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デジタル社会とプロジェクトを前に進める。デジタル庁の政策・法務ユニットが果たす役割

デジタル庁では、行政の仕組みや社会のデジタル化を進めるため、さまざまな政策や行政サービスに関するプロジェクトが進行しています。

民間での経験、専門知識と調整力を生かしてプロジェクトを前に進める役割を担っているのが「政策・法務ユニット」です。

現在、政策・法務ユニットでは以下の職種で人材を募集しています。

●政策推進スペシャリスト

●法務スペシャリスト(マイナンバー法/法令審査/契約法務)

●総務(政策専門職)

具体的な業務内容や求める人材像などについて、政策・法務ユニットのメンバーが紹介します。

プロフィール:
<政策・法務ユニット>
政策・法務ユニット長 神谷 英亮
デジタル政策推進スペシャリスト 植松 聡美
デジタル法務スペシャリスト/弁護士 櫻井 駿
デジタル組織企画スペシャリスト 津上 哲也

行政官とともに、プロジェクトを前に進める「エンジン役」として

インタビューに応じる政策・法務ユニット長の神谷の写真
政策・法務ユニット長の神谷

――はじめに、「政策・法務ユニット」の概要について教えてください。

神谷:
デジタル庁は、プロダクトやサービスに関する多種多様なプロジェクトを企画、推進しています。政策・法務ユニットのメンバーは、行政官とともにプロジェクトの総合調整役を担い、確実に前進させる役割を果たすことが期待されています 。

メンバーは、システムやアプリをつくるプロジェクトから、法令策定、会計業務などの行政特有のルールと向き合うチームにアサインされ、民間のアプローチを積極的に取り入れたり、使う側の視点をチームに共有するなどして、プロジェクト全体のエンジン役として活躍しています。

行政機関でこのような人材ユニットを有する組織はデジタル庁だけではないかと考えます。庁内からの人材ニーズが急拡大していることを受け、多様なプロジェクトに対応できるように、2024年4月に三つのサブユニット(「政策推進」「法務」「組織企画」)を設け、本格的な採用活動を進めています。

――プロジェクトの「総合調整役」や「エンジン役」という言葉がありました。それぞれのサブユニットの具体的な業務を教えてください。 

政策推進サブユニットの具体的な業務について

インタビューに応じるデジタル政策推進スペシャリストの植松の写真
デジタル政策推進スペシャリストの植松

植松:
政策推進サブユニットでは大きく二つの役割を担っています。一つは、行政官とともに各プロジェクトを前に進める推進役です。

プロジェクトによって関係する職種や組織、専門性は変わりますが、官民問わず多様な方が関わる点は共通しています。

それぞれの関係者に、どのタイミングで、どのように関わってもらうべきかを考えながら、プロジェクトの進め方を考え、調整し、進捗を管理する。その都度、適切なコミュニケーションを図り、滞りなくプロジェクトを進めることが私たちの役割です。

どのプロジェクトに入るかは、メンバーの専門性とプロジェクトの状況などで決まります。わたしは民間でヘルスケアのベンチャーやコンサル業界で働いていた経験を活かし、現在は医療DXを進める「医療班」のプロジェクトチームで「標準型電子カルテα版」(標準規格に準拠したクラウドベースの電子カルテ)の設計・開発に携わっています。

担当するプロジェクトは、関係省庁である厚生労働省を中心に、設計・開発を推進する民間企業・事業者、業務支援として関わるコンサルの方々等、さまざまな関係者との連携が非常に重要となります。

また、医療班のメンバー構成においても、専門性のある職員がさまざまな形態で働いているので、業務の状況確認などを確認しつつ、コミュニケーション取りながら、プロジェクトの進捗を確認・共有できるよう努めています。

もう一つは、庁内の仕事としてたとえば予算確保、入札仕様書の作成や選定など、担当するプロジェクトに関わる調達・契約に関する業務も担当しています。

前職では、行政関連の業務を担当することが多く、官公庁のコミュニケーションに対して「わかりにくい」「もっとこうすれば伝わるのに」と歯がゆさを感じることもありました。その当時の感覚を生かして、対外説明の際にはなるべく伝わりやすい言葉を用いて、円滑なコミュニケーションを図っています。

法務サブユニットの具体的な業務について

インタビューに応じるデジタル法務スペシャリスト/弁護士の櫻井の写真
デジタル法務スペシャリスト/弁護士の櫻井

櫻井:
法務サブユニットは、主に「デジタル」と「法令」に関わる部分の調整、推進業務に携わっています。

たとえば、マイナンバー法やデジタル手続法といったデジタル庁が所管する法律の改正案を作成や政省令を改正する作業ですね。法改正や新しい法令がつくられる際に文言の正確性や適法性を審査したり、また、デジタル庁が関わる契約に関して法律的な観点から他の職員にアドバイス、提案をしたりしています。

私自身は、既存の法令の中に存在する約1万条項のいわゆる「アナログ規制」の見直しと関連する「技術検証事業に関する取組」に関わっています。

「アナログ規制」の一例としては、法令の定めに基づいて、一部の建造物や設備などの管理状況や損傷状況を現地に赴いて、人の目で調査・点検・検査することなどが義務付けられていることが挙げられます。ただ、中には高所や危険物に近い場所など危険を伴う場所での作業が求められる場合があり、安全面や効率面での課題が指摘されています。

そこでドローンやAI、画像解析などのデジタル技術を活用し、安全かつ効率的に代替できる可能性について、法規制を所管する他の府省庁や民間の事業者の方々と連携しながら、新しい技術を検証し、「アナログ規制」の見直しにつなげるプロジェクトに携わっています。

たとえば火薬の保管状況や高所の建造物の監視・点検などについてテクノロジーを活用して人が現地に行かずに行うことができれば、監視員や作業員の危険を軽減することができます。2040年には日本の生産年齢人口が6000万人未満まで減少するという試算もありますが、深刻化する労働力不足という課題も、デジタル化で効率化できれば解決につなげることができます。

一方で、新しいデジタル技術が安全に使えるのか。これまで人が担ってきた役割を本当に代替できるのか。規制や技術の内容などによっては、これらを丁寧に検証する必要があることもあります。

こうした技術の検証の必要性から、デジタル庁では規制を所管する各府省庁や関係者と連携し、「技術検証事業」として代替技術の実証実験などを実施しています。

多種多様かつ広範にわたるアナログ規制の趣旨や内容を理解・整理し、規制の見直しにあたって特に検証すべきポイントや規制内容に応じた実証実験の具体的な方法などを調整することも私たちの仕事です。

デジタル技術に詳しい事業者の皆さまと法令を所管する各府省庁の間に立つ「橋渡し役」として、デジタルの力で皆さんの暮らしをよりよくする助けになりたいです。

組織企画サブユニットの具体的な業務について

インタビューに応じるデジタル組織企画スペシャリストの津上の写真
デジタル組織企画スペシャリストの津上

津上:
組織企画サブユニットは、組織やプロジェクトのいわゆる「バックオフィス」業務を担当しています。主には公共調達に関する一連の行政手続を担い、各プロジェクトが目指すものを実現につなげるための後方支援を行うのが責務です。

基本的には会計業務が多いのですが、それだけではありません。デジタル庁はさまざまな行政サービスを検討してそれを構築する組織です。そのためには、多くの外部機関と契約し、連携していく必要があり、また、サービスの提供のために新たな規約を作成したりする必要があります。こうしたものが行政手続や法律に照らして問題がないか、弁護士など法律の専門家とともに各プロジェクトにアドバイスをしています。

ただ、何でも頭ごなしに否定する「手続の番人」のようになってはいけません。ルールとして決まっているからだけではなく、それ以上に対外的に説明することの必要性が職員一人一人にあり、そのために手続があることをバックオフィスの側からも伝えることを心掛けています。

私自身は民間と公共の両方で働いた経験があるのですが、民間から移ってこられた方には行政のルールに戸惑う方もいらっしゃいます。

ただ、予算や会計での細かなルールやステークホルダーの違いはあってもこの対外的に「説明すること」が基本にあって、そのために必要なプロセスが備わっていることは、どのような組織の活動でも変わらないと考えています。

官も民も通じるところがある。その点を説明して納得してくださると民間での経験を生かすことができていて、民間でも勤務してきたことは無駄になっていないことを実感します。

政策・法務ユニットが大切にする三つの要素

――政策・法務ユニットではどのような方が活躍できそうでしょうか。また、それぞれのサブユニットでは具体的にどのようなスキルが求められますか。

神谷:
政策・法務ユニットには、私のように公務員に出戻った人のほか、コンサルタント、弁護士、地域貢献の団体運営など幅広いバックグラウンドをもつメンバーが所属しています。 

「デジタル社会とプロジェクトを前に進める」ユニットであるために、3つの要素を重んじています。
最も重要な要素は、デジタル技術の力を信じ、技術の進化に関心を持ち続けていることです。

また、三人が挙げてくれたように、プロジェクトを進めていく上では、さまざまな関係者の架け橋が必要となるので、コミュニケーション能力には重きを置いています。行政機関の立場だけでなく、事業者の皆さまや他の組織・団体それぞれの立場を理解した上で、デジタル技術も駆使しながらコミュニケーションの円滑化を図る力 が強く求められます。

そして、最後までプロジェクトをやり抜く力。いずれのプロジェクトも簡単に前に進めることはできません。ステークホルダーの意見の相違や各コミュニティ特有の障壁に直面し、心が折れそうになることもあります。そうした時に、 みんなで一緒に考え抜いた「これが最適」という解を、諦めず実現まで運びきる胆力が欠かすことができません。

この三つを備え、大切にしていただける方であれば、存分に活躍していただける環境だと思います。

募集している各職種では一定の専門性が求められます。「引き出しが多い人」にはもちろん魅力を感じます。しかし、私たちが目指すのは、引き出しの持ち主が気づいていない引き出しを見つけ出し、引き出すことです。チーム全体でプロジェクトを前に進める上で、個の力もチームの力も強くすることができる大切なスキルである と考えています。

植松:
政策推進サブユニットであれば、たとえばコンサルタントなど多くの関係者と一緒に何らかのプロジェクトを進めた経験がある方や行政の方と仕事をした経験がある方はスムーズに業務に入れると思います。 

先ほどご紹介した医療班でのプロジェクトであれば、医師やエンジニア、民間からの出向者など多様メンバーが集まっています。立場が異なる多様なメンバーと一緒に働く経験はなかなかできないので、その点は非常に面白いと思います。

もちろんプロジェクトが進めば、時に意見がぶつかることもあります。それぞれの専門性から見れば、いずれの意見も正しくとも、プロジェクトの目的達成のためには、意見を調整し、まとめる必要があります。粘り強く交通整理をし、国民の皆さんのためにデジタルの力を生かしたプロジェクトを進めたいという熱意をお持ちの方に、ぜひ参画いただけたらうれしいです。

デジタル庁の行政サービスは、この国に暮らすすべての人が対象となります。規模だけでなく、社会へのインパクトも大きいですし、未来につながる仕事でもあります。私自身もそこに責任感とやりがいを感じています。

櫻井:
法務サブユニットでも、関わるプロジェクトは多岐にわたります。たとえば「アナログ規制の見直し」では、さまざまな法令を見ることになります。私自身、これまでの弁護士経験の際には触れる機会がなかった法令に出会うことが多く、法令の勉強は欠か せません。

また、「技術検証事業に関する取組」では規制の内容がどの法令に基づいているのかを把握するとともに、代替可能なデジタル技術が、どういう仕組みで、どういう用途に使われるのかを最低限は理解し、簡単にでも言語化して説明できることが求められます。

たとえニッチな領域であっても法令を読み解く力とともに、好奇心と使命感をもって学ぶこと、調べることがお好きな方であればきっと活躍していただけると思います。

津上:
組織企画サブユニットでは、会計や総務業務に知見をお持ちの方であることはもちろんですが、ぜひ「一緒に悩んでくれる方」と共にお仕事ができればと思っています。 

行政の業務では、「こうすればいい」というシンプルな答えがあることは少なく、皆で知見を持ち寄って挑むような課題がたくさんあります。「どうすればもっといい方向に向かえるだろうか?」と一緒に考えていただける方や「最適解を探したい」という気持ちがある方には、とてもやりがいのある環境だと思います。

未来をよりよくする「種」を共にまこう

政策・法務ユニット長の神谷、デジタル政策推進スペシャリストの植松、デジタル法務スペシャリスト/弁護士の櫻井、デジタル組織企画スペシャリストの津上の集合写真

――デジタル庁のミッションに共感していただける方であれば、活躍の場が多そうですね。入庁後はどんなキャリアパスが描けそうでしょうか。また、どのような点で成長を実感できそうでしょうか。

植松:
デジタル庁に入ってみると、あまり知られていないものの、民間の方々が事業や課題解決のために活用できる補助金や制度があることに気付きます。

制度全体の奥深さやすそ野の広さを目の当たりにしながら、行政の中を知ることができるので、もし民間に戻ることがあったとき、ここで得た知識は大きなアドバンテージになると思います。 

櫻井:
行政機関がどのようなビジョンを持って社会課題をとらえ、どのように解決できるかを考えているかといった知見は、やはり行政機関に入らないと得られない糧だと思います。デジタル庁での経験は、特に官民が協力しあって日本のデジタル化を進めていくような領域で活かせると感じています。

津上:
デジタル庁は日々働きながら得た知見がすぐに生かされる場所です。勉強した会計法や行政手続も目の前でダイレクトに動きますし、現場で行政法をOJTで学べるみたいな感覚はとても面白いと感じます。

神谷:
キャリアパスですね。最後にとても良い質問をありがとうございます。 

政策・法務ユニットの活動が本格スタートして間もないため、キャリアパスは確立していませんが、大きく2つのパスをつくりあげていければと考えています。

一つは、リボルビングドアです。デジタル庁設立当初から勤務してきた弁護士の中には、既に民間に戻り「デジタル技術を推進するスタートアップをサポートしたい」と、デジタル庁での勤務経験を力の源泉にして、デジタル社会の推進をライフワークにしてくれているメンバーもいます。

また、官から民、民から再び官、の流れも太くしていきたいです。公務員を退職後、民間でも活躍した人たちが官民での経験を発揮できる環境がデジタル庁にはあります。自らリボルビングドアのロールモデルとなる気概のある方々とこのキャリアパスを発展させていきたいです。

もう一つは、非常勤から常勤ポストへの登用です。私たちは非常勤としてキャリアをスタートさせ、一年単位での契約更新となります。

先に述べたようにプロジェクトを前に進めるのは容易ではありません。しかし、前に進める実績を重ねられる人材であれば、行政機関として短期間で手放してしまうのはとてももったいないことです。

今回紹介した植松さん、櫻井さん、津上さんの三人はいずれも政府機関での勤務は初めてですが、既に各プロジェクトで欠かすことができない人材となっています。民に戻る選択肢も磨き上げながら、デジタル庁で長期的に活躍することのできる枠組みも整備していきたいと考えています。

いまや日常生活にデジタル技術は欠かせません。 日々スピード感のある対応が求められますが、同時に5年後、10年後、あるいは20年後の未来を見据え、種をまくこともデジタル庁の大切な責務です。

社会のために働きたい人にとって、やりがいには事欠きません。

プロジェクトを前に進め、未来に種をまいていく仕事に、一緒に情熱を注いでくださる 皆さまからのご応募お待ちしています。

◆デジタル庁では、政策・法務ユニットの人材を募集しています。詳細は以下のリンクをご覧ください。

●政策推進スペシャリスト

●法務スペシャリスト(マイナンバー法/法令審査/契約法務)

●総務(政策専門職)


◆デジタル庁の中途採用に関する情報は以下のリンクをご覧ください。

◆これまでの「デジタル庁の職員/チーム紹介」記事は以下のリンクをご覧ください。

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