政府職員を支えるインフラ「GSS」に携わるやりがい。デジタル庁職員が語るデジタル庁のリアル
デジタル庁では2024年8月、国家公務員を目指す学生を対象に「国家公務員OPENゼミ」を開催しました。
当日はデジタル庁の概要説明や職員による働き方の紹介、職員との座談会など、デジタル庁のリアルを知ってもらうためのさまざまなコンテンツを用意しました。
本記事では、当イベントにご参加いただけなかったみなさまにも「デジタル庁で仕事をするイメージ」を持っていただけるよう、イベント内容の一部を紹介します。
今回のデジタル庁noteでは、政府職員を支えるインフラ「GSS(Government Solution Service)」に携わる職員が語ったデジタル庁での仕事の魅力をご紹介します。
政府職員の日々の業務を支える「GSS」の役割
もともと私は厚生労働省で働いていたのですが、2022年4月にデジタル庁へ出向という形でやってきて、2024年4月には正式にデジタル庁へ移籍しました。現在、私が携わっている業務の一つが、「ガバメントソリューションサービス(以下、GSS)」に関するプロジェクトです。
GSSとは、デジタル庁が主体となって行政機関の職員が安全かつ効率的に業務を遂行できるように提供している政府共通の業務実施環境です。ここでの業務実施環境とは、いわゆる「職場のIT環境」という意味で捉えていただければと思います。
具体的には、霞が関と全国の府省庁拠点やデータセンター、クラウド環境等を結んだアンダーレイ、オーバーレイネットワーク環境をはじめ、職員が業務で使用するノートPC等のハードウェア、OSやソフトウェア、エンドポイントセキュリティ等のアプリケーション環境に至るまで、業務上のITインフラ全般を包括的に管理・提供しているサービスのことを「GSS」と呼んでいます。
2024年6月に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」の重点政策一覧では、GSSについて「行政機関における、生産性やセキュリティの向上を図るため、デジタル庁は、最新技術を採用しつつ、各府省庁の環境の統合を順次進めることにより、政府共通の標準的な業務実施環境(業務用PCやネットワーク環境)を提供するサービスであるGSSを提供する」と記されています。
GSSが生まれる以前の霞が関では、各府省庁が独自に業務実施環境を整備していました。それぞれで必要となるデバイスやネット環境、セキュリティ水準などが異なるためです。
しかし、コロナ禍をきっかけにリモートワークやWeb会議が普及すると、例えば「ある省には数百名が参加するWeb会議に耐えうるネットワーク環境が整備されていない」「ある省で使用を許可されているツールが他の省では利用が制限されている」といった課題が露見しました。
そこで、イメージとしては政府の中で最も充実した業務実施環境を持つデジタル庁の環境を、政府全体の標準的な環境にしようという取組として、GSSが始動しました。
GSSの取組によって、柔軟な働き方とセキュアな業務環境を両立できれば、政府職員は、より効率的に働けますし、行政の意思決定もより早く進められます。
行政のデジタル化、職員の柔軟な働き方、そして強固なセキュリティの実現。間接的ではありますが、GSSはこれらを実現し運用することで、国民の皆さまへのよりよい行政サービスの提供にもつながるものだと確信しています。
プロジェクトの開始以来、人事院や農林水産省、消費者庁、こども家庭庁などにGSS環境が導入されました。2024年度は総務省や環境省、法務省、国税庁などでもGSSの導入が進められています。
◆関連記事:GSSの誕生経緯や役割、業務改善にもたらした具体的な効果を以下のデジタル庁noteの記事で紹介しています。
行政官と民間出身者がワンチームで活躍
GSS班の特徴は、行政官と民間の専門人材がワンチームでプロジェクトに取り組んでいる点です。プロジェクトリーダーである参事官を中心に、各府省庁のLAN環境をGSS環境に移行・統合するための連絡調整を行う府省統合チーム、GSSのセキュリティを担当するセキュリティチーム、全国規模のGSSネットワークを整備するネットワークチーム、障害対応や利用者のサポートをする運用チームなど、様々なチームが現場で活動しています。
各チームでは、行政官と民間出身の専門人材がタッグを組んで業務に従事しています。
バックグラウンドも多岐にわたっており、民間のSIerやITメーカー出身の方もいれば、他省庁と併任の方、地方公共団体から出向している方、大学教授などアカデミア出身の方など、経歴・キャリア・働き方もさまざまです。こうした多様性はGSS班に限らず、デジタル庁全体に通じている特徴だと思います。
新設された「こども家庭庁」のGSS導入ミッションを達成
私自身はGSS班において、よりよいGSSのサービスを追求する「サービス企画・設計・開発」と、省庁間の調整役である「府省統合」の業務を経験しました。実際に私が担当したこども家庭庁へのGSS導入を例に、GSS班での具体的な業務内容をご紹介します。
こども家庭庁は2023年4月に新設されました。その設立にあたって、GSS班は「こども家庭庁設立準備室」と連携し、こども家庭庁のIT環境の整備を担当しました。
こども家庭庁へのGSS導入構想が動き始めたのは、同庁の設置法案が国会に提出された2022年の春以降。法案が成立すれば、翌年(2023年)の4月には設立されます。この時点では、こども家庭庁が何名規模の組織になるのかも未定でした。つまり、わずか1年の短期間で、こども家庭庁のGSS環境をゼロから整えることが我々のミッションとなりました。
ただ、こども家庭庁の設立と同時に、最先端のIT環境をいきなり全職員に提供しても業務に混乱が起こることは想像に難くありません。
そこで私たちは、こども家庭庁の設立準備を担う組織であるこども家庭庁設立準備室に先んじてGSS環境を導入することから始めました。まずは準備室のメンバーに慣れていただき、のちに入庁が決まった職員を準備室のメンバーがサポートできる体制を整えることにしました。
私自身は、こども家庭庁へのGSS導入にあたってプロジェクトマネージャーを担当し、主に2つの役割を与えられました。
1つ目は、どのタスクを、誰が、いつまでにやるのかを決め、遂行することです。
GSS環境を整備するにあたっては、様々な決め事がありました。例えば職員の業務エリアや会議室、大臣の執務室など、それぞれで必要となるIT設備は異なります。どこに何を配置するかをゼロから決め、実行するメンバーをアサインしていきました。
また、リモートワークの導入やペーパーレス化も念頭に置きながら、職員の数に応じてPCやモニター、複合機などを調達する段取りもおこないました。
2つ目の役割は、実際にこども家庭庁で働く職員の生産性を最大限に引き上げるための施策検討です。
例えば、リモートワークを推進するために、各職員に支給されるノートPCで自宅やオフィスの固定席以外からでも外線電話をとれる環境を用意しました。また、実際にこども家庭庁に配属される職員が決まってからは、ツールやアプリケーションの使い方をレクチャーする講師も務めました。
当時のタスク管理表は膨大で目を背けたくなるような状態でしたが、その内の一つでも抜けや漏れがあれば、こども家庭庁のスタートダッシュが失敗するかもしれないという大きなプレッシャーがありました。
ただ、デジタル庁にはすでにGSS環境と最先端のIT技術を使いこなせるメンバーがそろっていたこともあり、私自身もリモートワークを積極的に活用しながら、睡眠や健康管理に十分に気を配りながら働くことができたため、無事にこども家庭庁へのGSS環境の導入を達成できました。
こども家庭庁の設立初日には、オンラインで大臣による訓示がありました。さまざまな場所にいる約400名の職員が1つのオンライン会議に集まるという、まさにGSSが構築したネットワーク環境が試される機会でしたが、滞りなく終えることができました。あの瞬間、言葉では言い表せない達成感があったことをよく覚えています。
「我が子に胸を張って伝えたい」デジタル庁での仕事のやりがい
こども家庭庁へのGSS導入は、我が子にも胸を張って伝えたい、やりがいの大きな仕事でした。GSSを導入した他の府省庁の皆さんからも「GSSのおかげで働きやすくなった。ありがたい」とお声をいただいています。
GSSに携わる喜びを実感したエピソードがあります。2024年に実施した官庁訪問時に、デジタル庁志望の方から伺ったお話です。
その志望者の知人のお父様が国家公務員で、「GSSが導入されてから、働き方が変わってよくなった」と。そこでGSSに興味を持って、デジタル庁を志望してくださったとのことでした。
その話を聞いて、政府職員の働き方が少しでもよくなり、それによって家族と食卓を囲む機会が増えたり、友人と過ごす時間が増えたりしているのなら、これほどやりがいのある仕事はないと感じました。
現在、政府全体ではおよそ3.5万人がGSS環境のもと働いていますが、2024年度以降、約16万人の職員がGSS環境で業務ができるようにプロジェクトを進める予定です。
きっと皆さんが国家公務員試験に合格し、官庁訪問をされるとき、デジタル庁はこれまで以上にやりがいのある職場であると思います。もし興味を持っていただけた方がいれば、ぜひ入庁していただきたいです。皆さんと一緒に国民の皆さんのために働けることを楽しみにしています。
◆デジタル庁の新卒採用(国家公務員採用試験)に関する情報は以下のリンクをご覧ください。