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金融機関や自治体からデジタル庁へ。私たちが国家公務員にキャリアチェンジした理由

政府には様々な府省庁があり、独立性をもってミッションを推進しています。その中でもデジタル庁は、縦割りの省庁に「横串」を通す新しい組織です。国の機関や地方自治体を対象とするITインフラやサービス提供など情報システムの構築にも携わっています。
 
「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を。」というミッションを遂行するため、デジタル庁には多種多様な経験やスキルを持つメンバーが集まっています。民間企業や地方自治体での勤務を経てから国家公務員試験に挑戦・合格し、デジタル庁に入庁した職員もいます。
 
今回のデジタル庁noteでは、経験者採用(国家公務員採用試験)を経て入庁した仲田(デジタル社会共通機能グループ/参事官補佐、2022年4月入庁)と坂本(戦略・組織グループ/主査2023年4月入庁)に話を聞きました。
 
入庁前は、それぞれメガバンクや地方公共団体などで働いていた二人は、なぜ国家公務員としてデジタル庁に転職したのか。デジタル庁だからこそ得られる経験・やりがいについても聞きました。
 
(※記事内容は2024年7月に実施したインタビュー当時の情報に基づきます)

メガバンク・地方公共団体を経て、国家公務員試験に挑戦

インタビューに応じる仲田と坂本のバストショット。オフィスで窓ガラスを背景に話をしている様子を撮影している。
インタビューに応じる仲田と坂本

――はじめに、お二人の現在の仕事内容を教えてください。
 
仲田:
現在は、マイナンバーと預貯金口座に関する法律である「口座登録法」と「口座管理法」を所管する預貯金口座2法班に所属しています。
 
班ではそれぞれ役割分担をして業務を進めていますが、私は、事務・システムの企画業務を中心に、予算の要求や執行、委託契約の制定、広報など(=法制度の運用)を担当しています。
 
所管する法制度には、1,200程度ある金融機関に対して、特定の事務を行うように義務付ける規定があります。金融業界の実務や各種法令などを踏まえ、適切な、事務フロー及びその事務を支えるシステム機能などを定めていくことが事務・システム企画業務であり、金融業界への義務付け規定があることから金融業界へもたらす影響は大きく、実務観点、システム観点及び費用観点といった影響をよく考慮し、緊張感をもって業務にあたっています。

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「もしも」の時に備えて金融機関(銀行等)の口座とマイナンバーを付番できます:口座管理法(預貯金口座付番制度)のご紹介|デジタル庁

 坂本:
私は戦略・組織グループの総務国会担当(※インタビュー当時)にて、デジタル庁内の取りまとめ役として、国会対応、地方公共団体や業界団体等から寄せられる要望対応、関係府省庁との調整業務等に従事しています。
 
特に、国会会期中は議員事務所からデジタル庁の政策に対する問い合わせや、国会審議に向けた質問通告が多数寄せられるため、デジタル庁の総合窓口として、そうした対応を担っています。
 
デジタル庁は「横串を通す組織」と表現されることもありますが、質問内容が他の府省庁の施策にまたがる場合もしばしばあります。その際に、「庁内のどの部署、あるいはどの府省庁と連携すれば適切な回答ができるか」を考え、日々調整にあたっています。

インタビューに応じる仲田のバストショット。オフィスで窓ガラスを背景に話をしている様子を撮影している。

――お二人は新卒から社会人経験を経て、人事院の経験者採用(国家公務員採用試験)に合格し、デジタル庁に入庁されました。行政官になる以前はどのようなお仕事をされていましたか。

仲田:
メガバンクで8年ほど働きました。銀行員時代には、新サービスとシステムの企画に一貫して携わり、新サービスを実現するため、他の銀行との協働や各府省庁へのロビイング活動なども経験をしました。

現在の業務とかなり近しい領域なので、前職の知識と経験をフル活用しながら働いています。

坂本:
前職では、地方公共団体にて、観光振興、都市ブランド戦略等を担当しました。
就職のきっかけは高校時代からの活動にあるのですが、登下校中に流れる地元の河川が抱える水質汚濁等の問題に関心をもち、清流のシンボルともいわれる蛍を呼び戻す活動を地元の中高生と企画したり、世界各国の子どもが水問題について議論する国際フォーラムに日本代表として派遣され、各国の子どもが行うローカルアクションについて共有したことなどを通し、地域の環境保全や地域づくりに関心を持ったことでした。 

大学と大学院では、壮大なテーマですが人口減少下における持続可能な地域づくりとはどのようなものなのか考えたいと思い、人口減少が進行する地域において、フィールドワークに基づく実証的研究に取り組みました。当時から人口減少、少子高齢化、過疎化といった言葉はよく使われていましたが、研究に携わる中で従来の仕組や取組を維持できなくなっている地域があることを目の当たりにしました。
こうした背景もあって、地元の地方創生の取組に関わりたいと思い、地方公共団体に入庁しました。

インタビューに応じる坂本のバストショット。オフィスで窓ガラスを背景に話をしている様子を撮影している。

――国家公務員試験を受験し、デジタル庁へのキャリアチェンジに挑戦したきっかけについて教えてください。
 
仲田:
大きな理由としては、「銀行業界をはじめとする業界の発展を、業界の中からではなく外から牽引していきたい」と思ったからです。
 
銀行員時代には、銀行業界の代表として新しい制度への対応やサービス実現に携わりましたが、一口に銀行業界といっても、それぞれの銀行が様々な事情を抱えており、足並みを揃えることは容易ではありませんでした。
 
もちろん、外から業界の発展を牽引することも、簡単なことではないと思います。しかし、犯罪収益移転防止法の改正により、オンラインで完結可能な本人確認方法が整備されたことは、数多くの新サービスが生まれるきっかけになりました。法制度というツールを最大限活用すると、各業界の発展に寄与できるかもしれない。そう思い、国家公務員へのキャリアチェンジを考えるようになりました。
 
坂本:
私は地方公共団体から国に出向したのですが、人口減少が進む社会において、地方創生の取組においてもデジタル化の推進が急務であると感じたことがきっかけです。地方と国、どちらも経験したからこそ、国の打ち出す施策の方向性によって、地方の施策にも大きな影響を与え得ることも肌で感じることができましたし、地方の実情に即した施策立案にも寄与できるのではないかと考えるようになりました。
 
デジタル社会実現の司令塔として、デジタル化を進める国の機関ならば、地方創生の課題にも、より効果的にアプローチできるかもしれない。デジタル化の推進による日本全国の地域の魅力向上等にも貢献できるかもしれない。そう考え、デジタル庁への転職を決めました。

組織も業務も「横串」だからこそ、やりがいも大きい

インタビューに応じる仲田と坂本のバストショット。オフィスで窓ガラスを背景に話をしている様子を撮影している。

――入庁して感じた「デジタル庁の魅力」について教えてください。

仲田:
携わる政策が特定の分野に限らないところですね。医療、防災、教育など特定の分野を所掌する省庁があるところ、デジタル庁はデジタル技術を切り口に多種多様な政策を担っています。 

今の時代の社会課題は何か一つの分野で完結することが少ないので、分野横断的に政策に携わる重要性も高いと思います。組織も政策も「横串」であることは、デジタル庁の大きな特徴です。

坂本:
職場の雰囲気はとても良いと思います。緊張感のある場面もありますが、役職に関係なく相談しやすい雰囲気です。班の皆で協力しながら業務を進めることができており、意思決定も速いように感じます。 

私と仲田さんのように部署が異なっていても、経験者採用の入庁者同士でよく集まり、お互いの業務や日頃の出来事について話をしています。

――他に入庁後に感じた組織の特徴、仕事のやりがいなどがあれば教えてください。

仲田:
いい意味でのギャップですが、想像以上に意思決定のスピードが速いことです。前職よりも、迅速に物事を決定していると感じる場面が多く、柔軟性が高い組織だと思います。 

坂本:
国会会期中は寄せられる質問の数も多く、庁全体で協力して対応します。滞りなく対応できた時や、審議が終わりデジタル庁に関係する法案が通過した瞬間などには、安堵を含む達成感や一体感を感じました。 

正確性や迅速性を求められる国会対応に携わることは、時に大きな緊張を伴うこともありますが、庁全体の調整に携わることができるといった部分ではそれ以上にやりがいもあります。

仲田:
やりがいという部分では、自分の携わる業務が多くの国民の皆さまの暮らしに関わるという影響力の大きさがありますね。 

例えば、私の所属する班では、国民の皆さまが現在お持ちの口座のうち、おひとり1口座を公金給付などの受取用の口座として、国(デジタル庁)に任意でご登録いただく「公金受取口座登録制度」を所管しています。

これによって、緊急時の給付金、年金、児童手当などについて、申請手続きを簡略化し、スピーディーに給付ができるようになります。最近では、定額減税に係る調整給付金の支給先にも活用され、給付のために1日で数十万件の口座が照会されることがあるほどです。

インタビューに応じる仲田と坂本のバストショット。オフィスで窓ガラスを背景に話をしている様子を撮影している。

――規模が大きい、かつ社会的貢献度の高い業務に携われるのは大きなやりがいになりますよね。仲田さんは入庁から約2年、坂本さんは約1年が経ちました。入庁後、特に印象に残っている出来事として坂本さんには国会期間中のお話を挙げていただきましたが、仲田さんはいかがですか。
 
仲田:
銀行業界の知識と経験を活かし、有識者及び府省庁を巻き込んだ提案ができたことです。
 
入庁してすぐの頃、自ら志願し、デジタル庁の組織である「Web3.0研究会事務局」(主にブロックチェーン技術によるトークンを活用し、個人間で情報や価値のやりとりを可能にする新しいサービス等について、国内外の調査や政府としての重点項目を議論する取組み)に所属しました。
 
ブロックチェーンそのものは不正や改ざんが難しい技術といわれていますが、アメリカでは、ブロックチェーン上の資産をいつもの環境(インターネット)へ移すためのシステム(=「ブリッジ」)の脆弱性をつかれ、資産をかすめとられる事案が発生しています。
 
銀行業界にて、人々の資産を守る考えに重きを置いてきた経験から、こうしたシステムは銀行業界のような資産を預かるに足る堅牢性が確保される必要があるという考えをもっていたところ、研究会の有識者である大学教授にご賛同(ご協力)をいただき、警察庁に対してこの考えを伝えるための勉強会を企画しました。
 
入庁して2年、印象に残っている仕事はいろいろあるものの、これまで築いてきた経験や知識を入庁後すぐに活かせ、自分ならではの取組を行ったという意味で、特に記憶に残っています。

デジタル庁で求められる「スキル」と「マインド」とは

インタビューに応じる仲田のバストショット。オフィスで窓ガラスを背景に話をしている様子を撮影している。

――経験者採用(国家公務員採用試験)で入庁したお二人から見て、デジタル庁ではどのようなスキルセットが求められると考えますか。

仲田:
スキルとマインド、二つの面からお話します。スキル面では何かしら専門分野があると、デジタル庁での仕事は進めやすいと思います。
 
例えば、私であれば金融機関、坂本さんであれば地方公共団体での経験……というように、デジタル庁の職員は特定の分野に関する高い専門性を持っています。デジタル庁自体が発足から3年ほどの組織ですから、みんなで知識や経験を持ち寄って、サポートし合いながら仕事を進めています。
 
また、マインド面でいえば、何をどうするのがよいと考えるか、自分の意見を臆せず発信できる方と一緒に働けると嬉しいです。デジタル庁のような国の機関では、考えを積み重ね、多くの方に納得されうる整理や決定をしなければならないためです。
 
そのためには、自分の目で見ることはもちろん、アンケートを実施したりなど、世の実態をしっかりと把握し、その上であるべき将来像を描き、実現のためにはどのような工程が必要なのか整理をするなど、徹底的に考え続けていくことが求められます。
 
坂本:
私も仲田さんと同じ意見です。
 
「デジタル庁に入るには、デジタル技術に詳しい必要があるか」と思われがちですが、必ずしもその必要はありませんし、入庁後に身につけていくこともできると思います。
 
デジタル庁は縦割りではなく「横串」の組織なので、様々な分野の業務に関わる機会があります。いろんな分野に興味を持っていたり、異なる分野でも共通点を見出して、つなげて、自分なりに物事を考えたりすることができる人だと、取組をより発展させたり、やりがいを持って取り組めると思います。
 
――他の府省庁との連携が求められる業務もあるので、デジタル庁が携わる業務やサービスに興味を持っていただくことが大切になりそうですね。
 
仲田:
そうですね。IT活用の知見もしくは業務分野に関する知見のどちらかに強みがあれば、日々の仕事の中で大きな支えになると思います。

転職先の候補としての“官公庁”の魅力「将来の可能性や視野が広がるはず」

インタビューに応じる坂本のバストショット。オフィスで窓ガラスを背景に話をしている様子を撮影している。

――国家公務員への転職活動には、どのような準備が必要なのでしょうか。国家公務員試験など準備が大変なイメージがありますが、実際に受験したお二人の経験談をお聞きしたいです。

仲田:
まず、試験の内容としては基礎能力試験、経験論文試験、政策課題討議試験及び人物試験の後に、合格者は各府省庁への官庁訪問があります。 

人物試験や官庁訪問は、民間の転職活動で行うような面接が中心なので、就・転職活動の経験がある方はイメージしやすいはずです。きっと皆さんが気になるのは、基礎能力試験、経験論文試験及び政策課題討議試験ですよね。

基礎能力試験は民間企業の転職活動で導入されている「SPI」のようなテストです。(SPIの問題集は)書店で販売されているので、練習として1冊購入してチェックしておくと良いですね。

経験論文試験は「仕事で工夫をして、成果をあげた経験」などを聞く自己PRに近いものです。普段の業務のなかで日々実践していることを上手く整理できれば、よいイメージでしたね。政策課題討議試験もまた、普段の業務にて実践している関係者と課題を議論すること(=会議)そのもののだと思いました。

坂本:
試験では、択一式のような問の正解を導く力以上に、様々なことに普段から興味・関心を持って、情報をキャッチしているか。また、相手の意図を的確に汲み取りながら自分の意見を組み立てることができるかといった観点も重視されるように感じました。

◆関連リンク:
試験問題例 経験者|国家公務員試験採用情報NAVI(人事院)

――最後に、デジタル庁が気になっている方に向けてメッセージをいただけますか。
 
仲田:
もしこの記事を読んでいる方で転職をお考えなら、民間企業だけでなくデジタル庁のような官公庁も選択肢に入れていただけると嬉しいです。
 
社会人経験が長くなるにつれて、「これまでの経験やスキルを活かして、社会貢献をしたい」と思われる方もいらっしゃるのではないかと思います。私もそうでした。
 
民間でも社会貢献ができる企業はたくさんありますが、デジタル庁を含めた官公庁では民間とはまた違う角度から社会課題にアプローチをすることができます。転職先の候補に官公庁も入れていただければ、きっと将来の可能性や視野も広がるはずです。
 
坂本:
先ほどもお話したように、デジタル庁は、日本のデジタル社会実現の司令塔としての機能を担う組織であるため取り扱う分野もそれだけ多岐に渡ります。
 
私のように地方創生に関心があり入庁した職員もいるように、職員の志望理由やバックグラウンドも非常に多様です。
 
入庁後は自身が志向するキャリアやスキルに応じて、政策デザイン、リーガル、テック、組織設計という4つのキャリアコースを選ぶことができます。このように、自分の専門性を高めることができることもデジタル庁ならではの特徴だと思います。
 
これまでの業務経験や知見がつながる場面もあると思いますし、やりたいことが多い方は、デジタル庁ならその希望を叶えられるかもしれません。キャリアの選択肢の一つとして、ぜひ、ご検討いただければ嬉しいです。


◆人事院が実施する経験者採用試験(係長級(事務))の募集要項は以下のリンクをご覧ください。

 ◆デジタル庁が独自に実施する行政人材の選考採用試験の募集要項は以下のリンクをご覧ください。

・2024年度選考採用試験(課長補佐級(一般職相当))|デジタル庁

 ・2024年度選考採用試験(係長級(一般職相当))|デジタル庁

 ◆デジタル庁の採用に関する情報は以下のリンクをご覧ください。