行政手続きの検索やオンラインでの申請、医療費や薬の記録など自分に関する情報・行政機関からのお知らせ内容を確認できるサービスです(一部機能の利用には、マイナンバーカードが必要)。

2017年11月に運用を開始後、これまで継続的に機能の追加と改善を実施してきました。例えば、「申請入力支援機能」「国民年金の加入手続きに関する機能」「診察情報の記録を閲覧する機能」などをリリースしています。

こうした施策の効果もあり、認知率は4割を超えるなど(デジタル庁調べ)、国が提供するサービスとして認知されるようになってきました。

一方で、情報量が多くて、どこにどのような機能があるのかも分かりづらい、操作や入力が複雑で使いづらいといった声がもあり、多くの方が満足して利用しているとはいえない状況です。

そこで、「利用者にとってやさしいサービスにする」という方針を掲げ、新しくリリースしたのが今回のマイナポータル実証アルファ版となります。具体的には、「見つける」「確かめる」「忘れない」をサポートするという観点から、サービスの全体像や開発プロセスを見直しました。

「見つける」をサポート

1つめの「見つける」では、行政手続きの分類や表示の仕方を見直し、必要な手続きを簡単に見つけられるようにしました。また、ライフイベントに合わせて必要な手続きがわかるガイドも用意しました。

これまでのマイナポータルは、手続きの一覧がどれが自分に必要なものか分かりづらくなっており、こうした課題に対してアプローチしています。

写真:「見つける」をサポートする機能の説明。たとえば、出産の手続きの場合、簡単な設問に回答すれば、順を追って必要な手続きを探すことができます。

「確かめる」をサポート

2つめの「確かめる」では、薬や医療費の記録やマイナンバーカードの情報など自分に関する記録や情報を簡単に確認できるようにしました。

これまでは記録や情報を確認するまでのステップが多く、なかなか必要な情報に辿り着けない課題がありました。たくさんのページをひらいて操作し、つど申請して回答を受け取る必要もあるなど手間が多かったプロセスを見直し、最小限のステップで記録や情報を確認できるよう改善しています。

写真:「確かめる」をサポートを説明したもの。薬や医療費、予防接種の記録を簡単に確認できるようになりました。

「忘れない」をサポート

3つめの「忘れない」では、やるべき行政手続きやその期限を忘れないようリマインドする「やること」サービスを新たにリリースします。

これまでのマイナポータルでは、いつまでに何をしなければならないか、直感的に知ることができませんでした。行政手続きは毎日行うものではないので、やり方や期限などを忘れやすいという特徴もあります。

「やること」サービスでは、証明書の有効期限や申請中の手続きにおける次のアクションをお知らせし、期限切れや申請漏れの防止をサポートします。

写真:「忘れない」をサポートする機能の説明。自治体手続きの申請後、その進捗が確認できます。例えば、児童手当の申請に誤りがあれば強調して「要再申請」と表示されるため、すぐに気がつくことができます。

「利用者といっしょにつくる」サービスへ

いままでの一般的な行政サービスでは、完成されたものを提供して、1年かけて改善するというプロセスが一般的でした。

今回、利用者にとってやさしいサービスを実現するために、アルファ版という開発の実証段階から使っていただき、短期間で改善を繰り返すことで、実態に即した使いやすいサービスの実現を目指します。デジタル庁が提供するサービスは、「利用者と一緒につくること」を大切にしていきます。

その他、報告会で紹介したトピックについて

報告会では、その他に「サービス開発ガイドの提供と情報のオープン化」「民間事業者との協業推進」などに関する成果や進捗についても説明しました。主なトピックは、下記となります。

行政システム開発を支援する取り組み取組

「デザインシステム」の公開:
利用者視点でのサービス開発を支援する仕組みとして「デザインシステム」の構築があります。デザインシステムとは、ウェブサイトやアプリサービスを開発する際に必要なインタフェースパーツやテンプレート、ルールを開発者向けに整備したものです。このデザインシステムを11月に公開しました。

今までは、行政においてサービス開発を行う場合、一からつくる必要があるため多くの時間を費やしてきました。また、利用者から見ると行政サービスは使い方も外観もバラバラで使いにくい状況となっています。デザインシステムを使うことでより効率的に開発を行うことができ、利用者にとっても、より使いやすく、一貫性のあるサービスの利用が可能になります。

写真:デザインシステムのイメージ図

「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」の公開
デジタル庁では、障がいのある方やご高齢の方などを含むすべての方がウェブ上の情報やデジタルサービスにアクセスし、利用できることを目指しています。これを実現するアプローチとして、「ウェブアクセシビリティ」の普及と実装を進めています。ウェブアクセシビリティに初めて取り組む職員や事業者の方々に向けてゼロから学べる初心者向けのガイドブックを12月に公開しました。引き続き情報公開と普及活動を行っていきます。

写真:ウェブアクセシビリティ導入ガイドブックの説明

民間企業との連携促進

重点計画の中で記したように、デジタル庁が目指す社会の実現に向けては、国や地方公共団体だけでなく、優れたデジタル技術を持つ民間企業との連携が不可欠です。中小企業やスタートアップも含めた連携を促進していくために、さまざまな取組を進めています。

テクノロジーマップ
デジタル臨時行政調査会で、アナログ規制の一括見直しを実施し、法令約1万条項の見直し方針を確定しました。(2022年12月時点)

アナログ規制の一括見直しを推進するなかで、規制と技術の対応関係を整理した「テクノロジーマップ」の整備を進めています。

第1弾の取組として、「対面の講習や試験のデジタル化」を実現するための技術を9月末に公募。大企業からスタートアップまで多様な企業から応募をいただき、現在は23の製品・サービス情報を公表しています。年明けに第2弾のテーマについて、公募を実施する予定です。

今後も中小企業やスタートアップ等が保有する技術をテクノロジーマップへ記載することで、民間技術の活用、新しい産業の創出を進めていきます。

写真:テクノロジーマップの整備に関するイメージ図。

調達プロセス改善:
現在のITサービスの公共調達は、調達側である行政機関と入札側である事業者の双方にとって情報が不足しているため、サービスの導入や提供の機会損失があります。また、手続きが煩雑で、長ければ半年ほどの時間を要するため、最適なITサービスを迅速に導入することが困難です。そのため、事業者の負担が大きく、中小企業やスタートアップの参入障壁になっています。

こうした課題を解消すべく、英国で実績のある「デジタルマーケットプレイス(DMP:調達を行う行政機関と事業者とのマッチングを行い、簡潔かつ短期間で契約できるサービス)」の仕組みを参考として、デジタル庁では調達プロセスの改善に着手しています。

令和5年度の調達案件からは、契約した事業者だけでなく、再委託事業者や再々委託事業者の名称を公開し、多くの事業者が公共事業での成果を自社の実績として活用できるようにしていきます。中小企業やスタートアップを含むあらゆる企業が、公共調達への参加がしやすくなる仕組みを整備します。

写真:英国におけるデジタルマーケットプレイスのイメージ図。

報告会では、上記以外にも「マイナンバーカード」のメリットと安全性に関する情報の提供、マイナンバーカード政策に関連したデータをオープンにして共有を行う「政策データダッシュボード(β版)」の公開、11月にアップデートし、検疫、入国審査、税関までを一体化した入国手続オンラインサービス「Visit Japan Web」、防災分野における民間サービス活用に向けた官民連携型防災DX推進協議会の取り組みなどを紹介しました。

12月19日に公開した政策データダッシュボード(β版)は、開発の裏側や担当者の思いをまとめた記事を後日お届けする予定です。今後も四半期ごとの報告会でデジタル庁の取組を分かりやすい形でお伝えしたいと思います。

引き続き、デジタル庁の役割である「日本のデジタル基盤を今後5年で整備し、民間企業や行政機関から、国民や企業がうれしいと感じるサービスが次々と生まれてくる社会をつくること」を目指していきます。そのためにも、利用者や行政機関、民間事業者といったさまざまな関係者と一緒に、生活者視点の「やさしい行政サービス」をつくっていきたいと思います。

参考リンク

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