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行政とITの橋渡しをするデータプロダクトマネージャー

デジタル庁では、法人や不動産などのデジタル社会の基盤となるデータについて、「公的基礎情報データベース(ベース・レジストリ)」として整備しています。現在、さまざまな行政手続で参照される、法人や不動産、住所のデータ整備に取り組んでいるところです。

このベース・レジストリの整備により、国民の皆さまが同じ情報を何度も提出する必要がなくなるなど、利便性の向上や行政運営の効率化を目指しています。2024年5月31日には関連法案が成立し、これからシステム開発が本格化する段階にあります。

現在デジタル庁では、ベース・レジストリのプロジェクトにおける「データプロダクトマネージャー」を募集しています。行政とITの橋渡しをするリーダーとして、プロジェクトのマネジメントをしつつ、行政機関のシステムを連携させるために必要となる専門知識を生かし、ベース・レジストリの取組を推進する中心的役割を担うポジションになります。

「データプロダクトマネージャー」の具体的な役割・業務について、ベース・レジストリのプロジェクトに取り組むデータユニット長の山田と、担当行政官の上田がご紹介します。

山田政幸(やまだ・まさゆき)
デジタル庁データユニット長。外資系企業でアジア各国のデータのプロジェクトに携わるなど経験を積み、2024年3月にデジタル庁に入庁。23年に初孫が生まれ「もう少し自由にやってもいいのかな」と思ったことも転職のきっかけだったという。

そもそもベース・レジストリとは?

担当行政官(上田):
現状、国民の皆さまには、法人の名称や代表者の住所・氏名といったデータを手続のたびに何度も書いていただいたり、関連する書類を何度も添付していただいたりしていると思います。

「ベース・レジストリ」は、さまざまな手続で共通する項目をデータベースとして整え、行政機関等が参照できるようにすることで、国民の皆さまの利便性を向上させ、また行政運営も効率化していくプロジェクト。いわば、国のマスターデータを整備していくプロジェクトです。

データユニット長(山田):
このような背景から、ベース・レジストリの整備をしっかりと進めていくため、有識者の方々にもご協力いただきながら対応策を検討し、国会でもご議論いただいた上で、先日、必要な法律改正を実現することができました。

現在、さまざまなデータをベース・レジストリとして指定していますが、特に、法人、不動産や住所の整備に力を入れて取り組んでいるところです。

ベース・レジストリのメリットは?整備のスケジュールは?

担当行政官(上田):
ベース・レジストリを整備するメリットは二つあります。
まず一つ目は、国民の皆さまの手続が楽になることです。

法人の名称、所在地、代表者の氏名、住所などの基本情報について、電子申請の際に毎回の手入力が不要になる上、謄本などの書類の添付が不要となります。

特に、法人については、名称、所在地などの基本情報の変更について、登記さえ変更してもらえれば、他の行政機関に対しての届出は不要にすることを目指します。

国民の皆さまだけでなく、審査を行う行政機関も、審査や確認する項目が減りますので、行政の職員にとっても楽になります。
政策効果としては、今回想定するデータベースが整備されることで、年間約5000万件の手続が効率化し、数百億円程度の経済効果があると試算しています。

二つ目は、「名寄せ」や「住所クレンジング」の負担が軽減されることです。

日本の「住所」は表記揺れがあり、データ連携の阻害になっています。表記揺れのない正確なデータをIDとともに整備し、流通させることで、民間を含めたさまざまな主体がデータをより負担なく使えるようになります。

また長期的には、より効果的な行政の実現――すなわち、EBPM(Evidence Based Policy Making)の実現に向けた環境整備につながります。

EBPMを実施するためには、行政が保有するデータや民間のデータなど、さまざまなデータを組み合わせて利用することになります。その際、お互いのデータベースを名寄せできるよう共通の「識別子」が必要です。
たとえば、法人であれば法人番号がこれに該当します。しかしながら、現在、行政機関では、法人番号は必ずしも十分に利用されている訳ではないため、データの突合に課題があり、結果としてEBPMの実施の障壁となっています。私自身も、過去、このデータの名寄せの課題に直面したことがあります。

しかし、先に述べたような手続の効率化を実現するためには、それぞれの行政機関が、データ連携できるよう、法人番号を正しく持つことが大前提となります。ベース・レジストリの整備や利用を進めると、さまざまなデータベースで法人番号を正確に保有することでデータを組み合わせ利用することが容易となり、結果として、EBPMをより実現しやすい環境が整備されます。

「住所」についても、同様です。足元の手続の効率化のための取組が、長期的にはEBPM等を実現する上での基盤にもなるのです。

データユニット長(山田):
住所・所在地情報のデータについてもさまざまな課題がありますが、分かりやすい例では「住所の表記揺れ」です。住所のデータを触ったことがある方にはなじみの問題なのではないでしょうか。

たとえば、中央省庁の多くが集まる「東京都千代田区霞が関」という場所を示す場合、「千代田区霞が関」、「千代田区霞ケ関」と、記載が揺れていることがよくあります。

人が場所を認識する場合、この課題は特に問題とならないのですが、こういった住所・所在地情報をシステム上でやり取りをする場合、表記の方法が異なると、異なる所を指していると認識する可能性があります。

「千代田区霞が関」といった単純なパターンであれば、アルゴリズムを組むことで対応可能ですが、たとえば「舞浜2」だと「舞浜2丁目」と「舞浜2番地」いずれを意味するか区別できず、対応が困難です。

こういった課題を解消するため、関係省庁や地方公共団体にもご協力いただきながら、IDで管理する標準的な住所・所在地情報の整備を進めているところです。

なお、ベース・レジストリの整備スケジュールについては、住所の町字については、総務省や自治体の皆さまと協力しながら、今年度中に整備完了することを目指し、作業を進めています。

法人や不動産については、令和7年(2025)度から令和9年(2027)度にかけて、システム整備などが完了次第、運用を開始する予定となっています。

現在、システム整備を進めているところであり、ベース・レジストリを担当していただいているデータプロダクトマネージャーにも大きな役割を果たしていただいています。

担当行政官(上田):
ベース・レジストリの取組は、業務横断的なものであり、他省庁や地方公共団体、ベンダーの皆さまとさまざまな業務やシステムに関係することから、関係省庁や地方公共団体とも丁寧に連携しながら検討を進めていく必要があります。

デジタル庁は、システムに対する専門性がある方だけでなく、法務スペシャリストの弁護士の方、他省庁や地方公共団体、民間企業などで業務知識やシステムの知見を積まれた方など、それぞれの職員が専門性や経験を活かして働いています。これもデジタル庁の特徴の一つです。

私自身の親元の省庁と比較しても、全く違う職場環境だなと感じます。(多様なバックグラウンドがある職員が働いていることもあって)相対的に「霞が関」の色が薄い組織なので、行政機関でありながら、民間から来られた方がなじみやすい職場と言えるのではないかと思います。

ベース・レジストリにおけるデータプロダクトマネージャーの役割とは?

ベース・レジストリ班のメンバー

データユニット長(山田):
ベース・レジストリを担当しているデータプロダクトマネージャーは、行政とITの橋渡しをするリーダーとして、要件定義から設計、開発、そして運用・保守に至るまでの全てのプロセスに深く関わる中心的な存在です。

前提としてはデータ管理と分析の専門知識が求められ、公的基礎情報データベースの開発事業を推進するためのプロジェクトマネジメント能力、加えて専門知識とリーダーシップが不可欠だと思います。これらのスキルを活かして、ベース・レジストリに関連する他プロダクトとのシステム連携や、各府省との調整を行うことが期待されています。

要件定義フェーズでは、システムを用いる業務の要件やシステムの要件を明確にし、その後の設計と開発フェーズで滞りなく作業を進めることができる環境をまず整えます。

運用・保守フェーズにおいても、システムの安定性を確保しつつ、継続的に機能などを改善していくための検討をしていく必要があると考えています。

データプロダクトマネージャーには、要件定義から設計、開発、そして運用・保守に至るまでの各フェーズに深く関わることが求められます。

特に要件定義フェーズでは、法人や不動産データの統合に必要な機能やシステムの要件を明確にし、その後の設計と開発フェーズでこれらの要件を具現化します。そのため、データベースや認証認可、API機能などの開発経験が活かせますし、商業登記や不動産登記を扱うことから、金融や不動産業界などの経験も役立つと考えます。

そして、運用・保守フェーズでは、システムの安定性を確保し、継続的な改善を行うことで、長期にわたるサービスの品質を保つ責任を担います。組織間のギャップを認識して解消していくためにも、BtoB領域での経験があることも望ましいでしょう。

データプロダクトマネージャーの具体的な業務は?

データユニット長(山田):
デジタル庁にはさまざまな専門性を有する「ユニット」と呼ばれる組織が存在しており、それぞれのユニットが、「担務」と呼ばれるプロジェクト群に対して専門性を提供しています。

データユニットの機能目標は、データの潜在価値を見出し、それを分かりやすく伝え、その価値実現に貢献すること。ベース・レジストリ以外にもさまざまなプロジェクトが進行中です。

具体的なことは申し上げられませんが、最近の傾向として、生成AIの進展に伴い脚光を浴びているデータ領域の取組も急速に活発になっています。

これらの取組は社会に大きな影響を与えるものであり、これまでさまざまな形でデータに係わる仕事に携わってこられた方には、今デジタル庁のデータユニットでデータに係わる仕事にチャレンジすることが、社会に大きな影響を与えうる、非常にエキサイティングな機会であることはご理解いただけるかと思います。

担当行政官(上田):
ベース・レジストリについては、これまで実証事業などを進めてきましたが、2024年5月末に関連法案が成立し、これから要件定義、設計開発等、構築が本格化していきます。

特に、法人や不動産については、これからデータベースや情報連携基盤を新規に構築していくことになります。

その中でデータプロダクトマネージャーは、これらのデータベースがベース・レジストリの一部として統合されるよう、関連するシステムの開発や改善を指揮する役割が期待されています。

これまでは、データは各省庁単位で管理・利用する前提でシステムや業務が組み立てられてきました。時間はかかりますが、今後数年間でベース・レジストリを前提とした世界を、みんなで一緒に構築していくことになります。

データユニットが求める人物像は?

データユニット長(山田):
実際に働いているメンバーも、コンサルティング会社からキャリアをスタートさせた人、ITシステム開発に長年従事してきた人、地理情報などの専門性を持っている人などと多種多様なメンバーです。

スキルセットは先ほどお伝えした通りですが、私たちデータユニットでは、チームワークを重視し、多様性を受け入れることができる柔軟性を持った人物を求めています。

いわゆるGovTech(行政の利便性を高めるテクノロジー)に関する新たな挑戦に対して積極的に取り組んで、自己成長を目指す意欲をお持ちの方を歓迎します。

データプロダクトマネージャーは、これまでの経験では解けない問いにワンチームで臨むことで、将来に資する成長の機会を得ることができるでしょう。皆さまの応募をお待ちしています。

 

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